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ヨガを練習する時、最初と最後にマントラを唱える人も多いと思います。
ヨガには様々な種類のマントラがありますが、平和を祈るものが数多くあり、 “シャンティ・マントラ” と呼ばれています。最もメジャーなものは、「オーム・シャンティ・シャンティ・シャンティ」とシャンテティ(平和)を3回唱えるマントラです。
今回は、そんな“シャンティ・マントラ”の中でも、特に有名な「サハナーヴァヴァトゥ」というマントラを紹介します。
インドで学びの前に唱えられる「サハナーヴァヴァトゥ」マントラ
マントラは、ヨガ教室でも唱えられることが多い“真言”です。しかし、マントラは宗教的なイメージが強いと感じる人も多いと思います。
インドでは、マントラは天から与えられた言葉だと信じられています。そう聞くと、ますます怪しいものに聞こえてしまいますね。しかし、必ずしも神様への祈りだけではありません。
マントラは、音の波動によってエネルギーを整えるものです。ヨガでは、全てのエネルギーは波動だと信じられています。純粋なエネルギーを持った音の波動によってその場のエネルギーは整いますが、うるさい音の波動が私たちの心身に悪い影響を与えることもあります。
だからこそヨガを練習する前に、純粋で穏やかな波動を持ったマントラを唱えることで、ヨガを練習する場所と私たち自身の状態を整えます。今回は、特に学びの現場で必要なマントラを紹介します。
「サハナーヴァヴァトゥ」マントラとは
「サハナーヴァヴァトゥ」マントラは、インドで唱えられるマントラの中で最も有名なものの一つです。ヨガの学校ではもちろん、子供が通う学校でも授業の前に唱えられることがあります。
このマントラは特定の宗教や神様を信仰するものではなく、純粋な学びのための祈りです。
それでは、マントラと意味を見ていきましょう。
om sahana-vavatu
shahanau bhunaktu
sahaviryan-karavavahai
tejasvina-vadhi-tamastu
ma vidvisavahai
Om santih santih santih
読み方は以下の通りです。
オーム サハナーヴァヴァトゥ
サハ ナウ ブナクトゥ
サハ ビーリャム カラバーバハイ
テージャスビ ナービディータマストゥ
マー ビドビシャービハイ
オーム シャーンティ シャーンティ シャーンティヒー
日本語に訳すと、このような意味になります。
オーム、われわれ教えるものと習う者をお守りください
そしてわれわれ双方が神のご加護を喜んでうけられますように
神のお導きで、聖典の真の意味を理解できますように
われわれの修行がキラキラと輝きますように
われわれの間に、いさかいが起こりませんように
オーム、平和であれ、平和であれ、平和であれ
先生と生徒の平和を祈るマントラ
「サハナーヴァヴァトゥ」マントラでは、学びの機会を得られることへの感謝を行います。
私たちは学校で授業を受けたり、ヨガスタジオに来ればいつでもクラスを受けることができると当然のように思っています。しかし実際には、多くの幸運があって初めて叶うものです。
マントラを唱える時には、特に3つの平和に感謝します。
1. 自分自身の平和に感謝
まずは、生徒である自分自身の平和と健康に感謝します。
自分自身が健康で平和な状態でいないといけません。
学びは誰にでも開かれたものですが、立ち上がれないほどの高熱があれば授業を受けることができません。また、今日食べるものがないほど貧困な状態では、まずは自分と家族が食べるために何かをしなくてはいけないと思うでしょう。
学ぶことができるのは、自分自身が健康であり平和な状態であるからです。その環境が与えられたことに、感謝しましょう。
2. 先生の平和に感謝
同様に、教える立場である先生の平和にも感謝します。
インドでは教えてくれる先生を最も尊敬し、本当の父親と同様に考えます。
この世に生命を与えてくれるのは血の繋がった両親ですが、この世界を生きていくための知恵を与えてくれるのが先生です。知性こそが幸福な人生を作り上げるための鍵であり、目的地への地図であり、暗闇の道を照らしてくれる光です。
道を与えてくれる先生が健康で平和な状態でいることを、クラスの前に祈ります。
3. 世界の平和を祈る
また、先生と自分がいる世界の平和も同時に祈ります。
戦争や災害の最中には、教えを受け取ることができません。充分に食べるものがあり、戦争もなく平和であるからこそ、私たちは集中してクラスを受けることができます。恵まれた環境で学ぶことで将来は社会に貢献し、平和で豊かな未来ある社会を築いていくことができます。自分がいる社会に感謝することは、先人たちが築いてくれた平和への感謝にもなります。
学ぶことは神聖な時間
インドでは、ヨガに限らず学びの時間はとても神聖なものだと考えます。なぜなら、知識こそがこの世界で最も尊いことだと考えるからです。そのため、子供が通う学校の授業の前後にもマントラを唱えることが多いです。
例えば貧困で苦しんでいる人に、寄付でお金を渡すことは確かに素晴らしいことです。しかし、それだけでは根本的な解決には繋がりません。せっかくお金や食べ物をもらったとしても、そのお金を使い切ってしまった時、また誰かに頼らなくてはいけません。常に誰かにお金や食べ物をねだる人生は幸福ではありませんね。
知識とは、自分自身で人生を豊かなものにするための術を得ることです。自分にとっての幸福が何かを知り、そこに到達する方法を知ることができれば、他には何も必要ありません。
ヨガは自分で自分を幸福にする術
ヨガのクラスでも、最初の頃は体を動かしてスッキリして終わりかもしれませんが、続けていくとそれだけではないと気がついてきますね。
月に何度か整体に通わないといけないくらい腰痛に苦しんでいた人でも、ヨガで自分の身体の使い方を覚えて筋肉がついてきたら、自然と痛みが緩和してきます。最初は、整体やマッサージに通って痛みを軽減してもらう方が楽かもしれませんが、高い料金をずっと支払ってマッサージをしてもらうより、自分で改善できたほうが長い目で見た時には有益です。
ヨガで改善できることは、身体だけではありません。
自分自身の身体に向き合うことができるようになると、徐々に自分の心とも向き合えるようになります。
社会生活の中で、他人との人間関係を学ぶ機会はありますが、自分自身との関係を築く方法はなかなか教えてもらえません。
自分の感情や思考との付き合い方が分かれば、物質的な欲で心を乱す必要がなくなってきます。
学びの時間に感謝してヨガを行う
ヨガのクラスの前にマントラを唱えることは、日常生活とクラスの時間を切り離すためにとても有意義なことです。仕事や家庭での忙しい心のままクラスに来てしまって、心あらずの状態で練習していては学びを受け取ることができません。
外の世界とクラスの時間をしっかり切り分けるために、空気を一瞬で変えてくれるのがマントラです。最初は「オーム・シャンティ」(平和でありますように)と唱えるだけでも充分ですが、少しづつ自分に必要なマントラを取り入れることもおすすめです。
特に、「サハナーヴァヴァトゥ」は取り入れやすいマントラだと思いますので、練習の前後に唱えて、自分の内側の感覚を味わっていただきたいです。