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行政法人も研究する運動と長寿の関係
今、シニアフィットネスという新しいジャンルが注目を集めています。これはシニア(高齢者)がいかに健康を維持して長生きをできるかを考え、実践する運動トレーニングの種類の1つです。年齢とともに体が衰え、徐々に運動が苦手となっていくのは自然なことですが、転ばずに歩くための筋力や病気に対する免疫力、さらには認知症防止や脳の活性化にまで運動が必須です。
各研究機関がこのことを裏付ける研究発表を重ねる中、ついには行政法人からもシニアのための特別な運動プログラム「包括的高齢者運動トレーニング」が発表されるほど、社会にとって重要なトピックスになりました。
包括的高齢者運動トレーニング(CGT)とは
独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所[1]における研究支援施設・高齢者健康増進事業支援室が提唱した運動プログラム。人口の約4分の1がシニアとなる超高齢社会が進むにつれて、シニアがなるべく健康で自立し、かつ幸福な生活を続けることの重要性と具体的な方法を掲げ、研究副部長の大渕修一先生が提唱されたものです。今、シニアフィットネスはこのトレーニング理論をベースにさらに研究が進んでいます。
シニアに必要な運動は持続力とバランス力
包括的高齢者運動トレーニングは主に、体を支え続けるために必要な筋力を養うプログラムで構成されています。厚生労働省が定義する要介護者認定の基準16項目の内、実に8項目が筋力の強化によって防止・改善できるものとなっています。(もちろん筋力以外にも改善が必要な項目があるため、改善可能な項目の見解には解釈の差があります)
プログラム内容は筋力トレーニングという言葉からイメージする激しい無酸素運動ではなく、ウォーキングや水中の軽いエクササイズ、またトレーナーの指導の下行うマシンによるウェイトトレーニングなど、自然な呼吸を保ったまま楽しんでできる範囲で組まれています。それらの動作が難しい方に対しては椅子に座ったままのストレッチも用意されており、様々な方法で体を支える力を養うことができます。
フィットネス業界も積極的にメニューを強化
本格的なシニアフィットネスの拡大には専門知識を持ったトレーナーが必要ですが、スポーツジムを運営する各社でもシニアに向けたメニューが続々と増えています。シニアに特化したトレーニングマシンの導入、脳への効果に特化した頭を使うプログラムの導入、またデイサービスの一環でフィットネス指導も行うなど、実に様々なサービスでシニアの健康維持を目指しています。
さらにスポーツジムに通うことでシニア同士のコミュニティが生まれ、新たな生きがいにも繋がっています。施設内に高齢者に向けたコミュニケーションスペースを設けるジムも増えたことにより、シニアにとってのスポーツジムの重要性は今後ますます高まっていくことでしょう。
ヨガがシニアにできること
近年のヨガブームを受けてスポーツジムでもヨガのプログラムが多く組まれていますが、なんとそこでもシニアの参加者が徐々に増えつつあるようです。ホットヨガスタジオでもシニア専用クラスが設けられるほど、ヨガのシニアに対する効果が業界全体で注目され始めています。
ヨガだからこその高い効果
ヨガの利点は、上記の筋力アップを効率よく安全に行えるだけではなく、シニアの心にも良い影響を与えることです。年を重ねるにつれて不安や心配事が増えていくのは事実です。できない事が多くなるため、ストレスも増えていくと言います。ですが、ヨガでただ自分の呼吸と動作に意識を向けることで、今できる範囲の動きを繰り返すことに単純な心地よさを感じることができます。
心のしがらみからの開放感が日常生活を前向きにさせているからこそ、シニアのヨガへのリピーターが増えているのではないでしょうか。社会全体でシニアの生活を向上させるための取り組みをしている今こそ、その方ぴったりの運動方法を伝えていきたいですね。