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ヨガやアーユルヴェーダでは、過去に追った傷(トラウマ)、強い恐怖・苦痛をともなう経験の積み重ねが、心と体にあらゆる不調を引き起こすと考えています。不調とまではいかなくても、対人関係におけるネガティブパターンや、偏ったものの見方につながることもあり、だからこそ心身ともに傷は浅いうちに対処することがとても重要です。
とはいえストレス社会といわれる現代。無意識のうちに、たくさんの傷を心に抱えていることが多く、大抵の場合、家族やパートナーとの関係が悪化したり、大病を患ったり、問題が複雑化し肥大化して初めてじぶんと向き合うケースが多くなっています。
この状態では、なかなかじぶんひとりでは心身ともに元のニュートラルな状態には戻れないものです。そういうときの支えになるのが、メンターやガイドと呼ばれる存在。
じぶんを本当に変えることができるのは、じぶんだけ
私も、ときにこうしたガイド的な存在となり、生徒さんたちが抱える問題に光を当てて解決へと導くことが求められることもあります。
ただ本人以外の誰かができることは限られています。たとえガイドであれ、家族であれ。結局は本人の気づき、決意がなければ本当の意味で変化することはできないからです。
じぶんにとって何が心地よくて心地悪いのか。それを自分軸で気づいていくことが一番の解決策になります。
大切なのはハートのセンサーを復活させること
よく、いま抱えている不調を改善するために何をしたらいいのか。何を摂取したらいいのか、というアドバイスを求める方がいます。それを教えることはもちろんできます。でも、いまじぶんにとって必要なことを察知できる感覚(ハートのセンサー)は、本来誰もが備えているのです。
明るい部屋では、どこに何があるのかすぐにわかるけれど、暗い部屋ではすべてが手探り状態。
心と体に負った傷が多く深い場合、偏った思考や、蓄積されたネガティブな感情によってハートのセンサーは完全オフモード……。いまじぶんにとって何が必要なのか、まったく見えません。まさに暗闇の部屋のなかにいるのと同じ状態ですね。
ヨガやアーユルヴェーダの叡智というのは、このハートもセンサーを復活させるためにあります。
どんなことも解決する力はじぶんにある
ヨガやアーユルヴェーダの叡智は安易に答えを教え、与えるハウツーではありません。外に答えを求めなくともいま必要な答えをじぶんの内側に見出せるようになるための教えです。だからこそどの教典でも、実践の積み重ね、その重要性を説いているのです。
不調を根本から解決するためにやると決めたこと。それが瞑想であれ、鼻うがいであれ、アサナであれ、どれかひとつでも粛々と継続していくと必ず、心と体の反応、ちょっとした変化が見えてきます。
この体感をともなう気づきは、知識だけでは得ることができない尊いものです。そうして、実践による気づきが深まるほどに、じぶんでじぶんを快適にすることが、どんどん上手になっていきます。
たとえいま大きな問題に直面していようとも、その状況から抜け出し、変化する力はみんなじぶんにあるのです。
どうすればいいのか。それはじぶんにしかわからないこと。ティーチャーができることは、そのきっかけを与え、ひとりひとりの完全性を信じることだけです。
日常すべてがプラクティス。小さな声にも耳を傾けて
ヨガやアーユルヴェーダを実践している人は、少しずつ心に蓄積された傷、ハートのブロックが薄れてきているのではないでしょうか。ヨガを始めたばかりの頃と、いまのじぶんを比べてみると、どんな変化がありますか?
まだじぶんの感覚に自信をもてない、という人は日常の小さなことから心の声を聞くことも習慣にしていきましょう。
たとえば、いま食べたいものを食べる。疲れたら休む。欲しいと感じたものを買う。夜遅い時間だから食べないほうがいいとか、こんなことで休んだらダメだとか、高価だから我慢しようとか頭で考えて押しやらず、小さな欲求をちゃんと満たしてあげることも大切です。
ちょっとしたサインを無視して、我慢をするから、あとで爆発して必要のないものを買ってしまったり、暴飲暴食をしたり……不調和な状態へと傾いてしまうのです。
小さなサインを逃さず、その都度じぶんに正直でいると本当の意味で必要なものと、そうでないものがどんどん明確になってきます。その結果、外の情報や誰かに頼らなくても、いま必要な選択をラクにスムーズにできるようになっていくのです。この実感、体感が自信、自己信頼感につながっています。
ハートのセンサーが復活し、じぶんとのつながりが強くなったとき、すっかり不調から抜け出ていることに気づくでしょう。