屋外のヨガクラスで目を閉じて集中する女性

ヨガで節度のある快適な生活を

ヨガを練習して自分の心と体に意識がいくようになると、自分の生活スタイルがどれだけ影響を与えているのか気になるようになってきますね。

睡眠時間、食べるもの、仕事、それらに影響を受けて、自分の性格や容姿まで変わってしまいます。

ヨガでは、極端なことを避け、節度のある生活を送るようにと説いています。

自分の快適さに繋がる生活とはどのようなものなのでしょうか。

クリシュナ神が説く節度のある生活

教典『バガヴァッド・ギーター』の中でクリシュナ神は、節度のある生活の大切さを説きます。

苦を滅するヨガに成功する人は、摂食をして、散策し、節度をもった行為をして、節度をもって睡眠し目覚めている人である。(バガヴァッド・ギーター6/17)

何かを得たいと思っている時、私たちは極端になりやすいです。

例えば、充分に寝ずに仕事をしたり、偏った食材ばかりを食べたりと、バランスを崩してしまうことがあります。

しかし、何かを得るために極端な行動はよくありません。

クリシュナ神は、ヨガを成功させる秘訣の1つとして、節度のある生活について説きました。

バランスよく食べる節食

クリシュナ神は、食べ過ぎることも、食べなさ過ぎることも良くないと説きます。

古代インドの修行者たちは、とても厳しい苦行をしており、断食を行う修行僧もとても多かったです。

そんな修行僧たちの中には、断食の末に餓死するものもいます。

現代のインドでもジャイナ教という宗教の僧侶の中には厳しい断食をする人がいて、先日も断食の末に餓死した高僧をインドの首相が讃えるニュースがありました。

断食といえば、仏教の開祖である紗尊の悟った時の話も有名です。

紗尊は悟りを得る前に、様々な高僧たちから学び、とても厳しい苦行の実践も行っていました。

釈迦苦行像で表されているように、とても痩せていました。

半月に1度だけ食事をとり、背骨は編んだ縄のようで、肋骨は腐った古屋の垂れ木のように突き出すなか、瞳だけは深い井戸に宿った星の様に輝いたといいます。

そんな過酷な苦行を行っても真理に到達できなかった紗尊は、師と別れた後に、スジャータという村娘から差し出されたキール(乳粥)を食べ、その後菩提樹の下で瞑想を楽しむ中で悟りを得ました。

体を苦しめるほどの極端な節食では、ヨガ(瞑想)を成功させることはできませんでした。

栄養のあるものを食べ、身体を健康に保ってこそ得られるものがあるのですね。

逆に食べ過ぎも良くありません。

ハタヨガが経典では、栄養のある食べ物で胃の1/2を満たし、1/2は水で満たし、1/2は空気で満たすと書かれています。

つまり、腹5分目なのですね。

しかし、その分、糖質や油質などの栄養価の高いものが推奨されます。

健康的な食事のバランスは人によって違いますが、自分の身体を健康に保てるバランスの良い食事を心がけ、極端に食べないことや、1つのものを食べ続けるような偏った食事は避けるようにしたいですね。

自分にとっての快適な睡眠のバランスを見つける

日本人は平均睡眠時間が短すぎると言われています。

健康的な朝活を行っている人も増えているので、早起きの習慣が身についている人も多いと思いますが、その分夜は早く就寝しないと睡眠時間が足りなくなってしまいますね。

特にヨガを実践している人は、早起きを習慣付けしている人が多いと思います。

しかし、家族がいると、自分の思った時間に就寝することができない日も多いことでしょう。

睡眠不足が慢性的なものになってしまうと、自分では大丈夫だと思い込んでしまい、心身の不調にも気がつけなくなってしまいます。

睡眠不足が続くと、判断能力や認知能力が下がります。

また、抑うつなどの精神的な症状を招きやすくなることも知られています。

身体的にも疲れが取れなくなり、免疫力が低下し、体調を崩しやすくなります。

忙しい時に、より仕事の能力を上げるために勉強の時間も詰め込んだり、身体をリセットするために運動習慣も増やしたりと、さらに忙しくしてしまう人もいます。

しかし、睡眠時間を削ってまで勉強をしても、思考が低迷してかえって能力が下がってしまいます。

しっかりとメリハリをつけ、休む時には休むことに集中したいですね。

頑張りすぎ、過労も逆効果になる

練習も節度をもって行うべきで、やりすぎは良くないと説きます。

筆者がヨガの養成を受講していた時、とてもスパルタな練習が好きな仲間が何人かいました。

クラスは朝5時半から始まり、プラーナーヤーマ(調気法)とアーサナ(ポーズ)の授業が終わると10時を過ぎていましたが、その後にも仲のいい仲間数人で壁を使って倒立腕立て伏せなどを練習していました。

そんな仲間の中には、身体を故障して何週間も練習を休む生徒が出てきました。

努力を行えば、それだけ早く成果を得られると考えがちですが、実は逆に遠回りになってしまうことがあるのですね。

インドに、暴馬の調教についての逸話があります。

ある国に美しい4頭の馬がいました。

国王は、なんとか馬を調教しようとし、国内から優秀な調教師を何名も呼んできましたが、4頭の馬は酷い暴れ馬で、調教しようとした人を怪我させたり殺したりしてしまいました。

国王が諦めようとした時、1人の若者がやってきて、自分に1年馬を預けてくれれば必ず調教できるといいました。

国王は、若者が怪我をしたり危険な目に遭ったりすると良くないと思って渋りましたが、最終的に若者に預けることにしました。

1年後、若者が見事にまたがって国王の元に帰ってきました。

どんな優秀な調教師でも制御できなかった暴れ馬をどのように手なづけたのか聞くと、馬と一緒に毎日食事をし、一緒に寝ていたのだと言います。

馬たちは、若者のことを自分と同じ馬であり、仲間だと認識したのです。

同じように、私たちの体や心も、上から押さえつけるようにすると反発します。

時間をかけて寄り添い、友達にならなくてはいけません。

疲れた体に無理やり鞭を打ち、頭が回らなくなってきたのに無理やりカフェインを摂取して働かせては、反発して壊れてしまいます。

体や心の声を聞きながらも、しっかりと寄り添っていることで、初めて成果を上げることができるのがヨガです。

節度をもった歩みがヨガ的な生き方

どうしても真面目な人ほど、やり過ぎてしまう傾向があると思います。

何事も過ぎたるは及ばざるが如しですね。

特に、熱中している時ほど、私たちは盲目になって極端な道を選んでしまいがちです。

ダイエットであっても、極端な食事制限を行った後には、必ずリバンドが来るように、どれだけ苦しい思いをしても逆効果になってしまいます。

色々詰め込んでしまう人は、手放す練習もしてみましょう。

勉強が楽しい時には、あれもこれもと詰め込みたくなってしまう時もあります。

しかし、何かを学んだら、必ず消化をする時間が必要です。
また、努力をしたら、必ず回復する時間も必要です。

休み過ぎても身体が重たくなり、頑張り過ぎても体調を崩してしまいます。

どれくらいが快適なのかは、人によって違います。

睡眠は何時間、運動は何時間、食事は何カロリーと、万人に当てはまる正解はありません。だからこそ、ヨガでは自分自身との対話が大切です。

良いことを長く続けるためにも、自分にとってのバランスの良さを見つけたいですね。

ヨガジェネレーション講座情報

ヨガ哲学に興味のある方におすすめ