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新緑の季節から太陽がさんさんと降り注ぐ夏へ、「陽」のエネルギーが盛んになって行きますが、その前に、少し「陰」の力が強くなる梅雨があります。
しっとりと降り注ぐ雨には風情があります。しかし、どんよりとした空、湿気たっぷりの重たい空気、そんな日が続くと、気持ちも身体も重くなりがちです。
心にも身体にも潤いは大切ですが、湿気が多過ぎると、「湿邪」となり、身体の中で悪さをします。
梅雨に大切な『湿』のコントロール
『湿』は万病の元とも言われています。
私が鍼灸の研修でお世話になった中国人の鍼灸師の先生は、不妊で悩んでいる患者さんは、『湿』が溜まっている人が多いと言っていました。
湿気が思わぬところで、身体のアンバランスを引き起こしてしまうので、湿度が高くなるこれからの時期は、特に湿コントロールが大切です!
今回は、体内の『湿』をコントロールし、梅雨を少しでも軽やかな気持ちで過ごす養生についてお伝えします。
『湿』が溜まっている人の特徴
こんな症状が気になる方は、『湿』が溜まっています。
- 身体が重だるい
- 脚がむくむ
- 痰がよく出る
- 雨の日に具合が悪くなる
- 下痢または軟便ぎみ
- 湿疹ができやすい
- 疲れやすい
- 疲れが取れない
- 口臭が強い
- 大便が臭い
また、自分の舌の状態からも『湿』の溜まり具合をチェックできます。
- 舌のふちに歯の跡がついてギザギザになってる
- 舌の表面を覆う苔がべっとりしている
- 舌が腫れぼったく、舌を出した時に口角にあたる
こんな場合も、『湿』が溜まっているサインです。
『湿』が体に起こす作用
『湿』の性質は、粘り気があり、重たさがあり、下に向かう傾向があります。
そのため、身体の水分も下に向かい、下半身のむくみが起こりやすくなり、『湿』の重さが、気持ちをも重くします。
また、『湿』が溜まると、『脾』の働きが弱まります。湿気が『脾』にこもることで、『脾』の働きである運化作用が衰えてしまうのです。
「運化作用」とは、「運」は、動かすこと。食べたものを栄養として全身へ運び、不要なものは大腸へ移動させる働きです。
「化」とは、消化のことを指し、必要なものを栄養に、要らないものを排泄物へと変化させます。
『湿』と『脾』の関係性
なぜ『湿』が溜まると『脾』の働きが弱くなるのか。それは、『陽』の気が『脾』の「運化作用」の働きを手伝っているからです。
『陰』の気をもつ『湿』が多くなると、『陽』の力が弱まってしまい、『脾』の「運化作用」を手伝う力が弱まってしまうのです。
つまり、『湿』があると、いくら栄養があるものを食べたとしても、『湿』が壁になってしまい、消化と吸収の邪魔をします。
『湿』が溜まる原因
『湿』は、梅雨のように環境が原因で体内に溜まる「外因」と、食べている物が原因で溜まる「内因」があります。
『湿』が溜まる「外因」
梅雨以外でも、水辺など湿度が高い環境に住んでいると『湿』が溜まりやすくなります。
湿気が多い環境で暮らしている場合は、太陽の光を浴びることで、陰の気である『湿』の働きを弱め、陰陽のバランスを取ることができます。
ただ、梅雨時期は太陽の力をあまり活用できないので、特に食べ物に気を付けて陰の力が強くなり過ぎないようにすることが大切です。
『湿』が溜まる「内因」
冷たいもの、甘い物、揚げ物は『湿』を増加させます。
また、水分の取り過ぎも、『湿』を溜める原因になるので、『湿』による症状が現れていると感じる方は、水分の摂取量にも気をつけてみましょう。
1日に2リットル水を飲むことを推奨されることもありますが、それぞれの体調、体質に応じて水分の摂取量を調節することが大切です。
梅雨の時期の食生活
五行の考えで、『湿』、『脾』、『甘』は、全て『土』に属します。
ストレスや疲れが溜まると、『脾』を助けようと甘い物を食べたくなります。適量の甘いものは『脾』を助ける力となりますが、過度になると『湿』が生まれてしまい、「気」、「血」、「水」の循環が悪くなり、むくみや重だるさを招きます。
甘いものを食べたくなる理由の1つに、栄養不足があります。
炭水化物を控えめにしている方もいますが、東洋医学では、お米や大豆などの穀類を4〜5割、野菜を4割、肉類、魚介類などの動物性蛋白を1〜2割で食べると良いとされています。
バランス良くしっかりと食べることも『湿』のコントロールになります。
また、お米は精神を安定させる働きがあるので、気持ちが落ち着かない時にもお勧めです。
梅雨の時期に避けるもの食べるもの
特に梅雨時期は甘いものを控えめにして、『湿』を溜めないようにしましょう。
甘いものが好きな方は、甘いものを禁止にすると、返ってストレスになるので、チョコレートを食べたいと思ったら、ビターチョコにし、生クリーム系のスイーツを和菓子やゼリーにしてみるのも良いかと思います。
乳製品は、『湿』を増やすので、クリーム系スイーツの食べ過ぎには注意が必要なのです。
反対に、小豆、ハトムギは、余分な『湿』を減らし、『脾』の働きを強くしてくれる、梅雨にお勧めの食材です!
私は、むくみや重だるさを感じる時、小豆茶を飲んだり、ハトムギパウダーをお米に混ぜたり、お味噌汁に入れていただいています。
『湿』の影響で胃腸の働きが弱っていると感じたら、じゃがいも、さつまいも、大豆がお勧めです。重だるさ、停滞感を感じる時は、紫蘇や生姜を食べると良いでしょう。
お酒を飲む方は、『湿』が溜まりやすくなるので、紫蘇や生姜を使ったおつまみを食べたり、翌日は小豆茶を飲んだりすると、ストイックにならずに、楽しみながら「湿コントロール」をできます。
ヨガとツボ押しで梅雨を乗り切ろう
ヨガや運動をして汗をかく、バスソルトを入れて半身浴をするなども『湿』を溜めることの予防になります。
また、ツボ押しも『湿』の除去や胃腸の働きを改善に役立ちます。
陰陵泉 湿気をとる
承山 除湿と陽気を高めて疲れをとる
痛いと感じる場合は『湿』が溜まっています。
足三里 湿によって弱っている脾と胃の働きを強める
ヨガや入浴にツボ押しをプラスしてあげましょう!
参考資料
- 現代語訳 黄帝内経素問 南京中医学院編 石田秀実監訳/東洋学術出版社