背中はもっと気持ちよく伸びる!ダウンドッグの指導のコツ

太陽礼拝の一部であるダウンドッグはあらゆるシークエンスに出てきますが、苦手な人が実は多いのです。私も初心者の頃「どこも伸びなくて苦しいだけ」と感じていました!

また、昔は指導も苦手だった私ですが近頃は「生徒さんのダウンドッグを改善するアシストは簡単にできる!」と思っています。本日はそのコツ、生徒さんがやっていることの観察についてです。

観察するのは「ポーズの形」よりその前の動きとカラダの使い方

白いヨガウェアのダウンドッグする女性

キレイに座骨あたりを頂点に三角形を描くダウンドッグって憧れですね。ではうまくダウンドッグができていない人はどんなことが起こっているのでしょうか?

  • 形が▲(三角)でなく全体的に台形!?になっている?
  • 『手首が痛い!』と言ってる
  • 顔が真っ赤で苦しそう!

でも生徒さんのポーズや様子の観察だけでは、アシストや指導に十分な観察とは言えません。

「ポーズに入る時またはその前」に何をしているか?を見よう!

「台形のようになってしまう」人はそのポーズに入る前に、どんなことをしているでしょうか。苦手な人はほぼ間違いなくポーズに入る直前に肩や背中、お腹、そして何より首のあたり、脊椎を固めていることでしょう。そしてそれは無意識で行われていることが多いと思います。動き始めるときに肩や首に力が入っていると、うまく手も足も伸びないのです。例えば実際に以下の実験をしてみてください。

やってみよう!

  1. 首の後ろ側に力を入れて、顎を前に突き出してからダウンドッグに入る。
  2. 一息ついて、顎の力を抜く。首の後ろをラクにしたまま、頭からリードして前にいく。それからダウンドッグに入る。

さて、どちらが楽だったでしょうか?呼吸はどうだったでしょうか?手の伸びはどうだったでしょうか。背中はどうでしょう?

2の方がやりやすく、カラダが伸びると思います。首は脊椎の一部でとても大切なところです。顎も実は頭につながっていて噛みしめると首の後ろに力が入るのがわかると思います。

ポーズに入る前に歯を食いしばったり、肩に力を入れたり、首を固めたりいろんな部分に余計な力が入ると、脊椎を固めることになり、カラダ全体のパフォーマンスが落ちてしまいます。柔軟性もパワーも落ちた状態でヨガをすることに。頭から脊椎まで、カラダの軸を自然に、長くして使える状況を作ることでダウンドッグは今よりキレイに取れるのです。

手や腕で余計な準備をしていませんか?

緑のヨガマットに置いた手

さあ、軸の動きがつかめてきたら次は手・腕の使い方です。皆さん、腕はどこから始まっているかご存知ですか?(わからない人は前回のコラムを読んでくださいね)

また、動き始めるときに肩に力を入れて腕を使っていませんか?指を無理に開いたり手に力が入っていませんか。以下を試してみましょう。

やってみよう!

  1. 手の平を広げて、指に力を入れてからダウンドッグにはいる。
  2. 指先から優しく手を歩かせ鎖骨まで長く腕をつかってダウンドッグに入る。

さあ、この2つはどうでしょうか?ほとんどの人が2の方がやりやすいと思います。腕は広背筋、僧帽筋その他たくさんの背中の動きと関連する筋肉でなりたっており、「腕は背中」と言ってもいいくらいなのです。だから手や腕に余計な力が入っていると、どうしても背中や脚は使いにくくなります。

腕は鎖骨から指先まで腕全体を使う気持ちで、指先から繊細に「床の感触はどんなだろう?」とそっと指を歩かせるように前にもっていき、手がラクにつくところに置き、そこからお尻をあげてみましょう。自然に手が床に沿うようにつきませんか?手や足にあらかじめ力を入れなくても、これで十分な重力が手にかかるのです。

全身の「動きのプラン」が明確になっているかを見よう!

ポーズに入る前にカラダの一部に力を入れていると、それが全身に影響しその後のアーサナがやりにくくなります。どんなヨガでも、全身とカラダの軸の動きを優先してシンプルに動きの方向性を意識しましょう。

ダウンドッグでは、「股関節から前屈していること」「頭から脊椎が骨盤部分まで一緒に長く動いていること」「手足が床についていること」。この3つだけです。

ダウンドッグを指導するには、生徒さんが「意識するポイントを理解しているか?」そして「不要な力が入っていないか、余計な動きが加わっていないか?」を確認することです。実はそこに指導するべきポイントが隠されているのですから。

ダウンドッグの背中の直線はいらない?重力に任せよう!

レインボーカラーの背骨

背中がピンと伸びたキレイなダウンドッグには憧れますが、実はカラダは曲線でできており、まっすぐな形の関節や骨などカラダにはないのです。

ですので最初から背中をぴんとはったり、腕や脚に力を入れて引っ張っておくことはアサナの邪魔にこそなれ、きれいなポーズには役に立ちません。背中が長くまっすぐに伸びて見えるのは、もともと曲線を描いている脊椎が頭から尾骨までいらない力が抜けていて、重力に任せているからこそ自然に描かれる”アート”の結果なのです。

紐の端に重りを吊るすと、自然と下方向にまっすぐに紐は線を描きます。それと同じように、自然な重力で背中はまっすぐになるのです。でも生徒さんはカラダの構造や動きについては知らない人が多いので、ぜひ教えてあげてくださいね。

固定概念を崩す言葉で指導しよう!犬より猫になろう?!

猫の顔

カラダの癖は人それぞれですが、多くの人は普段から緊張していたり、「背中をまっすぐにしよう」と無意識に力を入れていたりします。それは結果して、背中や腕の緊張の原因となっています。


また「猫背」を気にしている人も多いのですが、思い切ってダウン・ドッグで「猫」になっちゃいましょう!つまりいわゆるキャット・ストレッチみたいに背中をうーんと丸めてから伸ばすくらいに自由に考えてやってみる方が、上手くいくかも知れません。



最初に頭、首、背中にかけて気持ちよく猫っぽく伸ばし、膝は猫が前にジャンプするときみたいに曲げてもいいです。背中をたっぷり伸ばしてから膝を少しづつ伸ばし、踵を床に近づけていきましょう。


「形」は結果。あとから直そうとアジャストしても覆水盆に戻らず!

動きというのは、その生徒さんが何かを「考えた」結果起こるものです。多くのインストラクターさんは結果の「形」を直そうとしますが、だから「うまく伝わらない」「生徒さんが思うように動いてくれない」ということになるのです。

生徒さんが「動きをどのように理解しているか」にアプローチする指導者とは、探偵みたいな仕事なのです!形だけ押したり引いてもうまくはいきません。

アサナのフローは動きの連続です。タダーサナ(立ちポーズ)から生徒さんが何をしていて、どんな風に動いているか、観察し続けているといろんなことがわかります。


「過程」がわかれば、結果はかわる!

ヨガはカラダの使い方の教育です。「どこを意識して動くのか」「どこの関節が動くことでその動きが生まれているのか」「生徒さんがやっていることは何が違うのか」。といった視点で、アサナでは何をやろうとしているのか、自分なりに分析してみてください。