ヨガをすると身体が柔らかくなる理由〜その2〜

ヨガをすると身体が柔らかくなる理由〜その2〜

参加者の方がヨガを終えた後の反応のひとつに「身体が柔らかくなった」という声が聞かれます。みなさんも実際にヨガをした後に「身体が柔らかくなった」という感覚を経験されたことがあると思います。

このことに関しては、以前執筆した「ヨガをすると身体が柔らかくなる理由」の記事をご参照ください。

ヨガで身体が柔らかくなる理由、説明できる?解剖学的に仕組みを解説!

実は、上記記事で紹介したことのほかにも、「ヨガをすると身体が柔らかくなる理由」があるのです。今回は、そのことについて解説したいと思います。

ポイントは「関節の安定化」

ほとんどの関節は骨と骨で構成されます。そして、関節を安定化させるために靭帯・関節包・腱・筋肉が骨の周りに存在します。これらが働くことで動作時や、外力に対して関節が安定するのです。もし、これらが働かなければ関節にストレスが加わり痛みや変形といった問題が生じます。

肩関節や股関節は「球関節」と言って上腕骨、大腿骨の先端が球状の形をしていて、それが肩甲骨、骨盤に組み込まれています。まるで工具のソケットレンチのように、半球状の骨が、各関節にはまることで安定しているのです。

ポイントは「関節の安定化」
ポイントは「関節の安定化」

ただ、これだけでは関節は十分に安定しません。なぜなら人間は四肢を動かすため、動きの中で関節を安定できないと機能的ではないからです。特に肩関節は可動域が広く、関節のはまりが浅いために脱臼しやすいという特徴があります。

扉でたとえると、壁とのつなぎ部分のネジが緩んでいたら、扉はガタつき、開閉がスムーズに行えないですよね?それだけではありません。ネジの緩みが改善されなければ、扉をきちんと閉めることもできません。この状態で扉を使用し続けていたら、いずれ、さらなる不良箇所が生じ、扉としての機能をまったく果たさなくなります。そして、やがて扉は壊れてしまうでしょう。

肩関節や股関節の場合、扉のネジのような役割をするのがインナーマッスルという、筋肉の深層部です。インナーマッスルが働くことで関節は安定し、スムーズな動作が可能になります。

ネジが締まることで本来のスムーズな開閉をする扉と一緒ですね。同様に、インナーマッスルが機能せず関節が安定していないとスムーズに動かすことができません。このような上手く関節がはまり込んでいない状態で、身体を使い続けるとストレスを受け、関節変形が進行します。

インナーマッスルが使えないと、身体は硬くなる!?

ンナーマッスルが使えないと、身体は硬くなる
インナーマッスルが使えないと、身体は硬くなる

ただ身体の場合、扉とは異なり、インナーマッスルが機能しない際にはアウターマッスルが、その代役を担います

アウターマッスルは、本来大きなパワーを発揮して関節を動かす言わば“動力源”です。

肩関節なら上腕二頭筋、上腕三頭筋、三角筋など。股関節ならハムストリングス、大腿筋膜張筋、大腿直筋などが、該当します。しかし、アウターマッスルにとって代役は、当然ながら本来担うべき働きではありません。

そのため、代役が課されている最中は過剰に働くことになりますから、筋肉自体の柔軟性がどんどん低下してしまうことになるのです。結果として、常に筋肉が緊張した状態になります。これらの筋肉をつまんでみると思った以上に痛みを感じる場合、過剰に働いている証です。

実際に関節の動きに制限がある人の多くが、これらの筋肉の柔軟性が低下している傾向にあります。

この場合の改善策としては、インナーマッスルの筋出力を高めることが有効なのはいうまでもありません。本来の担い手であるインナーマッスルが、きちんと働くように導くことで、アウターマッスルの過剰な筋緊張は緩和し本来の柔軟性が戻ります。

つまり柔軟性には、ストレッチだけが有効なわけではないのです。本来の筋肉の使い方を学習することで関節が安定し、筋肉・関節の可動域はぐんと向上します。

では、インナーマッスルの筋出力を高めるには、どうすればいいのかというと、正しく身体を動かすことがポイントになります。

ヨガで柔軟性が高まるのは、身体を正しく動かせるから

ヨガで柔軟性が高まるのは、身体を正しく動かせるから
ヨガで柔軟性が高まるのは、身体を正しく動かせるから

手を挙げる、股関節を開く、背骨を捻る……など人間は様々な動きをしますが、各動作には、本来とるべき解剖学に沿った正しい動かし方というものがあります。

つまり、正しく身体を使う=正しく筋肉を動かす、につながります。これにより、インナーマッスルとアウターマッスルともに、本来の機能を発揮できるようになるのです。

そうして、筋肉が本来の働きを取り戻すことで、関節は自然と安定。アウターマッスルの筋緊張も緩和してきます。

その点ヨガは、正しい身体へのアプローチでアーサナを行うと、自然と解剖学に沿った身体の使い方ができるような仕組みになっています。

ヨガ熟練者なら、自分で身体の状態を確認し修正できますが、慣れていない人は、そうもいきません。最初から正しいフォームはとれないと思いますので指導者が丁寧にフォームを修正し、身体の正しい使い方を覚えてもらえるようサポートすることが大切です。

その際、無理に高いレベルのアーサナをするのではなく初心者でも比較的容易に行いやすいものから行い、身体の細かい部位まで意識できるといいですね。

まとめ

身体が硬くなるメカニズム

  1. インナーマッスルが本来の働きをせずに関節が不安定
  2. 不安定な関節を支えようとアウターマッスルが発動
  3. 次第にアウターマッスルは過緊張を引き起こす
  4. 結果として、筋肉の柔軟性が低下します

改善ステップ

  1. ヨガなどで身体を正しく動かし、筋肉本来の働きを目覚めさせる
  2. インナーマッスルが正しく機能。関節が安定
  3. 代償的に働いていたアウターマッスルの過剰な緊張が緩む
  4. 結果、関節の動きが良くなるので、身体が柔らかくなる