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マック久美子先生の講座で気づく“思考を手放す”ことの重要性
先日、イシュタヨガで有名なマック久美子先生の「チャクラを理解し、ヨガで体感集中講座」をオンラインで受講しました。
ヨガ講師育成のトレーニングで「チャクラ」や「ナーディー」という単語が出てきたあたりから、チャクラという概念は難解で正直苦手でした。
西洋医学しか学んできていない筆者は、ヴィシュッダ・チャクラは喉のあたりの甲状腺の部位というように、単に解剖学のように暗記をしていました。頭で理解しようとしていたのです。
しかしマック久美子先生は身体感覚を重視します。呼吸法やアーサナを行い先生の指導でチャクラを整えることと、普段のアーサナのプラクティスがリンクし、チャクラというものが身体で理解できた、まさに腑に落ちる体験でした。
さらにマック久美子先生は「思考を手放す」ことを繰り返されていました。
脳のサイズは小さいのに、カロリー消費は大きい
意識が思考から解放されると、魂を体験し、宇宙のエネルギーと調和して生きていくことができる。つまり自分の内側で何にも邪魔されない静かな部分にふれることができるのです。
ですが、私達の頭は常に判断したり、先のことを考えて不安になったり……つねに忙しくしていますね。
人間の脳は、身体の2%ほどの重さしかないのに、エネルギーの約20%を消費しています。あらゆる感覚から入ってくる情報をものすごい速さで処理しており、1日に数万回の意思決定をしていると言われています。お料理をするにしても人と会話するにしても思考は目まぐるしく発生しているわけです。
そんな思考をとめてくれるのがヨガ。毎日少しの時間でも、マットの上で過ごすことで、思考を手放し、思考から遠ざかり静かな世界に戻ることができるのです。
いまと向き合うために……新型コロナの3つの側面を理解しよう
新型コロナウイルスが流行している今、まさに私達に必要なことが「思考を手放すこと」なのではないでしょうか。
すでにご覧になった方も多いと思いますが、日本赤十字社が公表しているVTRです。
https://www.youtube.com/watch?v=rbNuikVDrN4
新型コロナウイルス感染症は、“3つの顔”を持っており、これらが“負のスパイラル”としてつながることで、更なる感染の拡大につながっていると注意喚起しています。
- 第一の感染症
- 第二の感染症
- 第三の感染症
病気そのものを指します。感染者との接触で伝染することがわかっています。感染すると、風邪症状や重症化して肺炎を引き起こすことがあります。
不安と恐れです。ウイルスは小さすぎて肉眼では見えません。ワクチンや薬もまだ開発されていません。専門家ですらわからないことが多いため、私達は不安や恐れを感じ、振り回されてしまうことがあります。それは私達の中でふくらみ、気づく力・聴く力・自分を支える力を弱めてしまうのです。
嫌悪・偏見・差別です。不安や恐れは人間の生き延びようとする本能を刺激します。そして、ウイルス感染に関わる人や対象を日常生活から遠ざけたり、差別するなど、人と人との信頼関係や社会のつながりが壊されてしまいます。
このようにこの感染症の怖さは病気が不安を呼び、不安が差別を生み、差別がさらなる病気の拡散につながることなのです。元ある脅威もさることながら人間の思考や感情で第2、第3の感染症が広がっていくのです。
不安や恐怖のメカニズムを把握して、自分の反応を許し、俯瞰する習慣を
人間は未知のものやコントロールできないことに出会ったときに不安になります。不安は私達の心のアラームなのです。
ですが、不安というアラームのおかげで、私たちは危険に対して身構え、それを回避し、乗り越えることができます。このような状況下では不安に思うのはむしろ当然なのだと思います。
では不安を感じているときに脳の中では 何が起きているのでしょうか。
危険や不安は、脳の中の扁桃体という部分が察知します。その瞬間、自律神経のうち交感神経を優位にし、アドレナリンとノルアドレナリンという物質を分泌。すると不安を全身で感じるようになるのです。
このアドレナリンとノルアドレナリンが分解されるか、副交感神経が動き出してリラックスするまで、不安を感じる状態は続きます。
扁桃体は脳の系統的には比較的古い、動物にもある大脳辺縁系にあり、ストレスを感じると戦うか逃げるかを判断する部位です。ほんのアーモンドほどの大きさしかないのに、あの強烈に全身を制御する恐怖や不安を司っているのです。
前回の連載では寂しさについて触れさせていただきましたが、クリニックに寄せられるお悩みで寂しさに並んで不安や恐怖の訴えも多くきかれます。
不安を煽るようなニュースに触れたり、疑心暗鬼になっていると不安はどんどん増殖し、過度な不安となって現れます。ストレスがかかった時の不安は当然の感情であり、治療を要するレベルの不安と分けて考えなくてはいけません。普通の不安を抱えている数割の方は休息をとるなどして自然に回復していきます。
では不安とどのように向き合ったらよいでしょう。
不安に飲み込まれそうになったら、3つのステップで自分を見つめよう
不安は悪ものではないことを再確認します
不安はもともと私達に備わったアラームなのです。異常な体験の正常な反応なのですから怖がらなくて大丈夫です。
不安が起こりやすい環境に自分をおいていないかチェック
もしいまの状況でSNSやワイドショーなどをみる時間が多いようであれば、信頼できる情報にかぎり、心が和む絵や写真を眺めるなど、不安を感じる状況から距離をとりましょう。
不安を明確にしましょう
不安はほうっておくと、大きく育ってしまいます。真っ暗闇では誰でも不安を感じますが、ろうそくの光でもいい。一筋の光が見えることでふっと不安は減っていきます。
そして不安は目に見えないこころの世界で育つのです。ですから不安を目に見えるようにすることが効果的です。紙に書くのでも良いですし、安心できる誰かに話してみるのも良いでしょう。
そうすることで少し不安や思考と距離がとれ、話してみると感じていることと、実際は違ったというようなこともあるかもしれません。まさに思考を手放すことが大切な瞬間です。
マック久美子先生は週1回2時間するよりも、毎日15分でもいいからヨガをすることが大切と念をおされていました。
毎日少しだけでもいい、思考を手放し魂にふれる体験をすること。今ここに生きること。
新型コロナウイルスが流行する現在、毎日のヨガの習慣が私達の心の平安を保ってくれるに違いありません。
参考資料
- ビーヨガジャパン『イシュタとは』
- 日本赤十字社 新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~新型コロナウイルス
- 堀越 勝『感情の「みかた」』(田畑書店、2015年)