ヨガの八支則を知り、心のデトックス:【アヒンサー】

自分を大切にするルール、持っていますか?心のデトックス【アヒンサー】

皆さんこんにちは。臨床心理士・ヨガ講師の南 舞です。

この記事がアップされる頃にはもう6月。そうです、2019年の上半期も終わりに近づいているのです! 年々、1年の過ぎ方が早くなっている気がして、そのことにただただ驚くばかり。時期が過ぎることを忘れるくらい「余裕がなくすごしている」のか「充実している」のかは分かりませんが、上半期最後の月である6月も自分らしく過ごそうという思いは変わらずにいます。

さて本題へ。ここ最近の記事は心理学がベースのお話が多かったので、久々に【八支則】をベースに、心のお話をしていこうと思います。八支則の第一段階、ヤマの【アヒンサー】について。

アヒンサーとは、生きとし生けるものへの思いやりを持つこと

ヨガ哲学を勉強している人はご存知かもしれませんが、よく分からない方もいるかもしれませんので念のため。アヒンサーとは、【非暴力、不殺生】と訳されます。生きとし生けるものへの哀れみの念や、思いやりを持つこと。行動、言葉、精神面、思考など、全てにおいて他者や自分に暴力をふるってはいけないということを意味しています。

そう聞くと、他者に対して暴力的でないというのは何となく理解しやすいかもしれません。一方で、自分に対しても暴力的ではないというのはどういうことなのでしょうか?

「無理はせずに」と言いつつ、無理していませんか?

ヨガの教えをしていても、カウンセリングをしていても最近良く感じることがあります。

それは、

  • 自分の限界を超え、他人のために頑張りすぎている人が多い
  • 周囲に合わせるのもほどほどに、もう少し自分のペースを大切にしてもいいのに

ということです。

例えば、ヨガでいうと、ポーズの形や難易度にこだわるあまり、呼吸が止まっていたり、呼吸が心地よくできる限界を越えてしまい苦しそうだったり。もう少し自分の心地よいポジションまで緩めても良いと思うのですが、それに抵抗を感じる人も意外と多く・・・もちろん、目標があるのは良いことだし、ヨガに対する考え方も人それぞれ。

でも、それって「ヨガは決して無理はせずに」と言いつつ、無理してますよね?と思ってしまうのです。

カウンセリング場面でいえば、友人や家族、あるいは周囲の人たちに褒められ、認めてもらうために、自分の気持ちを無視して行動する、他人に尽くしすぎて疲弊してしまうなどがよく見られるかなと思います。

中学生でも相談内容の1位は人間関係!

私は普段、中学校などの教育現場で活動していることが多いのですが、相談したいこととしてよく挙げられることの第1位が【人間関係】

ちょうど中学生の時期は、チャムグループという、これまで以上に親密な人間関係を築こうとグループを作り群れたがる時期。上手くいっている時は良いですが、距離が近づきすぎると人の嫌な部分も見えてくるもの。

そうなると、自分ペースよりも相手がどう思うかを察し、いかに自分が外れないようにするかに必死になります。そこで、よくよく話を聞いてみると、そんな自分に嫌気がさしていたり、相手への不満などから生じる強い怒りの感情を感じていたりすることも。

こうして私や周囲の人に話してくれるうちは良いかもしれませんが、度を越えてしまうと、うつ病や適応障害などの精神疾患を引き起こし、あるいは自傷行為(リストカットなどの自分で自分の身体を傷つけるような行為全般)、ひきこもりになるなど、発散できないストレスが徐々に自分への攻撃へと向くようになっていきます。そうなってしまったら、アヒンサーではなくなってしまいますよね。

自らを労わることも大切なこと

実はアヒンサーの教えには、もう一つの考え方があります。それは、【決して無理はせずに、自らを労わること】です。

アーサナや呼吸法に取り組んでいる時だけでなく、日常生活においても同じことなのだと思います。例えば、自分の中で「もやもやする」「疲れる」「しんどい」と感じることについては、もしかしたらそれは自分に合っていないことなのかもしれません。時には、そういう物事と向き合わなければいけない時もあるでしょうが、それをずっと続けていくのは難しいですよね。

なので、人間関係でも物事でも、違和感を感じたら、それを無視せずに少し距離を置いてみたり、合わせられないことがあったりしても良いなど、自分の限界やルールの設定を緩くしておくことも大切なことです。

もしかしたら、アヒンサーの本当の意味とは「他者も大切にするけれど、それ以前に自分のことを無視せず、犠牲にせず、まずは自分の感じ方や考え方を大切にする」ということなのではないでしょうか。周囲のことばかりでなく、時には「自分のことを大切にできているか」を振り返ってみるのも大切なことかもしれませんね。