今、ずっと痛みを感じている部分はありますか?
厚生労働省の調査(2019年国民生活基礎調査)によれば、日本人が症状を自覚する病気や怪我のランキングでは「腰痛」と「肩こり」が男女それぞれの1位2位に上がっており、普段から痛みを抱えている方が多いことがわかります。
研究によると、ヨガや瞑想をすることで、辛い慢性的な痛みや疲労感が軽減することがわかってきました。
痛みはどうやって感じている?
まずは痛みを感じる仕組みからお伝えしていきます。
私たちの身体には、「レセプター(受容器)」と呼ばれる皮膚感覚を感知するセンサーが存在します。
その中で、痛みを感知するレセプターに刺激が加わると、電気的な信号に変換され、その信号が脳まで伝わり、脳が「痛み」として解釈することで「痛み」が生じます。
ただ、同じ怪我や病気でも、ある人にとってはたいしたことのない痛みに感じ、ある人にとっては動けないほどの痛みに感じられます。
この違いは、「痛み」は単なる電気信号による痛み刺激だけではないことに由来します。
レントゲンや MRI を使った研究によって、知覚される痛みの量は組織の損傷の量で決まるわけではないことがわかってきています。
痛みの感じ方
IASP 国際疼痛学会は痛みの定義を「組織損傷が実際に起こった時、あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚及び情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚及び情動体験」としています。
痛みは、私たちの生命を守るための防御機能であるため、痛みの記憶は単なる感覚としての記憶だけではなく、不安や恐怖などの情緒的な不快感や、認知的な不快感の情報も記憶されます。
つまり、どれほどの痛みを感じるかは、脳が痛みの信号をどれほど危険なものと解釈するかによって決まります。
慢性的な痛みにヨガが効く
慢性的な痛みがある場合、多くは回復を待つべき身体的損傷は無くなっていることが多いので、体を休ませるよりもむしろ動かすべきであると考えられています。
そこで有効なのがヨガです。
慢性的な痛みの多くは、情緒的、認知的感覚の影響で、痛み刺激を脳が正しく解釈できなくなることで起こりやすくなることが考えられます。
ヨガで呼吸と共に自分自身の内側に意識を向ける時間をとることによって、痛みに影響する情緒的、認知的感覚を正常に近づけることが期待できます。
実際に、研究でもリラックスを促すアーサナや瞑想は、痛みの反応の調節に役立つことがわかっています。
ヨガによる呼吸やアーサナで、全身の血流も促進され、細胞の生まれ変わりの促進を期待することができます。
「今」を感じて痛みを軽減
慢性的な痛みがある方は、きっと頑張り屋さんなのではないかと思います。
誰かのために、いつも頑張っているから、痛みがあっても後回しにしてしまうのかもしれません。
そんな方にこそ、ぜひヨガをしていただきたいです。
無理に痛いアーサナをキープする必要はもちろんありません。ただ、自分の呼吸を感じて、目を閉じてリラックスするだけでも、「今」を感じることができます。
「今」を感じることが、痛みの軽減に繋がるかもしれません。
是非、自分自身に意識を向ける時間を作ってみてあげてください。
参考文献
- サイエンス・オブ・ヨガ
著者 アン・スワンソン
監修者 高尾美穂
翻訳 プレシ南日子 小川浩一 瀧下哉代
世波貴子 薮盛子 石黒千秋 浦谷計子
出版社 株式会社 西東社
2019年11月25日発行
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf - 専門家が教える痛みのメカニズムと対処方法 | ぜんしん整形外科 スタッフブログ
- Study finds yoga and meditation reduce chronic pain
- アイソメトリックヨガは通常治療に抵抗性の慢性疲労症候群患者の倦怠感と疼痛を改善する : ランダム化比較試験(英文誌から)