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うつ症状改善のポイントは、ヨガを始めるタイミングとペース
今や、現代病とも言われるうつ病。「ヨガはうつ病にも効果がある」と無条件に信じているインストラクターも多いのではないでしょうか。確かに、通常の治療に加えて個人指導によるヨガを行った場合、通常の治療だけを行うよりも抑うつ症状が改善した[1]という臨床試験もあります。一方で、薬物治療に加えてヨガを行っても、うつ病の改善効果はなかった[2]という結果もあるのは見逃せない点です。この2つは何が違うのでしょうか?その答えは、「ヨガをはじめるタイミング」と「自分のペース」でヨガを行うことにありました。
指導で困った時は 「ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド」
「うつ病の友人にヨガを勧めたいけど、いいのかな?」「生徒さんがうつ病と診断された!何か気を付けることはあるのかな?」などの疑問に答えてくれるのが、「ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド」です。このガイドは、なんと公的機関である厚生労働省が発行している公のもの。誰でもホームページから無料でダウンロードでき、とても分かり易い言葉で記載されているので、ぜひ一度は目を通しておきたいガイドです。
ヨガを勧めて良い時/悪い時
ヨガは内面に意識を向けます。また、目を閉じて瞑想することがあります。正しく行うと自分の身体を大切に感じられるようになり、肯定的で前向きな気持ちになれる瞑想。ですが、こういった行為が人によっては不安感を増してしまうほか、いやな体験を思い出して精神的に辛くなることもあります。だからこそ、ヨガを始めるタイミングが重要です。では、どんな状態だったらヨガを勧めても良いのか?ヨガを勧める本当のタイミングを見極めるチェックリストを見てみましょう。
まだ始めない方がよい時期
- 検査中で、診断がついていない時期
- 身体症状が落ち着いていない時期
- とても疲れている時期
- 精神的に不安定でつらい時期
- 薬物を変更している時期
- セルフケア、セルフコントロールが身体的、精神的に負担に感じる時期
- 主治医がヨガを勧めない時
始めてもよい時期
- 血液検査の値が落ち着いて、安定している時期
- 症状が落ち着いて、精神的にも体力的にも余裕ができたとき
- 疲労を伴う慢性性疾患、うつ病(ある程度体力の回復してきた時期)
- 精神的に落ち着き、自分の内面的なことに直面しても大丈夫と思える時期
- 薬の変更がほとんどない時期
- リラクセーション法、セルフコントロール法を身につけた方がよい時期
- 主治医がヨガを勧める時
引用元:「ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド-患者用-」(PDF)
病状が落ち着いていて、精神的にも体力的にも余裕が出てきたときが、始めても良い時期だと判断できそうですね。そして、忘れてはならないのは主治医への相談です。「ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド」には、主治医とヨガインストラクターが連携をとれるように「申し送りシート」もついています。ぜひ、こういったツールを活用して、主治医と連携しながら、安全に、そして効果的にヨガを楽しみましょう。
ヨガの効果を最大限に引き出すために
ヨガレッスン中に「精神的なきつさ」を感じると有害事象(ヨガを行うことでおこる好ましくない事象)は、6倍にも増えると言われています。
ヨガレッスン中の主な有害事象
- 筋肉痛や関節痛
- ふらつき
- 身体のしびれ
- 咳や鼻詰まり
上記のように軽いものが主ですが、持病があるとその病気に関連した有害事象の発生が高くなることもわかっています。中には、過呼吸発作や不安感が増すことで動けなくなったという事例があります。だからこそ、下記がヨガの効果を最大限に引き出すために大切です[3]。
- 体調に従う
- 無理をしない
- 頑張り過ぎない
- 人と競わない
- 心地よいペースとポーズ
ゆったりしたヨガで身体の動きや変化を心地よく味わい、リラックスできるようなクラスがうつ病の方には向いていそうですね。主治医と連携しながら、「無理のない範囲で」「心地よく」やることが、ヨガの効果を最大限に引き出すために重要な点でした!
参考資料
- de Manincor M,et al “Individualized Yoga for Reducing Depression and Anxiety,and Improving Well-Being:A Randomized Controlled Trial,” Depress Anxiety, 2016 Sep;33(9):816-28
- Sanbin N,et al.“The influence of Hatha yoga as an add-on treatment in major depression on hypothalamic-pituitary-adrenal-axis activity: a randomized trial,”J Psychiatr Res,2014 Jun;53:76-83
- ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド 患者用