ヨガをする上で「呼吸を意識すること」と「良いアライメントで脊柱を保つこと」はとても重要なことです。実はこの「呼吸」と「脊柱」は非常に高い関連性があります。
今回、ご紹介する関連性について知ることで、ヨガをする際の呼吸と脊柱への意識が変わるはずです。
呼吸と脊柱の基礎知識
まず、呼吸についてです。呼吸とは、息を吸う「吸息」「吸気」と、息を吐く「呼息」「呼気」に分けられます。ヨガではこれらに加えて、息を止める「止息」が入ります。
- 息を吸う=吸息
- 息を吐く=呼息
- 息を止める=止息
の3つに分けられるので覚えておきましょう。
次に脊柱についてです。脊柱という部位は、頭蓋骨の真下から尾骨(びこつ)に至るまでのいわゆる“背骨”の部分であり、上半身を支える役目などを担っています。
身体を丸める、反らす、横に倒す、捻るといった基本的な動きをします。基本的な動作が複合すると丸めながら捻る、反らしながら横に倒すといった複雑な動きになります。この脊柱の基本的な動きには、名称があります。
- 身体を丸めること:屈曲(くっきょく)
- 身体を反らすこと:伸展(しんてん)
- 身体を横になって倒すこと:側屈(そっくつ)
- 身体を捻ること:回旋(かいせん)
脊柱は、この4つの動きをするので覚えておきましょう。
それでは、呼吸と脊柱の動きの名前を覚えたら、本題に入ります。
脊柱の動きが呼吸を深める
では、大きく深呼吸をしてみましょう。ゆっくり息を吸って、吐く時は吸う時間より長めに行うようにしてみましょう。どうでしたか?
息を吸う時は、身体が自然と反るような動き、つまり脊柱の伸展を行ったと思います。逆に息を吐く時は、自然と身体が丸まるような動きをしたと思います。これは脊柱の屈曲を行ったと言えます。
言い換えるとこれは、「脊柱を動かすことで呼吸の質を高めた」と言うことです。
では、逆を行ってみましょう。
息を吸いながら身体を丸めて、息を吐きながら身体を反らしながら深呼吸をしてみましょう。どうでしたか?不自然な感じがして呼吸がしにくかったのではないでしょうか?
このことから、脊柱の動きによって呼吸を行いやすくすることもでき、逆に行いにくくすることもできるのです。
脊柱と呼吸の関連性をまとめると、
- 脊柱屈曲→呼息を促す
- 脊柱伸展→吸息を促す
となります。
ヨガクラスでの呼吸と脊柱の活用方法
この、呼吸と脊柱との関係をどのように活用するかについてご紹介します。
例えば、夜のヨガレッスンのような、1日の疲れを癒すようなプログラムでは、息をゆっくり吐いてリラックスさせたいので、屈曲系のアーサナを多めに取り入れます。脊柱の屈曲は息を吐く「呼息」を促すため、ゆっくりと息を吐くことが可能です。その結果、心身の緊張を緩めリラックスすることができます。
呼吸を利用して脊柱の動きを促す
脊柱は呼吸を促すことがわかりましたが、これは逆でも言えます。呼吸が脊柱の動きを促します。
- 呼息→脊柱屈曲を促す
- 吸息→脊柱伸展を促す
例えば、これは脊柱屈曲の代表的なアーサナである「パスチモッターナーサナ(長座前屈)のポーズ」で活用されます。このアーサナは、ゆっくり呼吸をしながら前屈を深めていくアーサナです。アーサナの最中、息を吐くタイミングで前屈を深めるように意識します。呼息は、脊柱屈曲を促しますので効果的に脊柱の可動域を広げることが可能になります。
逆にコブラのポーズのような脊柱の伸展(反り)が必要なアーサナでは、息を吸いながら行います。吸息は脊柱の伸展を促すので、コブラのポーズを効率よく行うことができます。
このように呼吸を上手く利用することでアーサナの完成度が上がってきます。
呼吸で脊柱の安定性UPも可能
呼吸で脊柱の動きを促進することも可能ですが、加えて、脊柱の安定性を高めることもできます。その仕組について、解説します。
例えば、「アンジャネーヤーサナ(三日月のポーズ:膝をついたランジから身体を反らせるポーズ)」を行う時、このアーサナは脊柱や股関節を伸展するアーサナです。
伸展動作を効率よく行うためには、息を吸いながら伸展していけば良いのですが、中には三日月のポーズに不慣れな方や腰椎分離症など腰に問題がある方が腰を過剰に伸展してしまうと腰痛になる場合もあります。
このような方には息を吸いながら伸展をするのではなく、息を吐きながら伸展をします。目的としては息を吐くことで腰の過剰な伸展に対してブレーキをかけ、腰周りを安定化させるためです。
つまり、息を吐いて脊柱屈曲を促すことで、過剰な脊柱伸展を抑制し動作を安定化させるということです。
この方法は、整形外科のリハビリの運動指導の際に活用されるのですが、パーソナルレッスンなどでアーサナ指導をする際に、クライアントを見て呼吸法を変えることでアーサナを安全に、質を高めることができます。
今回、紹介した呼吸と脊柱の関連性については、主にピラティスで活用されますが、当然ヨガでも活用できます。呼吸と脊柱の関連性を意識してヨガに取り組むと、より効果的に身体を動かすことができると思います。