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日本でも少しずつ広まってきているキッズヨガ。海外では、子どもたちを対象としたヨガの研究が急速に進められ、その多岐にわたるメリットが明らかになってきています。今回は、子ども時代に切り離せない勉学に影響する“記憶力”に着目してキッズヨガの効果を紹介します!
アメリカで広まる教育現場でのキッズヨガ
現在、ヨガや瞑想をベースとしたプログラムが提供されているアメリカの学校は940校以上。(2015年の調査)1)大人向けのヨガに比べると、その歴史はまだ浅いですが、急速に普及と研究が進んでいるのが子ども向けのヨガです。
それらの研究によると、子どもたちがヨガをすることで「ストレスマネジメント能力」「集中力」「自己コントロール力」の向上、「不安」「恐れ」の軽減など、大人と同様、様々なメリットがあることが示唆されています。2)
今回はその中でも、勉学に影響を与える記憶力やIQに関しての研究からキッズヨガのメリットについて紹介します!
ヨガで長期記憶、瞑想で短期記憶UP
2020年7月に発表されたドイツの研究によって、ヨガや瞑想が子どもの記憶力にどのような影響を与えるのか明らかになりました。
研究では、8〜10歳の子ども73人を(1)呼吸瞑想を行うグループ、(2)ヨガを行うグループ、(3)コントロールグループに分け、8週間プログラムを実施してもらった後の記憶力を評価しました。
各グループの結果は以下の通りです。
呼吸瞑想グループ | 長期記憶力UP、短期記憶力UP |
---|---|
ヨガグループ | 長期記憶力UP |
コントロールグループ | 変化なし |
ヨガだけだと長期記憶力のみの向上、呼吸瞑想グループは、長期記憶・短期記憶ともに向上が見られました。子ども向けのヨガをやる際は、アーサナだけでなく、呼吸や瞑想も取り入れると良いことがわかります。
ヨガ・呼吸・瞑想で記憶力が向上するワケ
なぜ、ヨガでは長期記憶力、呼吸・瞑想で長期及び短期記憶力の向上効果が得られたのでしょうか。他の研究を元に、その理由を探ってみましょう。
理由1:記憶力向上に役立つエネルギーが増加
運動後に食事と睡眠をしっかり取ると、備蓄用のエネルギーである脳のグリコーゲン量が増えます。脳グリコーゲン量が増えると、学習・記憶に関するテスト成績が向上することが示されています。3)
このことが、ヨガによって長期記憶力が向上した理由の1つかもしれません。
理由2:鼻呼吸で脳が省エネモードに
口呼吸と鼻呼吸を比べると、口呼吸では脳の酸素消費量が多いことがわかっています。4)つまり、口呼吸だと脳の燃費が悪くなり、慢性的な脳の疲労に繋がると考えられます。
呼吸法を練習し、普段から無意識的に鼻呼吸が行えるようになると、脳は省エネ運転になるため、記憶力の向上が期待できます。
理由3:瞑想で短期記憶を司る海馬が大きくなる
8週間のマインドフルネス練習により、海馬の灰白質が5%大きくなることが示されています。5)海馬は、記憶・空間認識・感情制御を司っている脳の領域で、記憶の中でも30秒程度の短期記憶を担っています。
ヨガでは実現できなかった瞑想による短期記憶力向上の理由は、このことが大きく関わっている可能性があります。さらに、海馬は感情制御も担っているため、子どもたちの瞑想トレーニングによって、感情のコントロールが上手になり、ストレス対応能力の向上も期待できます。
コロナでさらに求められるキッズヨガ
子ども時代は勉強とは切っても切り離せない時期ということで、今回は「記憶力」に着目してみました。しかし、ヨガの最も大きな恩恵は、子どもたちに心身の調和・安定がもたらされるところにあるかもしれません。
そもそもキッズヨガの始まりは、アメリカにある犯罪・貧困・暴動の巣窟だったある学校だと言われています。学校の健全性を向上させるためのヨガプログラムを開発・実施したところ、子どもたちの集中力・学業・ストレスマネジメント能力・自尊心が育まれ、学校が生まれ変わったようになったそうです。6)
ストレスとの上手い付き合い方を習得できていない子どもたちは、ストレスを何らかの非道徳的な行為で表現することがあります。私自身、小学校6年生の時に他クラスで学級崩壊とも言えるような状況を目にしました。
今から考えると、中学受験を目前にした子どもたちのストレスが学級崩壊やイジメの引き金だったのだと思います。こんな時に、ヨガ・瞑想があったら少しは違ったのではないか…と考えてしまいますね。
今現在、新型コロナウイルスの影響で大幅な生活の変化が強いられ、子どもたちもストレスを抱えやすい時期だと言えるでしょう。こんな時だからこそ、家で安全にできるキッズヨガや瞑想をご家庭で取り入れてみてはいかがでしょうか?