健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方が多いかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2021年末までに6,600件をも超える報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は、学年末の最終試験前といったストレス下における学生に対するヨガと瞑想の効果について事例を紹介します。
研究の背景
アメリカでは2017年に大学生は他の世代と比較して高ストレスレベルであるとの報告があった中、ヘルスケア専門職に関連して学ぶ生徒たちはより高いストレスを感じているとも言われています。
これまでにヨガや瞑想は、ストレスや不安を減らし健康を保つことにつながると広く知られてきました。
サンスクリット語で「心と体を統一し現在に集中すること」や「マインドフルネス」を表す「サンヤマ」と題した、ストレス・不安・マインドフルネスに対するヨガと瞑想の評価プログラムによって薬学を学ぶ学生に対する効果を検討します。
実施されたヨガクラスと評価方法
ロードアイランド大学(ロードアイランド州)にて、学生のストレスや不安レベルが最も高くなることが考えられる春学期、最終試験直前の6週間に評価が実施されました。
RYT200※1および瞑想インストラクターの資格を有するインストラクターが担当し、週1回のペースで60分のビンヤサフローヨガと10~30分の瞑想のクラスを行いました。
瞑想の種類については、歩きながらの瞑想やサマタ瞑想など様々を含みます。
以下の指標により点数方式で評価を行い、初日と6週間後の状態を比較しました。
- ベックうつ病調査票(BAI)※2
- 知覚されたストレス尺度(PSS)
- 五面性マインドフルネス質問票(FFMQ)
- ※1 RYT200:RYT(Registerd Yoga Teacher)200とは、実技と座学を含む200時間のカリキュラムを経て取得する、全米ヨガアライアンス認定ヨガインストラクター資格。
- ※2 ベックうつ病調査票(BAI):抑うつの程度を客観的に図る自己評価表。
結果
19~23歳の17名(うち女性13名、男性4名)が参加しました。そのうちの9名は薬学博士課程を学ぶ学生です。
今回参加した学生のうち、大部分がすでにヨガの経験(88%)や瞑想の経験(77%)があると回答しています。
プログラムの実施前後の結果を比較したところ、不安に関するBAIスコア(19.5→9.9)とストレスに関するPSSスコア(21.8→13.9)が顕著に減少し、マインドフルネスに関するFFMQスコア(115.5→136.6)が顕著に増加していることが確認されました。
このサンヤマプログラムは、学生にとって最も一時的な負荷が高くなることが懸念される、学年の最終試験6週間前に実施されました。
プログラム開始時点においては、約3分の1の生徒が高レベルのストレスと不安を感じていると報告していたのに対して、終了時点ではすべての参加者のストレスと不安のレベルが下がっていたことが分かりました。
今回の結果を受けて、今後さらに研究が進むことにより、試験期間中といった一過性のストレス負荷だけでなく、ヘルスケア関連などの高等教育機関でヨガや瞑想を含む統合医療的な視点を取り入れることによって、より長期的にも生徒自身のセルフケアにつながるサポートへとつながる可能性が示唆されました。
2009年には、ヨガによって成績が上がるとの報告も!?
インドのパンジャブ州ジャランダルにある8つの公立学校に通う14~15歳(日本の中学3年生頃)の生徒800人(男女400人ずつ)を対象にした研究では、毎朝1時間のヨガクラス(アーサナ・プラーナヤーマ・瞑想・礼拝など)の7週間続けたところ、ヨガをしなかった生徒のグループ(偏差値22.4)と比較すると、数学・科学・社会学のテストの結果、偏差値が32.6と顕著に高くなったと報告されています。
また、この研究においても生徒のストレスレベルが確認されていて、ストレス負荷が高い生徒の偏差値が24.8であったのに対して、ストレス負荷が低い生徒の偏差値は30.2と、ストレスが低い方が学業成績が高い傾向にあることも示されました。
高ストレス状態は心身への何らかの影響を及ぼし、必要な時に注意力を注ぐことなど、学業や将来の仕事に必要な、パフォーマンスを十分に発揮することが妨げられる可能性があります。
ヨガや瞑想の練習などを通してセルフケアの手法を学生のうちから身に着けることはストレスの軽減だけでなく、さらには集中力を高め多方面でのパフォーマンス向上にも役立つかもしれません。