皆さん、こんにちは!臨床心理士・ヨガ講師の南 舞です。
新社会人の方、あるいは新入生の方は、今の環境になり3か月が経とうとしていますね。職場や学校にはもう慣れましたか?
巷では【6月病】と言われる、ようやく新しい環境になれた頃に、これまでの疲れやストレスが心身に現れる症状も流行っていますので、気を付けたいものです。
突然ですが、皆さんは【ハタヨガ】の意味を知っていますか?
ハタヨガの【ハ・タ】とは、ハ=太陽、タ=月を表しています。太陽と月以外にも、陽と陰、男性性と女性性、理想と現実、心と身体など、世の中には相反して成り立っているものがいくつもありますね。
心理学の世界にも相反する概念はいくつかあるのですが、今回はその中から【集団の心理】に関するお話をしたいと思います。
集団に働く心理作用:【母性原理】とは?
皆さんは“集団”と言われると、何を想像しますか?職場・クラス・サークル・ママ友など。世の中には様々な種類の集団が存在していますね。では、その集団はあなたにとってどんなものでしょう?
仲良く楽しい集団もあれば、反対に思いがけず足を引っ張られる集団や、緊張感が漂うギスギスとした集団もあることでしょう。せっかく一緒に過ごすなら、仲良く争いがないことを願うものですが、なぜ集団の中でうまく行かないことが起きてしまうのでしょうか?
その理由は、集団の中で【母性原理】という心理作用が起きてしまうからなのです。
母性原理とは、個人の能力による序列や順位付けを重視するのではなく、全員を平等に扱おうという考え方です。母性原理はわりと日本の文化に合った考え方かもしれません。集団のメンバーがお互いを守り、競争がなく、一見平和で良い印象を受けますよね。
ところが、誰か一人でも集団から外れた行動をしたり、あるいは自分だけが得をするような行動をとったりしようものなら、それを防ぐかのように、集団から外れている人を抑圧しようとする力が働きます。
それが度を過ぎると、仲間外れやいじめなどへとつながる危険性もあるのです。
母性原理の反対:【父性原理】とは?
母性原理とは反対に、【父性原理】という現象もあります。
父性原理は、メンバーの実力や能力などで分類する、明確な順位をつけるなど完全に実力や成果を重視する傾向にあります。どちらかというと、欧米社会によく見られる心理作用かもしれませんね。
父性原理は、“個”を大切にするのも特徴的で、例えば小さいころから自立を促され、自分の意見をしっかり言える、なんて言うのもそうなのでしょう。父性原理は、どちらかというと白黒がはっきりしているので分かりやすいかもしれません。
しかし、はっきりしている分、場所を選ばずに自分の主張を通そうとするなど、結果ばかりを追求しすぎると逆に人間関係がうまく行かなくなるということも起きかねません。
母性原理と父性原理、どちらがいいの?
こう考えていくと、「じゃあ母性原理と父性原理はどちらがいいの?」という疑問が沸いてくる人もいるかもしれません。
心理学的に、ヨガ的に考えてみると、わたしの個人的な意見ですが、「どちらも状況に応じて取り入れればよい」と思っています。
マイナスな面もお伝えしてきましたが、母性原理も父性原理もどちらもプラスな面もあります。例えば、日本の働き方である年功序列や終身雇用。これは母性原理の象徴と言えるでしょう。「みな平等」という考えのもとで私たちが長いこと守られてきたのは事実です。
また、日本が世界の中でも先進国と言われるのは、大学受験や就職活動、企業の営業成績などの「競争社会」の仕組みの中で、一生懸命勉学や仕事に取り組む環境があるから。これは父性原理の象徴と言えます。
過度に競争社会なのも息苦しく感じてしまいますし、必要以上に平等社会を重視しても新しいことは生まれてこないでしょう。自分のその時の状況に合わせて、必要な集団選びができると、苦しむことも少なくなるかもしれません。
心理学的には、どちらかでないといけないという【白黒思考】は必要以上に自分を苦しめます。
ヨガ的には、相反する2つのものが融合して初めてバランスの良い状態が生まれます。ハタヨガの教えのように、母性原理と父性原理をバランスよく取り入れた集団が増えることが理想なのですが、現実はなかなか難しいかもしれません。
そんな時に、あなた自身がその時の自分に合った集団を選択できるようになると、対人関係も今までよりスムーズになるかもしれませんね。