業界の問題点と対策!”ヨガのポーズを教える先生”が増え続ける今後

業界の問題点と対策!”ヨガのポーズを教える先生”が増え続ける今後

「ポーズを教える先生」が増え続けている日本

2020年の東京五輪に向けて人々の健康志向は高まり、ヨガ人口も増え続けている昨今。日本のヨガインストラクターの人数は2万人ほどと想定されます。いまや全米ヨガアライアンス(以下、RYT)を始めとするヨガ指導者養成講座は数多く存在します。講座の参加費・質・内容は様々ですが、おおよそ共通していることは「クラス(=ポーズ)の指導が安全にできるようになること」を目指している点ではないでしょうか?

ポーズの基本から学び、指導法や注意点を学び卒業する。それだけでヨガのクラスが開催できてしまう。ネットだけでも資格がとれ「ヨガインストラクターです」と名乗ることができる、それが今の日本のヨガ業界です。

「もっとヨガを学びたい」と言う生徒に何が提案できますか?

アイディアが光っている様子
「私、もっとヨガを学びたいです!」という生徒の声に、何を提案できるか

ヨガを始めるきっかけやヨガクラスの形は様々あってこそ。アシュタンガヨガのように伝統を重視したヨガもあれば、顔ヨガやエアリアルヨガ、サップ(SUP)ヨガなど本来のヨガとは別のアプローチから入るヨガのスタイルが増えることも良いことです。どんな形であれ、「ヨガ」というものに触れヨガを好きになる人が増えることはヨガ業界としては歓迎すべきことだからです。

ただ、大切なことは、生徒が「私、もっとヨガを学びたいです!」と言った時に、何を提案できるか、ではないでしょうか?

  • 他のヨガスタイルを紹介する
  • クラスでは練習しない難しいポーズを紹介する
  • ヨガのおすすめの本を紹介する

様々な意見があるかと思いますが、指導者ならば、その1つに「ヨガ哲学を伝える」という提案があるべきではないでしょうか? なぜならヨガ哲学は「なぜ、私達にとってヨガが必要なのか」を教えてくれるものだからです。

下記はヨガ哲学を日本で伝えているインド人であるクリシュナ・グルジ氏の言葉です。

ヨガの目的が”健康になること”だと思っている人がいる。もしヨガの目的が本当に”健康になること”であれば、健康になって、夜更かしをして好き放題遊び回ってもいい、ということになってしまう。でもそれは違う。だからヨガの本来の目的は”健康になること”ではない。みんな本来のヨガの目的を知らずにヨガをしている。つまり、ヨガ哲学はハタヨガを学ぶ前に学ぶべきものだ

この言葉の意味するところは、ヨガ哲学を理解していなければ、いくらヨガの練習をしても活かしきれないということでもあります。

それほどヨガにとって重要な哲学を、日本のヨガインストラクターのどれだけの人が理解しているでしょうか? 「ヨガを学びたい」とせっかくヨガに興味を持ってくれた生徒に、ヨガの本来の意味や価値を伝えることができるインストラクターはどれだけいるでしょうか?

現在、多くのヨガインストラクターにとってヨガ哲学はあまり馴染みのないものであり、「私には関係ない」「難しそう」と思っている人も多いのではないでしょうか?

ヨガ哲学を理解しているヨガインストラクターが少ない2つの理由

ヨガ哲学を理解しているヨガインストラクターが少ない理由は、指導者養成講座の中で下記について考える時間が少ないことが理由に挙げられます。

  • なぜヨガをする必要があるのか
  • ヨガとは何なのか
  • ヨガは何を目指しており何のためにあるのか

そして、「上記を理解するためにも、哲学を学びなさい」と教える講座が限りなく少ないのが現状です。

ではなぜ、講座で哲学の重要性を伝えないのか? その理由は2つあります。

1:指導者養成講座を担当する先生自身が哲学を教えられない

ヨガのポーズは、体という目に見える物体を動かしコントロールすることなので、外からのサポートもラクであり、比較的簡単に身に着け教えることができます。一方、哲学とは知識・知恵であり、目に見えないものであるため習得にも指導にも時間を要します。

現在著名な指導者の方にヨガ哲学の講座を依頼した際に、「ヨガ哲学や瞑想はまだ自分が教えるには早い」と断られた経験があります。それほどまでにヨガ哲学とは深いものだからこそ、日本国内に限ると指導できる先生が本当に少ないことも問題です。

2:時間が足りないため指導者養成講座では学べない

講座内でもヨガ哲学を学ぶ時間はあります。ただし、深すぎるが故に時間が足りず、表面的な単語の意味を伝える程度であとは切り捨てられている可能性もあります。八支則を学ぶ、ヨガスートラを読む、その程度の時間は必須で用意されていると思います。ただ、多くの講座ではそこ止まりではないでしょうか?

今までにヨガスートラ、バガヴァッド・ギーターを真剣に読み、その意味を理解・実践しようとした経験のあるヨガインストラクターはどのくらいいるでしょうか? ヨガを指導する立場になりながらも、そういった機会に触れることすらほとんどないのが現在のヨガ業界です。

ヨガ哲学を伝えられる先生が足りないのは業界の責任?

本棚に本がたくさんある
本当に価値あるものを選んでいく力がヨガインストラクターに求められている

ヨガ哲学を指導できる講師が少ないこと、指導者養成講座内では教えてもらえないこと、これは日本のヨガ業界の問題点だと思います。ただ、そんな業界を作ってきた責任はヨガインストラクターの方々にもあるのではないでしょうか?

あなたが指導者養成講座の受講を検討する時、同じ資格が取得できるとするならば、下記2つのどちらを選びますか?

  • (内容が濃いけれど)参加費が高い講座
  • (内容が薄いけれど)参加費が安い講座

多くの人が後者ではないでしょうか? 理由は、内容は受けてみなければわからず、「同じ資格がとれるのであれば、安く、早く」と考えるのが一般的な思考だから。そのため、業界内では短い日数で安く受講できる指導者養成講座が以前に比べて増えています。

※必ずしも価格と内容は比例するものではありませんが、やはり一流の講師・講座内容にはそれなりに価格も伴うものだと思います。

本当に価値あるものを選んでいく力が今、ヨガインストラクターの方々に求められています。

ただ、「ヨガは私が思っていたよりも深いものなのかもしれない」と気づき、RYTを再受講する方や時間をかけてヨガを学び直すヨガインストラクターも増えてきており、そういった方々にこそ、ぜひヨガインストラクターとして光り輝いていただけたらと願ってやみません。

もしあなたがヨガインストラクターとしてヨガを伝えていきたいと真剣に考えているなら、覚えておいてください。

短期間で手に入れた知識は誰でも手に入れられるものです。でも時間をかけて身につけた知識や本質、そして日々の練習の積み重ねは、あなたを「ヨガのポーズを教える先生」から卒業させ、本当の意味での「ヨガの先生」へと導く強い味方になってくれます。