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食の迷いに答えを
ヨガをしていると、自分の心や体を見つめる機会が増えることで、自然と食事にも意識が向くようになる人が多い。
一方で、近年、ダイエットや美容は常に中心となる話題の一つで、それらに直結する食事に関する情報は世の中にあまりにも多くあふれ、何が正解なのかわからない人も多いのでは?
今回は、ヨガをする人が気になる、食にまつわる疑問にアーユルヴェーダ的視点から答えていく。食事について迷った時は、伝統的な生活の智慧、アーユルヴェーダを指針に自分に最適な食を選択してみて。
Q1:ヨギーやヨギーニでも実践する人が多い菜食主義は、理想的な食事法?
ヨガの食におけるキーワードは「消化力」。その点で、菜食はマイナス面がない。特にフルーツや生野菜は消化が軽い。
ただし、体を冷やす作用もあるので白湯を同時に取るなどしてバランスを取るといい。栄養素的に見ると、菜食はビタミンB12が不足気味になるので、植物性のイーストで補ってあげよう。
注意したいのは、無理してまで菜食に執着するのは逆に不健康ということ。食によってどう体や心が変化するのか観察し、自分に合っているかどうか見極めよう。
Q2:朝食抜きは正しい? 食事は一日何回するのがいい?
現代人は食べすぎの傾向にある人が多い。アーユルヴェーダでは一日3食規則正しく食べ、朝・昼・夜の食事の量は2:3:1を推奨している。
ランチの「3」が腹八分目に当たる量で、固形物は全体の3分の1にすることが理想だ。「腹六部目で老いを忘れる」というヨガの教えからも、少量をよく噛んで食べることが基本。
自分の消化力に見合った食事は、本当の意味で心と体にご馳走となるだろう
Q3:自然派にこだわるはなぜ? オーガニックでないとダメ?
なぜオーガニックがいいのかを考えてみよう。答えは、農薬などの有害物質や消化・分解しきれないものを体に入れないためだ。
農薬にまみれた野菜、遺伝子組換え、ホルモン剤に食品添加物と現代の食は決して安全とは言えない。オーガニック以前にまずは“危険なもの”を摂らないことを心がけよう。
また、人間は食から栄養だけでなく、オージャス(元気や輝きの素)というエネルギーも取り入れているとヨガは考える。農薬により循環力を失った土壌で育てられた植物に、生命力や栄養素は十分と言えるだろうか?
オーガニックが絶対ではないが、そういった観点からも、オーガニックを選ぶことは私達の体にさまざまな恩恵があるのだ。
Q4:水を飲むタイミングはいつがベスト?
言わずもがな、水分補給はとても大切。ヨガのクラスの前、運動量の多いヨガの場合はクラスの途中、そしてクラスの後と、ノドの乾きを感じたらその都度水分補給をしよう。吸収力を上げるためには、一気飲みは避け、こまめに少しずつ飲むといい。
注意してほしいのは、「一日何リットル飲むべき」という一辺倒な情報。消化力の差で人それぞれ適量は違ってくる。飲みたくない時に無理して飲むのは禁物だ。また食後に水分を取ると消化の火を消してしまう。食前に飲むように心がけて。
Q5:ファン急増中! ファスティングはやったほうがいい?
「万病を治癒する」とまで言われるファスティング。さまざまなストレスに囲まれた生活を送る現代ヨギーニにとって、ファスティングは心身を整える効果的なメソッドだ。
ファスティングの狙いは大きく二つ。一つ目は、365日休まず働いてくれている内臓を休ませてあげること。そして二つ目は、食物の消化と吸収に使うエネルギーをデトックスとヒーリングに回すことで、細胞からリセットすること。
ファスティング後は五感の解像度が上がったことを実感するだろう。逆効果にならないよう必ずプロの指導の下、実行すべし!
Q6:ヨギーニとして気をつけるべき間食って?
チョコレートとコーヒーは控えるほうがオススメ。これらの二つに多く含まれているカフェインはラジャス(激性)を上げる性質があるのだ。
ついついポーズの形を取ることに執着してしまう時ってないだろうか? もしかすると、ラジャスが上がりすぎ、内観力の妨げとなっているのかも。ヨガの前はオーガニックのデカフェをチョイスするなど工夫してみよう。
また精製されたスイーツ類は体を「重たくて動かない」性質のカパへ傾かせ、アーマ(未消化物質)を作りやすいので少量を心がけて。
Q7:ヨガの後のビール最高! でも、本当のところアルコールはどうなの?
アーユルヴェーダでは、アルコールはダメとは言われていない。ただし落ち着いた場所で落ち着ける人と楽しむことが推奨されている。
ということは、興奮状態にあるヨガの直後は避け、少し時間をおいて嗜むのがベター。自分の体の状態をよく観察した上で、“適度な量”で、リラックスした楽しい時間を過ごすことも心身のバランスを取る上で一つの選択肢。我慢するのではなく、うまく取り入れよう。
大事なのは循環と調和
自分の食事を省みると、「全然守れていない…」と感じる人もいるかもしれない。しかし、すべてにストイックになりすぎて、暮らしづらさを作るのは間違いであり、循環や調和の中で生きるべきだとアーユルヴェーダは教えている。
「絶対に守らないと!」と意気込むのではなく、心身が喜び、ヨガの効果を感じる食を少しずつ取り入れるところから始めてみよう。
とみおかかずや。料理人、フードコーディネーター、栄養士、インド政府機関認定アーユルヴェーダセラピスト。食のアトリエ『Natural Lifestyle』代表。 instagram: @kazuya_naturallifestyle
文=Yogini編集部