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私はサラスワティ、聖なる詩が湧き上がる優雅な水の流れ。インスピレーションの川を作り、芸術家を喜びに満ちた渦や泉に導きます。至福の波を心の内側にかき立てて、愛の物語を奏でます。
ヨガとは肉体の実践を超えたもの
ヨガの道を歩み始めたばかりの頃、ヨガとは体を強化して柔軟になるのが目的だと信じて、そのゴールに向かってひたすら頑張っていました。しかし時がたち、知識ある先生から学んだり、本を読んだり、自分自身の内側で深い変化を経験していくうちに、ヨガは単なる肉体を使った実践以上のものだと気付き始めました。ヨガは自己を知るための方法であり、知恵を養う道なのです。
知恵を象徴する神「サラスワティ」
知恵を象徴するデヤティはサラスワティです。サラスワティとは「自分自身の本質」という意味があります。
サラスワティはブラフマーの舌の先から生まれました。創造の力であるブラフマーが宇宙を創り、ヴィシュヌが維持し、シヴァが破壊します。
サラスワティはクリエイティブな芸術すべてを体現すると同時に、高次の知恵を最も純粋な形で表現する言葉の力として現れました。サラスワティがまたがる白鳥は、幻想から真実を切り離すマインドの力を象徴しているとヨガでは考えられています。その知恵と優美さにブラフマーはサラスワティのとりこになり、熱烈につきまといましたが、サラスワティは全く相手にしませんでした。知恵と創造性は色情や高慢の及ばない高次の世界に存在しているのです。
バクティヨガにおいてサラスワティは、マントラに力を吹き込み、献身を通して私たちに洞察力を与え、クリエイティブな道の後押しをしてくれます。
サラスワティとつながる4つの方法
高次なる知的存在が導いてくれていると感じるとき、明確な言葉がわきあがるとき、詩や踊り、音楽や芸術作品など何か美しいものを作り上げるとき、私たちはサラスワティの優美なる力のもとに生きています。サラスワティは内なる師であり、私たちの成長の手助けをしてくれるのです。
そんなサラスワティの内なる知恵と創造性とつながるための方法をいくつか紹介します。
1.サラスワティはあらゆる学びを司っています
何か学びたいこと、もしくは自分の中で成長したい部分を思い浮かべ、リストにしてみましょう。ずっとやりたいと思っているコースや、読みたい本、働いてみたい新しい分野など。次にその夢を叶えるのに必要な行動のステップを考えます。本屋に行く、といった簡単なことかもしれませんし、コースについてもっと深く調べる、ヨガのワークショップやリトリートに参加する、というのも一つのステップでしょう。人生における学びを大切にします。現実的なゴールを設定し、実現させます。知識を広げるのを恐怖心や他人の意見にさまたげられないように!
2.クリエイティブな事をはじめましょう
楽器を習ったり、絵画のクラスに参加したり、ダンスに出かけたり、詩や物語を書いたり、マントラを歌い唱えたり。何か創作してみましょう。自分が作ったものに囲まれて生活するのは素敵ですし、内面から溢れ出る美しさとのつながりが深まります。
3.マントラを唱えましょう
自らのヨガの練習や指導にインスピレーションを引き入れたい時、サラスワティのマントラを唱えるといいでしょう。「Om aim aim aim saraswatiaye namaha」とアーサナの前に27回唱えます。
4.毎日お花をささげましょう
サラスワティの絵を自分の祭壇に飾り、毎日お花をささげましょう。知恵、明晰さ、創造性をもたらしてくれるよう心から願います。オープンで誠実な心から願いごとをすれば必ずかなうとヨガでは信じられています。
有限の意識を無限の意識に変容してくれるもの、それを知恵と呼ぶ。
ー シュリ・チムノイ
文:レイチェル・ジンマン
世界でも有数のパワースポットと呼ばれるオーストラリア・バイロンベイに拠点をおき、日本をはじめインド、バリ、ヨーロッパと世界中で活躍するヨギーニ。ヨガ歴20年以上指導歴18年のベテラン講師で、毎年バイロンベイにて日本人向けヨガインストラクター養成コースを開講、今年で9回目を迎える。彼女の実践するバクティヨガは「愛」のヨガ。ヤントラ(形)やマントラ(音)、ムドラ(印相)を用いてヨガに深みを与えることで、アーサナに偏りがちなヨガからホリスティックなヨガへと導いていく。近年ではヨガインストラクターとして更に成長していきたい方のための上級者向けリトリートをバリにて開催するなど、継続的な指導に力を注いでいる。