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医学的な見地から、安全な向き合い方を学べる
はじめまして、8月よりヨガジェネレーションの編集部に加わりました、やっこと申します。
私にとってのヨガの目的は、心身の健康維持です。ただ、若い頃より低血圧のせいかシャヴァアーサナ後、立ち上がったときにふらっとして、かえって調子が悪くなったように感じることも……。もちろん、それ以上にヨガの心地よさを体感しているので、続けているわけですが、どのような取り入れ方がベストなのかは日々模索中です。
そんな折、OMYOGA主催の「MTY 100医師に聞くヨガの話」という講座の案内をいただきました。
テーマは「生理学」で、ヨガをしている最中に生じやすい不調の原因と対策を、呼吸器や循環器、脳、自律神経……などの仕組みから見ていくというかなり深い内容に。ヨガ中に起立性低血圧のような症状を感じることがある私にとって、目からウロコの講座だと直感し、受講することにしました。
講師は、ヨガジェネレーションの特集記事でもお馴染み、麻酔科専門医兼・MEDCAREYOGAの代表でもある中野陽子先生。講座当日は、旦那様の精神科医・中野輝基先生もいらしていました。
正しい医学的知識をヨガインストラクターや高齢者とそのご家族、介護者に伝えることをモットーに真摯にヨガと向き合われているご夫妻。普段は、それぞれ医療の現場でお仕事をされながら、ヨガと医学をつなげる活動にも尽力されています。
“健康格差”をなくし、誰もが平等に健康になれる社会を目指されているお二人の優しさと情熱に触れるだけでも、とても元気になれた素敵な時間。かつ、難しい生理学の話を現役・医療従事者としてのリアルな体験談や、確かな裏付けを示すデータを交えてわかりやすく解説くださる展開に、ぐんぐん惹きつけられ、午前中から夕方まで丸1日かけた講座でしたが、あっという間に時間が過ぎていきました。
参加者は、おもにヨガインストラクターの方で、私のような初心者はほぼ皆無でしたが、みなさん本当にオープンな方ばかり。アットホームな雰囲気のなか、リラックスして受講できたのも、うれしかったポイントです。
さて、生理学とひと口に言っても、その内容は多岐にわたるので、全内容をレポートすることはできませんが、特に印象に残った話、また起立性低血圧気味の私が、講義を受けて気づいたことの一部を紹介したいと思います。
すぐに取り入れられる、いざというときの対策
過呼吸編
ヨガをされる人のなかには、精神的な不調を抱えられ、些細なことでレッスン中に過呼吸を起こしてしまう方も稀にいらっしゃるようです。そんな事態に直面したとき、慌てず対応できるために、正しい知識を身につけることは、とても大切なことだと感じました。
[原因]
- 辛い記憶が蘇る
- パニック障害
- 極度の不安、緊張
[対策]
- 本人を安心させる
- ゆっくりした呼吸を促す
過呼吸のほとんどが重篤ではないケースが多く、ゆったりとした呼吸を促すことで改善されることが多いため、焦らず、落ち着いて対処することがポイントとのこと。
※よく聞くペーパーバック療法は、あまり推奨されていないそう。血液中の酸素濃度が低くなりすぎたり、炭酸ガス濃度が過度に上昇したりする可能性があるので、十分注意が必要なようです。
立ちくらみ編
これは、私も該当する部分ですが、軽度のものならきっと多くの人が経験しているかもしれません。この立ちくらみの原因には、さまざまなものが考えられるようです。
[原因]
- 過度のストレスや強い痛み、恐怖心などが原因となり迷走神経が刺激され、抹消の血管が拡張することによる血圧の低下。
- 急に立ち上がることによる血圧の低下(起立性低血圧)。この場合、脱水が隠れていることもある。
※上記のほか、重篤な疾患が潜んでいたり、服用している薬が原因になることもあります。
[対策]
- 前兆を感じたらすぐに横になる
不可能な場合は、しゃがみこむことが有効のようですので、インストラクターの方は、調子が悪そうな生徒さんがいたら、すぐに休ませるなどのケアや、「立ちくらみを感じたら無理に継続しない」ことをアナウンスしておくのも、安全にクラスを進める方法かもしれません。
この話を伺って、私の場合、特に夏場の朝ヨガで、くらっとするなぁと気づきました。振り返ってみると、朝起きて何も飲まずにヨガをすることが多く、軽い脱水状態でヨガをしていたことが原因だと、反省しました。講座を受けてからは、きちんと水分を補給してからヨガをするようにしています。その結果、立ちくらみはだいぶ軽減されました!
心停止編
シャヴァアーサナ時に、リラックスを促すべく生徒さんの手足に少しだけ圧をかけながら、ゆっくり触れていき、最後にアイピローの上に手のひらを軽く押し当てる——ヨガのクラスでは、よくある光景ですが、じつはとても注意が必要な行為とのこと。
眼球への刺激で、徐脈(不整脈の一種)が起こることがあり、最悪の場合は心停止する可能性もあるそうなのです。生徒さんの目にはどんなときにも触らない、圧迫しないことが大切だそう。
上記以外の理由で、突然クラスで人が倒れた場合については中野陽子先生の過去記事も、ぜひチェックください。
このほかにもシチュエーション別に、インストラクターができる対策についてたくさんの学びをシェアしてくれました。
確かなキャリアを身につけて、長く活躍するために
高齢化の一途をたどる昨今、ヨガを取り入れるご年配の方が年々増加しています。そのためインストラクターは、これまで以上に医学的な知識を身につけることが重要になってきているといえそうです。レッスン中に、突如具合を悪くされる方や、最悪の場合では意識を失ってしまう人が出ることは十分に起こりうることだといいます。
そうした背景を受け、ヨガをより安全に実践、また指導するために役立つ“科学的な根拠”に基づいた知識の拡散を目的に考案されたのが本講義です。講義名についている「MTY」とはOMYOGAが提唱する、「Medical Therapy Yoga」の略。
代表・吉田さんの「ヨガがもたらす目に見えない身体や心への働きかけを見える化し、心身のトラブルの予防や緩和につながるヨガを広めたい」という切なる想いが、一つのカタチになって動き始めたプロジェクトです。
参加者の皆さんも、「ヨガインストラクターとして医学的根拠に基づいた知識を身につけ、より安全な指導をしたい」と考えられている方が多く、ウェルビーイングの本質をとらえてヨガと向き合う人の輪が、OMYOGAから広がっていることを実感しました。
「MTY 100医師に聞くヨガの話」では、生理学のほか、整形外科学や精神医学の講座も展開。整形外科学では、ヨガで生じたケガへの対処法から、ボディケアとしてヨガをする場合の注意点などを、体系的に学ぶことができます。講師は、整形外科医の井上留美子先生です。
精神医学の講座を担当されるのは、先にも紹介しました中野陽子先生の旦那様であり、精神科医でもある中野輝基先生。心の病についての正確な知識を身につけ、その上で“ヨガでできること・できないこと”を、しっかり学べる内容になっています。気になる人は、ぜひチェックしてみてください。