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In one word, this ideal is that you are divine.
一言でいうと、理想はあなた自身が神聖であるということだ。ー Swami Vivekananda(スワミ・ヴィヴェーカナンダ)
バクティヨガにおける「賞賛の行為」とは?
私たちは自己を高めたいと思うとき、他者がどのように成功したかに目を向けることがあります。他者の素晴らしさを称賛することは、幸せへの鍵の1つであるとヨガスートラには書かれています。
バクティヨガにおける賞賛の行為は、単に友人や家族、有名人を賞賛することではなく、どんな困難な状況下でも消えることなく輝き続ける光である古代のデヴァタに、心の中で深く真剣に向き合うという芸術へと昇華されています。
ラマ神はそんな光の1つです。ヴィシュヌ神の第7番目の生まれ変わりで、地球上の悪の力を破壊するために生まれてきたと考えられています。ヴィシュヌが生まれ変わる時、その伴侶であるラクシュミも必ず一緒に生まれ変わってきます。
ラマの物語
ラマ神の時代には、ヴィシュヌはラマとして、ラクシュミはシータとして現れました。このシータとラマの話は、紀元前1千年頃のインドの話として伝わる「ラマヤナ」に出てきます。人は自らのダルマ(義務、務めという意味。この時代に非常に重視されました)にそって生きるべきであるという教訓がこのラマヤナには込められています。ラマは自分の本分を尽くして生きた理想の英雄像として崇められました。
ラマは4人息子のうちの長男で、父親が王座を降りたのちにアイドーヤ王国の君主になる定めでした。しかし、自分の息子バラータを王にしたかった継母は王を言いくるめてラマを14年間森に追放させます。ラマは父親の意向を何もいわずに受け入れ、シータを連れて行きました。バラータは母親がラマを追放したことを知り、ラマに会うため森に出かけていき、ラマの不在中は名だけの王として国を治めるがラマの帰りを待っている、と告げます。
その頃、悪霊の王ラヴァナがシータを誘拐し、自分の国ランカへ連れ去ってしまいます。ラマは家臣ハヌマンの助けを借り、サルの大軍を結集し、ランカに橋を渡してシータを救出し、ちょうど追放期間の終わりに差し掛かる頃にアイドーヤ王国に戻ってきます。その後ラマによって治められた時代はインドの黄金時代として知られています。
ラマに込められた意味
ラマという言葉自体にはいくつかの意味がありますが、一番良く知られているのは「気持ち」です。キルタンでラマの名を歌うとき、私たちは自分の気持ちを敬い、また自らのダルマ、人生の境遇を受け入れるのです。ラマには喜びという意味もあります。自分の人生をありのままに何が起ころうと受け入れ、身をゆだねると、そこには喜び、満足の気持ちが生まれるでしょう。ラマの名は死を迎える時にも唱えられます。
Sri Ram Jai Ram Jaya Jaya Ramと詠うことは、愛・勇気・受容であるラマの光を信頼していると認めることなのです。
ラマの要素を日々の生活に取り入れるには
1.これまでの人生で起きた予期せぬ出来事を3つ思い浮かべて顧みましょう
どんな感情が沸き起こりましたか?怒り、悲しみ、それとも驚きを感じましたか?その時感じた気持ちを全て書き留めましょう。体への影響はどうでしょう?その出来事によって健康を害したり、反対に良くなったりしましたか?何らかの変化を人生にもたらしましたか?
自分ではどうにもならない出来事が訪れた時、私たちは「なぜ?」とその訳を理解しようとします。人生はただ理由もなく「起きる」もので、重要なのはそれに対してどう反応するかなのだ、と納得するのは容易ではありません。ダルマを「人生の中で直面し、受け入れるために訪れたもの」として、先ほど思い浮かべた出来事も自分のダルマなのだと理解していたとしたら、どんな反応をしただろうか、と考えてみましょう。
2.ラマのマントラを唱えましょう
自らの感情にオープンになると同時にバランスを取ってくれる素晴らしい方法の一つです。アーサナの練習の最後に行うと良いでしょう。ゆっくり時間をかけて楽な座り姿勢に落ち着き、両手をおへそに当てて、心の内側で静かにRAM(ラム)を27回唱えます。このマントラは熱を冷まし、落ち着きと安定をもたらしてくれます。
3.身の回りの尊敬する人を思い浮かべましょう
称賛するその資質を挙げ、そのうちの1つを自分のものとして取り入れてみましょう。完璧な人はいませんが、誰もが何かしら素晴らしいものをもっているはずです。
Om ram ramaya
神聖なる光につながっているという喜びの感覚を味わいましょう
文:レイチェル・ジンマン
世界でも有数のパワースポットと呼ばれるオーストラリア・バイロンベイに拠点をおき、日本をはじめインド、バリ、ヨーロッパと世界中で活躍するヨギーニ。ヨガ歴20年以上指導歴18年のベテラン講師で、毎年バイロンベイにて日本人向けヨガインストラクター養成コースを開講、今年で9回目を迎える。彼女の実践するバクティヨガは「愛」のヨガ。ヤントラ(形)やマントラ(音)、ムドラ(印相)を用いてヨガに深みを与えることで、アーサナに偏りがちなヨガからホリスティックなヨガへと導いていく。近年ではヨガインストラクターとして更に成長していきたい方のための上級者向けリトリートをバリにて開催するなど、継続的な指導に力を注いでいる。