窓際でインストラクターが生徒のダウンドッグをアジャストしている

インストラクター必読!”アジャストメント”でココだけは気をつけたい4か条!

講師としての心構え

アジャストメントとは?

そもそも、アジャストメントとは、生徒のポーズを「修正する」という考え方ではない、ということを肝に銘じましょう。

  • 主体は生徒である
  • 生徒自身がアーサナを深めることを補助する
  • 気づきを促すように身体の使い方を示し、エネルギーの流れを調整する
  • 間違った身体の使い方で負担がかかりやすい場所を傷めないように、方向を変えるようインストラクションする

自分の思い通りに生徒のアライメントを正したり、否定されたように感じさせてしまうアジャストメントは逆効果。生徒の主体性を尊重しながら、本来もつ可能性を引き出すアジャストメントを目指しましょう。

講師としての身だしなみ

アジャストメントに限ったことではありませんが、生徒に触れる場合は特に注意が必要です。身だしなみを清潔にし、キツイ香水などは避けましょう。また、触れる際に邪魔になるような大きなアクセサリーなどはつけない方が懸命です。意外とやってしまいがちなのが、爪。おしゃれのためにネイルアートをしているインストラクターの方もいらっしゃると思いますが、伸びすぎた爪で生徒の肌を傷つけてしまわないよう、安全面での配慮も必要です。

生徒を観察する

ヨガクラスで呼吸法をしている生徒を観察している講師の下半身だけ
生徒を観察して情報収集

まず、触れる前に、生徒が今どんな状態なのかをよく観察し、情報収集することが大切です。関節のポジション、筋肉の使い方、呼吸、表情…見ていくと、たくさんの情報をキャッチすることができます。生徒を観察しないでアジャストを行うことは、医者が患者を診ずに薬を処方するようなもの。まずは今の状態を全体から把握するところから始めましょう。

生徒との信頼関係を築く

いきなり身体を触られることに抵抗がある方もいますので、初対面の生徒さんや、ヨガにあまり慣れていない初心者の生徒さんには、特に配慮が必要です。「少し肩に触れますね」といった声かけがあると、だいぶ違ってくると思います。クラスの前に、ヨガの中で身体に触れることがあるという簡単な説明をしておくことや、怪我をしていて触れてほしくないところや、触れること自体に抵抗があるかどうかの確認ができたらより良いですね。身体に触れるという繊細な行為を行う前に、生徒と十分なコミュニケーションをとり、徐々に信頼関係を築いていくことも大切です。

相手のことを考えて言葉を選ぶ

クラス全般についても言えることかもしれませんが、できるだけ、簡潔な言葉を使うようにしましょう。慣れていない方に対して、難しい解剖学用語をならべたり、あまりにも細かいアライメントの説明をしたりしてしまうと、混乱が生じ、逆にアーサナを深めることを邪魔してしまう可能性があります。その人の理解度にあわせた端的な言葉選びを心がけましょう。

自分自身の土台を安定させる

アジャストをする側の体勢と呼吸が安定していることも重要です。万が一、自分が体勢を崩して生徒さんを倒してしまったりしては大変。立つ位置、足のスタンス、呼吸が乱れていないか、周囲に邪魔なものが落ちていないか、などを確認しましょう。また、相手のことばかりに気をかけすぎて、アジャストする自分自身が無理な姿勢により腰などを痛めたり、疲れてしまわないように気をつけることも必要です。

呼吸に合わせ絶妙なタイミングと力加減で触れる

バシスターサナ(サイドプランク)をしている生徒をアジャストするインストラクター
離れるときもゆっくり力を抜くように

安心感を与えるアジャスト、逆に不安・不快にさせるアジャストの違いは何でしょう。それは力加減・タイミング・呼吸との連動といった”触れ方”にあります。力が強くて急なアジャストは、ポーズを深める邪魔になり、身体をこわばらせて怪我に繋げてしまう可能性も。相手の呼吸を感じながらやさしく触れ、呼吸にあわせてアジャストを深めていきます。離れるときも、すっとゆっくり力を抜くようにしましょう。絶妙な力加減は、経験を積むことによって養われます。

カラダの構造に沿って行う

アジャストには、ある程度の解剖学の知識が必須となります。それは、怪我を防ぐというだけでなく、アーサナを深めるために身体の構造を知っているということが大きな助けになるからです。今、目の前にいる生徒の関節ポジションはどうなっているのか、それをどの方向に導きたいのか、目的と手段を理解できていなくてはなりません。例えば、

  • 本来その関節はどこまで可動域があるのか?
  • どの筋肉を収縮させ、どの筋肉を伸ばしたいのか?

これらを判断できないと、関節の可動域を超えた無理な力のかけ方をしてしまい、また迷いのある腰の引けたアジャスト、または「見よう見まね」のカタチだけのアジャストになってしまいがちです。さらに身体の「個体差・個人差」を無視して行ってしまうと、同じアジャストでも全く効果がないものになってしまう可能性もあります。

このようにみていくと、アジャストメントとは、生徒との信頼関係を築き、十分な情報収集をした上で正しい身体の知識に沿って行うべきものだということがわかります。決して簡単なことではありませんね。しかし、効果的なアジャストメントは生徒のヨガを深め、可能性を開かせ、講師と生徒との信頼関係を強くします。的確なアジャストメントが行えるように、またご自身のヨガのためにも、練習と並行して解剖学の勉強をされると良いでしょう。