高齢者向け身体的運動としてのヨガの効果

健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方がいらっしゃるかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。

文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2022年12月末までで7,300件を超える報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。

今回は高齢者向けの身体的運動としてのヨガの効果に関する2021年の研究について紹介します。

原文タイトルにある Meta-Analysis（メタアナリシス、メタ解析）は、すでに発表されている類似のいくつかの研究結果をとりまとめて総合的に評価をする方法で、統計的に精度が高いと言われる手法の1つです。

文献検索をする際のキーワードとして「メタ解析」を頭の片隅に置きながらウェブサーチするのもいいかと思います。

研究の背景・目的：高齢者向けの効果的なヨガトレーニングプログラムを検証

すべての高齢者にとって、自立した生活を継続して送ることは大切な目標です。

ヨガはすでに様々な健康効果があることが分かっております。

1. 二型糖尿病患者の血中グルコース濃度を下げる
2. うつ症状や不安症状を改善する
3. 痛みを軽減する
4. 睡眠障害を改善する
5. QOLの向上

上記等の報告がこれまでにされていることから、身体的、精神的、感情の面で総合的に健康促進効果があるということが分かってきました。

またヨガは、実践することが比較的に簡単で、特別な設備が必要なく、広い場所も必要としないため、老若男女問わずにさまざまな人から受け入れやすいのも特徴です。

すでに多くの健康効果が分かってきており、実践者の年齢や健康レベルなど、いかなる身体的特徴を有する人にでもヨガをすることが可能なである一方で、例えば心血管系の疾病を有する人には不向きなポーズがあることも言われています。

高齢者の身体的健康や活動に特化してみると、身体機能の低下、転倒のリスク、日常的な活動を助けなく1人でも行えることなどが着目されます。

この研究では、これまでに発表されている運動機能や種々の疾病に対するヨガの文献をとりまとめ、高齢者向けの効果的なヨガトレーニングプログラムを検証します。

研究の方法：対象の文献の中で研究の目的に合うものに絞り込み解析

60歳以上の年配者を対象とした文献で一次スクリーニングをしたところ2021年3月の研究時点で656の文献がヒットし、その後今回の研究の目的に合う12の文献に絞り込みをして解析を行いました。

主な検索キーワードは以下のとおりです。

• Yoga（ヨガ）
• Elderly（高齢者・年配者）
• RCT research（無作為化比較試験

研究の結果・結論：ヨガは運動機能的に効果がある

ヨガの介入によって、運動機能的には以下に大きな効果があることが分かりました。

• 上肢の筋力
• バランス能力
• 体の動きやすさ、可動性
• 下肢の筋力および柔軟性

一方で、心肺持久力と上肢の柔軟性に対しては顕著な効果は確認されませんでした。

対象となる年齢については、60歳代および70歳代を対象として効果が得られた研究が多く、一方で80歳代に対する報告の数は少ないことが分かりました。

ヨガ練習の実施の期間については、9～12週間を対象として効果が得られたと報告された研究が多く、次いで8週間以下が報告され、一方で13週以上を対象とした研究による報告は少ないことが分かりました。

ヨガは、高齢者に向けて筋力・バランス力・可動の向上の観点で良いアクティビティーとなるでしょう。

また身体的な効果と共に精神面での健康効果にも期待がされます。

ヨガは、ポーズや呼吸、瞑想など色々な方法があるのとともに、タオル・ブロック・椅子などのプロップスを用いた方法によって、強度を調整しながら行うことができるのも良いところの1つであると感じます。

高齢者にとっては、下半身の筋力低下によるふらつきや転倒、およびそれによる骨折なども怖いこと。

リラクセーション効果がありながらも、体の動かしやすさを感じ、筋力を維持向上することができるヨガは、人生100年時代を心身ともに健康に過ごすための助けとなりそうです。