なかなか眠れない悩みに、ヨガはどれだけ効果がある?

なかなか眠れない悩みに、ヨガはどれだけ効果がある?

「眠れない時はヨガ」1度は聞いたことがあるフレーズですが、具体的にどのくらい効果があるのでしょうか?また、ヨガのどんなところが良いのでしょうか?そもそも、睡眠不足になると何が問題なのか、などヨガと睡眠に関しての疑問に様々な研究結果を参考にしながらお答えしていきます。

ヨガは睡眠時間と睡眠の質を改善する

ヨガは睡眠時間と睡眠の質を改善する
ヨガは睡眠時間と睡眠の質を改善する

まずは睡眠とヨガに関する研究結果を見てみましょう。

慢性的な不眠症に悩む20名を対象に8週間、毎日30分〜45分のヨガを行ってもらったところ、下記のような効果が示されました。

  • ベッドに入ってから眠るまでの時間:2.6時間 → 1.9時間
  • トータルの睡眠時間:5.4時間 → 6.0時間
  • 睡眠の質についての自己評価 → 2.7pt → 3.0pt

これらの結果は、慢性的な不眠症患者さんを対象にしていることを考えると、「目覚ましいものだといえる」と評価する専門家もいます。2)

では、ヨガの何が不眠に効果を発揮したのでしょうか。

更年期の女性を対象にした研究では、ストレッチを行うより、ヨガの方が不眠の改善に効果があると示されています。3)また、心臓の手術後に深呼吸を行うと、術後の睡眠の質が向上したという研究結果4)があることからも、単に身体を動かすだけではなく、呼吸・瞑想も含めたヨガの総合的なアプローチが効果的ということが見えてきます。

日本人はお酒に逃げがち!?

睡眠に関する国際調査の結果「アルコール摂取割合」
睡眠に関する国際調査の結果「アルコール摂取割合」

一般的に、不眠に悩む人はどのような対策をしている方が多いのでしょうか?睡眠に関する国際調査の結果によると、日本人の特徴は医療よりも“お酒に頼りがち”ということがわかります。不眠を理由に医療機関を受診する割合は、スペイン・ブラジルで50%弱、中国で25%強の一方、日本では10%以下と極端に低いのです。

その代わり、アルコールを摂取する割合は、スペイン・ブラジル・中国で10%前後ですが、日本では30%にも上っています。5)

アルコールには確かに催眠効果があり、寝つきが良くなりますが、実際には睡眠の質が悪くなることでも有名です。

実際に、私の知人がGerminを用いて睡眠の質を測ったところ、お酒を飲んだ日と飲まずに睡眠導入プログラムを行なった日では大きな違いが出たそうです。実際のデータは下記の通りです。

インストラクターの誘導によって身体の緊張や弛緩を繰り返す等の睡眠導入プログラムを実施した日(左)は休息を示す青が優勢になっています。一方、ワイン1本程度を飲んだ日のデータ(右)を見ると休息を示す青が少なく、赤のストレスが優勢で、十分に休めていないことがわかります。

Germinを用いて睡眠の質を測った結果
Germinを用いて睡眠の質を測った結果

ご本人の体感では、お酒を飲んだ日の夜は「良い感じに酔えた」と思ったそうですが、目覚めは悪く疲れがとれていなかったそうです。このように、お酒を飲むと寝つきは良くなっても、睡眠の質は下がってしまいます。つまり、たとえ睡眠時間が十分だったとしても、睡眠不足になってしまう恐れがあるのです。

そもそも、睡眠はなぜ大切なのか

そもそも、なぜ睡眠の量と質が重要なのでしょうか。睡眠不足になると、身体にも心にも影響があるのは、皆さん実感の通りです。実際に下記のような影響が出ることが研究6)によって示されています。

集中力が低下し、事故のリスクが上がる

産業事故リスクが約7倍、交通事故リスクは約2.5倍に上昇する。

活力が失われる

仕事をやり遂げる能力・他人との関わりを楽しむ能力・記憶力が低下する。

生活習慣病のリスクが上がる

高血圧の発症リスクが2倍弱にまで上昇、糖尿病のリスクは7〜8時間睡眠に比べて5時間未満だと2.51倍に上昇する。

気分が落ち込みやすくなる

睡眠の充足感が低い程、抑うつスコアが高くなる。

このように、睡眠不足は心身共に大きな影響をもたらし、“生活の質”の低下に直結してしまいます。逆に言うと、睡眠の悩みを解決する事は、活力が生まれ、心身共に健康になり、勉強や仕事、日常生活がうまくいくことに繋がっているのです。

ヨガで量・質ともに十分な睡眠を

ヨガマットの上で女性がリラックスしているイラスト
ヨガで量・質ともに十分な睡眠を

皆さんの睡眠の質、量、そして生活の質は今どのような状態でしょうか?また、どの程度、睡眠と向き合っているでしょうか?自分の睡眠を良く観察し、問題が起きた時には自分なりの対処法を持っておくと良いかもしれません。

私の場合は、眠れない時の具体的な対処法を3段階用意しています。

  1. トイレに行ってお茶を飲む
  2. それでも眠れない場合は、睡眠時の服・布団の厚さ・室温が適切か見直す
  3. それでも眠れない場合は、無理に寝ようとしない

多くの日は(2)までの段階で眠れますが、さらに眠れないと焦りが出てきます。ただし、「眠らなきゃ」と意識すればするほど、睡眠はいつも遠ざかってしまうもの。「目を閉じて横になっているだけでOK。それでも少しは回復するから」と自分に言い聞かせ横になります。

ここで問題になるのが、「目を閉じて横になっているだけ」という時間が“恐ろしく暇”に感じることです。ヨガの知恵をかりるのはこの時です。暇つぶしを兼ねて、呼吸の数を数えたり、ボディスキャンを行なったりするうちにいつの間にか寝てしまいます。これが私の眠れない時の対処法です。日中のヨガ・呼吸法・瞑想はどちらかというと、この対処法を行わずとも眠れる日を増やすことに貢献してくれていると思います。

この実感は、冒頭で紹介したヨガの不眠に対する研究結果とも合致するように思います。日中のヨガは“眠れない”と悩む日を減らすために、そしてボディスキャンや呼吸を数える瞑想法は“眠れない”と悩んでいる時の特効薬として、試してみてはいかがでしょうか?

参考資料

  1. Khalsa, S., B., S., Appl Psychophysiol Biofeedback, 2004 Dec; 29(4):269-78.
  2. 古宮 昇, 2008, ヨガの心理的問題への治療効果, 大阪経大論集, 59(1)
  3. Afonso RF, et al, Menopause, 2012;19:186–193.
  4. Ghorbani A, et al, J Caring Sci, 2018 Dec 1;8(4):219-224.
  5. 大川 匡子, 2012, アジアにおける睡眠医療の現状と展望, 保険医療科学, 61(1):29-34
  6. 駒田 陽子, 2007, 睡眠障害の社会生活に及ぼす影響, Jpn J psychosom Med,47:785-791