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皆さんこんにちは!臨床心理士・ヨガ講師の南 舞です。
前回、ストレスに負けない心を作るための【レジリエンス】についてお伝えしました。今回もストレスに関連した心のお話をして行こうと思います。
皆さんは、今自分が所属しているコミュニティ(集団)の中で、人間関係は上手くいっていると感じていますか?
もし、あまり上手くいっていないと答えた場合、困りごとの1つとして「自分の気持ちを相手に上手く伝えられない・伝わらない」ということが挙げられると思います。自分の思いが相手にきちんと伝えられたら、こんなにスムーズなことはないですよね。
実はちょっと工夫をするだけで、コミュニケーションがぐっと良くなる方法があるのです。今日はコミュニケーションを豊かにしていくための【アサーション】という心理的スキルのお話。
アサーションとは、自己表現のこと
アサーションという言葉を聞いたことはありますか?
アサーションとは【自己表現】と訳され、自分も相手も尊重する表現方法のことを指します。
発祥は1950年代のアメリカ。「皆が自己主張をする国」と思われがちですが、この頃は人種差別があった他、そもそもの性格として自分の意見を述べることが苦手な方も存在しており、いくら自己主張の国といえども様々な人がいます。そんな時代背景から生まれました。
アサーションは、行動療法という心理療法がベースとなっています。一見すると【自己主張するためのテクニック】と思われそうですが、そうではなく、「自分が思っていることを感情的にならずに伝えながら、相手の立場も考え、上手にコミュニケーションをとって行こう」ということなのです。
コミュニケーションのタイプとは?
アサーションを知るに当たって、知っておきたいのがコミュニケーションのタイプです。主に3つのタイプがあります。
非主張的タイプ(ノンアサーション)
- 自分の思いを言わない
- 表現が遠まわし
- 言い訳がましい
- 我慢が重なると爆発することもある
- 恩着せがましい気持ちを持つこともある
攻撃的タイプ(アグレッシブ)
- 一方的に自分の思いを言う
- 感情的・威圧的になりやすい
- 相手の気持ちを無視する
- 理詰め
- 思い通りにならないと八つ当たりする
- 相手より自分が優位に立とうとする
公平中立的タイプ(アサーティブ)
- 自分の思いを率直に表現する
- 話し合いができる
- 相手に歩み寄る
- 伝えたいことをシンプルに言える
- 会話のキャッチボールができる
さて、あなたはどのタイプでしょうか。こうしてみてみると、非主張的タイプでも攻撃的タイプでもどちらかに偏っていては人間関係で苦労しそうですね。
公平中立タイプ(アサーティブ)とは、非主張的タイプと攻撃的タイプを足して割った黄金比のバランスを兼ね備えているので、自分が犠牲になることなく、かといって相手に嫌な思いをさせることない平和なコミュニケーションタイプなのです。
アサーションでない人の特徴
皆がアサーティブなコミュニケーションをできていたら、人間関係で苦労しないと思うのですが、なぜそれが難しいのでしょうか。
それは【自分に自信が持てないから】かもしれません。
非主張的な人は、自分に自信が持てずに自分を卑下してしまうところがあります。攻撃的タイプの人は一見自信がありそうに見えますが、自分への自身のなさを隠すために、表では攻撃したり、言い訳や何かのせいにする傾向にあります。
明日からアサーションを実践してみよう!
爽やかな人間関係を築いていくために有効なアサーションですが、意識すれば明日からでも自分で取り組むことができます。
アサーションの4つの柱を知る
アサーションは、以下の4つの柱でできています。
- 率直:自分の意見や気持ちは素直に、率直に伝える。
- 誠実:自分にも相手にも誠実である。
- 対等:自分も相手も対等である。上下関係があったとしても、相手を一人の人間として大切にする。
- 自己責任:自分の意見を考え、行動の結果は自分で引き受ける
自分も相手も大切にするということはこれまでもお話して来ましたが、ここでポイントなのは、むやみに自己主張しなければいけないということではなく、まずは自分の意見に耳を傾け、伝えようと思ったら伝えればよいし、今はそのタイミングでないと判断したら、あえて伝えないということもありなのだということ。
【自分がどう思うか・どうしたいか】を大切にすることも自己表現の1つと言えるでしょう。
伝える時は‘I(アイ)’メッセージを意識する
‘I’とは「私・僕」という意味ですね。相手に何かを伝える時は、自分を主語にした‘I’メッセージで伝えてみましょう。
「うるさい!静かにしてって何度も言っているでしょ!」(子どもが主語)
⇒「お母さん、大きい声聞くとイライラしちゃうから辞めてほしいな」(自分が主語)
主語を自分にするだけで、相手に伝わる印象がかなり変わってきますよね。また、子どもからすると「なぜそうしなくてはいけないのか」という理解につながります。これは友人・上司・家族あらゆる場面で使えるスキルです。
アサーションに関するお話、いかがだったでしょうか。
日本人の特性として、「Noと言えない」「相手の気持ちを察する」というところがあると思いますが、それをずっと続けているとストレスが溜まってしまい、最悪の場合は感情的に相手にぶつけてしまい、仲が悪くなってしまうこともあるでしょう。
ヨガ哲学で【アヒンサー】という教えがありますが、これは他人も自分も傷つけずに大切にするということ。まさにアサーションを知っていれば、相手の立場を尊重しながら、嫌なことに対してはNoと言えて、そして自分の事も大切にできる。お互いに気持ちが良いですよね。
他にも方法があるのですが、それはまた次の時に取っておきます。明日からぜひ生活の中に取り入れてみてくださいね。