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ナーダヨガという言葉を聞いたことはありますか?ハタヨガでは、プラーナヤーマの練習が深まると、自身の内側からナーダと呼ばれる音が聞こえるとされています。その音を利用して、さらに深い瞑想状態へと至るのがナーダヨガです。
ヨガのクラスでBGMを使うこともあると思いますが、ヨガと音楽の関係を深く知ると、音のもつ効果を感じることができるかもしれません。そうした音がもたらす働きかけを意識すると、日常生活にも豊かさがもたらされるでしょう。
ハタヨガ経典に書かれたナーダ音とは?
ナーダ音とは、深い瞑想状態のときに身体の内部から自然に発生する音のこと。ヨガ実践者は、その音に意識を集中させて、瞑想をさらに深めていきます。ナーダ音は、プラーナヤーマの練習でナディ(プラーナの通る気道)が清浄されると現れます。
気道の不浄さが取り除かれると好きなだけ気を保持することができるようになり、消化力が高まり、ナーダ音が聞こえ、身体は健康になる。(ハタヨガ・プラディーピカ2章20節)
ナーダ音を聞くためには、ヨガの実践で自分自身の不浄さを取り除く必要があります。
ナーダ音の段階:内から聞こえる様々な音
身体の内側からの音と聞いて、どの様な響きを想像しますか?ナーダヨガには4つの段階があり、聞こえる音がそれぞれ違います。
- アーランバ段階
- ガタ段階
- パリチャヤ段階
- ニシバティ段階
装飾具の触れ合うような音が「アーナハタ・チャクラ(ハートチャクラ)」から聞こえる。
太鼓のような音が、「のどのチャクラ」から聞こえる。
マルダラ(両面太鼓)のような音が「眉間」から聞こえる。
フルートやヴィーナのような音が聞こえる。
→ ラージャヨガ(サマディ)に到達する
ナーダヨガの初期の段階では、大海や雷、太鼓などが入り乱れたような、乱雑な音が聞こえます。中期になると、だんだんマルダラ(両面太鼓)やほら貝のような音になり、最終段階では鈴やフルート、ヴィーナのような美しい音が聞こえるようになります。
最終的には至高の寂静へ
私たちの意識をナーダと呼ばれる内側の音に結び付けて瞑想を深めると、自然と深い静けさに入っていきます。
ヨガ実践者の心が上記の音に強く喜びを感じると、外の世界のことを忘れ、その音と共に寂静の境地に到達する。(シヴァ・サンヒター5章47節)
全ての音の停止した状態はマノーンマニーと呼ばれ、ブラフマンの境地です。それは心を超えた境地です。
ヨガスートラの瞑想との対比
ナーダ音に関してはヨガスートラには書かれていません。しかし、ヨガスートラのサンヤマ(瞑想)と比較すると、ナーダヨガと同様のプロセスになっていることがわかります。
ヨガスートラのサンヤマ
- ダーラナ(凝念):一つの対象に意識を集中させること。
- ディアーナ(静慮):対象のイメージを膨らませる。
- サマディ(三昧):対象を見ている「自分」が消える。
ナーダヨガでも、内側の音が聞こえるようになったら、まずはその音に意識を集中させます(ダーラナ)。続けていると、どんどん音が広がりを持ち様々な音が聞こえ、より繊細な音になっていきます(ディアーナ)。その音と心が一体となると静けさが訪れます(サマディ)。
ナーダヨガも数多く存在する瞑想方法の一つですが、あらゆるヨガの根本となったヨガスートラの流れに則った実践方法だということが分かります。
最終段階で聞こえる音は神の楽器の音
サマディに最も近い段階で聞こえるフルートやヴィーナは、インドでは神様の楽器としても知られています。
- フルート
- ヴィーナ
クリシュナの楽器で、インドで最も古い楽器の一つ。愛の神様であるクリシュナは集落の全ての女性から愛され、フルートを吹くクリシュナの周りでは沢山の女性たちが踊っていました。
琵琶に似たインドの弦楽器。女神サラスヴァティの楽器として知られます。とても美しく学問や芸術を司る。日本では七福神の一人である弁財天として知られます。
クリシュナとサラスヴァティはインドの神様の中でも、飛びぬけた美男美女。そんな神様の奏でる音が自分の内側から聞こえてくるというのです。一度は、体験してみたいですね。
ナーダヨガで得られる効果
ナーダヨガは心を集中させることに大きな効果があります。
花の蜜を吸っている蜂が花の香りに気をとめないように、ナーダ音に結びついた心は他のことを求めなくなる。(ハタヨガ・プラディーピカ4章90節)
ナーダ音という縄に縛られた心は全ての働きを放棄する。翼を失った鳥のように。(ハタヨガ・プラディーピカ4章92節)
ヨガの瞑想とは、意識を外部の事柄から切り離し、内側の真我に結び付けることです。ナーダ音に集中することによって、心は外部の事柄への興味を失って、全ての働きを制止させます。
4つの段階の効果
先に書いたナーダ音の4つの段階では、それぞれに効果もありますので、ご紹介しましょう。
- アーランバ段階:心臓の辺りにプラーナ(生命エネルギー)が集まり、身体が神々しく輝く。良い香りを放ち、病から解放されます。
- ガタ段階:神に等しい知恵を得る。
- パリチャヤ段階:アートマンの喜びを得る。肉体的な苦痛から解放される。
- ニシバティ段階:プラーナがシヴァ神に到達。ラージャヨガへ。
初期の段階では外的な効果が現れますが、徐々に内側へと向かっていき、魂レベルの喜びへと変わっていきます。ナーダヨガはダイレクトにサマディに到達することのできるヨガなのです。
ナーダヨガを取り入れましょう
さて、本来は深い瞑想状態の中でしか起こらないナーダヨガですが、音がもたらす心への働きかけを理解できれば、気軽に取り入れることができます。
たとえばヨガのクラスで、適切な音楽をBGMに取り入れることで集中力を高めることができます。また、音楽のみに集中する時間を日常に取り入れると、心身を整える音楽療法としての効果を得ることもできるのです。
では、どのような音楽が適しているのか。具体的に見ていきたいと思います。
瞑想効果を高め、心を穏やかにする、おすすめの音楽
理想は、「ニシバティ段階」で聴こえる音に近いものがベストです。実際に、この段階を象徴するインドのヴィーナやフルートは、とても深くて安定した音色を奏でます。
メロディーも、できるだけ穏やかでゆったりとしたものが良いでしょう。インドのお寺では、伝統的に神様への捧げものとして音楽を奏でますが、それらはとてもゆっくりと始まり、長時間演奏されるのが特徴です。
現代は様々な音楽があるので、インドの古典音楽以外の音楽を使っても良いですが、ナーダヨガとして使う時には、下記のポイントを押さえて下さい。
- 滑らかな音のものを選ぶ。
- 空気の割れるようなドラム音を含まない音楽。
- 感情的なメロディーではなく、落ち着いたもの。
- 日本語や英語など、歌詞の意味が分かるものをさける。
(歌詞の意味に意識が向いてしまうため)サンスクリット語のマントラには、音にエネルギーがあるから良い。 - オームという音はブラフマンと同等であるため最適。
無音の時間も、とても大切
日常やヨガの時間に音楽を取り入れると同時に、無音の時間を設けることも、とても大切です。オームに関した記事の中でも書きましたが、音には「始まり」「中間」「終わり」「空虚」の4つの段階があります。
音は、聞こえている領域以上に、その背後に広がる無音の状態が大切なのです。
例えは、ヨガのクラスのBGMとして音楽を使うのであれば、最後のシャバアーサナの時間の後半は、無音にするのがベター。音によって浄化された後の無音は、より深い瞑想状態へと繋がりやすくしてくれます。
音楽を効果的に利用することで、ヨガや人生の質が向上
ハタヨガにとってナーダ音は、ヨガの成功へとダイレクトに導いてくれる大切なもの。同時に私たちの日常生活にとっても大きな恩恵をもたらしてくれます。これを機に、ぜひ日常でも、自分の耳に入ってくる音の質に意識を向けてみましょう。
また、自分が発する話し声や雑音が、人の心に、どのような影響を与えているのかを意識してみるのも面白いです。音に対する意識を広げていくと、人生の深みが増すはずです。