記事の項目
こんにちは、ヨガジェネ編集長のkayaです。
ヨガジェネレーションでは毎月、ざっくりとですが、テーマを決めてコンテンツ作成に取り組んでいます。テーマに沿ったアンケートや専門家へのインタビューをおこなう他、編集部でもテーマに関連した情報について調べています。
4月のテーマは「学び」。
そこで今回は「ヨガインストラクターにとって資格よりも必要なこと」について、様々な記事や資料を読んだ結果、私の頭の中でぐるぐるしていることをまとめました。
本記事はヨガの先生として不安や自信の無さ、といった悩みに答えます
- ヨガ指導者養成講座を卒業したけれど、この後どんな勉強をしていったら良いのかわからない
- ヨガの先生になったけれど、集客に苦戦している
- 講座をたくさん受けて学んでいるが、成長しているのか不安
- 良いヨガの先生とはどんな先生なのかがわからない
こういった悩みに答えます。
そもそもなぜ上記のような悩みが生まれるのか
今や「ヨガの先生」というお仕事は誰もが簡単に就くことのできる職業です。知人がこう言ってました。
確かにそんな風に見られても仕方がないほど、お金を出して一定時間の講座を受講すれば、誰でもが簡単に資格を取得できます。
かつては、師から弟子に伝えられ、師が認めた者だけがヨガを伝え始める権利をもらえるとされていたヨガが、今や肩書ファッションになってしまいました。(現在でも、インドの歴史あるヨガの学びの場では、「ヨガの先生」を名乗ることができるのは本当に仙人のような方のみで、「私も自分で『ヨガの先生です』と名乗ることはしない」とインド人ヨガ講師のクリシュナ・グルジ先生が語ってくれたことがあります)
簡単に資格を取得できること、このことについて意義を唱えるつもりはありません。
学べる場が増えたから誰もがヨガを学ぶことができるようになり、ヨガの先生が増えたからヨガの認知が広まったなど、確実にメリットも存在するから。
ただ、「ヨガの先生の資格をとった」=「ヨガの先生になれる」ではありません。まして、「資格をたくさんとった」=「良いヨガの先生になれる」なんてことは絶対にありません。
ヨガの講座は、最低限のスタートライン
10年前ならまだしも、現在は、主要なヨガ資格であるRYT200(全米ヨガアライアンス)を保持している先生も増えてきました。指導者養成講座を卒業するということは、「指導者として最低限の知識を身につけました」の証明にはなりますが、それ以上でもそれ以下でもありません。
資格保持者が増えていく日本で、もはやヨガの資格を持っているというのは、ヨガインストラクターとして当たり前の時代です。(肩書ファッションの時代です笑)
そこから一歩抜きん出ることができない方々が、上記のようなヨガインストラクターとしての不安や悩みに直面しているのではないでしょうか?
「資格よりも必要なのはセルフプラクティス」という提案
結論から言います。
現在、不安や悩みを抱えるヨガインストラクターに圧倒的に足りないのは、多くの場合が「セルフプラクティス」です。
と、書くと、
と思った方もいると思うのですが…
もしあなたが練習の重要性をわかっていたとしても、きっとあなたのヨガにかける時間は足りていないと思います。
ヨガジェネでとったアンケートで下記のような結果が出たことがあります。
この時の回答者の7割がヨガインストラクターさんだったので、多い方から7割として考えても、週に2・3回しか練習をしていない方もいらっしゃいます。
(参照:あなたは平均?年齢・ヨガ歴・練習量などユーザーさん属性が明らかに!)
どのくらい足りないのか、もしくは「ほら、私は十分にやってる!」と胸を張って言い返せるのか? 一緒に確認してみませんか?
プロになるための「1万時間の法則」
「1万時間の法則」という言葉をご存知ですか? これは、どの業界でもプロになるためには1万時間が必要だという意味を指した言葉です。1万時間とは、3年で割ると土日祝など休み無しで、1日あたり約9時間です。
よく仕事でも「3年は続けなさい」と言われますが、就業時間8時間にプラスして、1時間ほど残業をすれば9時間になるので、3年は続けた方が良い理由、1万時間が必要となる理由には納得いただけるのではないでしょうか?
では、ヨガの先生で1万時間を経験している人はどのくらいいるのでしょうか?
前述した計算だと1日9時間を費やして3年かかります。つまり、9時間の練習をしている人は3年経ってようやく「プロ」と呼ばれる位置に立てるのです。
逆に言うと、1日1時間の練習しかしていなければ、1万日、これを年数に直すと27.3年が必要となります。
同じ1万時間でも差が生まれる理由
ただ、同じ1万時間をかけても、本当にプロと呼ばれる先生になる方もいれば、新人からあまり成長が見られない方もいます。
その理由は明白で、その時間にかける質が異なるから。
どのくらい真剣に向き合い集中して取り組んだか、その時間で何をしたかの密度によって差が生まれます。
講座受講とセルフプラクティスは質が異なる
少し話を変えて考えてみます。
もしあなたが、下記のどちらかを選べるとすると、どちらを選びますか?
- A.ヨガの指導者養成講座を受講(1日8時間)×30日
- B.ヨガクラス(1日1.5時間)+セルフプラクティス(3時間)+読書などの課題(3.5時間)×30日間
2019年現在のヨガ業界を見ていると、多くの方がAを選択しているように思います。30日連続ではないにしても、お金を払って講座を受講し、資格を取得している方は本当に大勢いらっしゃいます。
一方で、Bのような生活をしている方はほとんどいないように思います。
では、質問です。
様々な意見があると思いますが、私ならBの先生にお願いしたいと思います。
講座受講とセルフプラクティス:身になるのはどっち?
ヨガで考えると難しいので、他のことで考えてみます。
例えば料理。
- A:料理学校に30日間通いました
- B:毎日課題を学校でもらい、オリジナルレシピを100個作りながら、翌日質問をしていました
例えばデザイン。
- A:デザイン学校に30日間通いました
- B:毎日課題を学校でもらい、デザイン画を100枚作りながら、翌日質問をしていました
例えばライティング。
- A:ライティング学校に30日間通いました
- B:毎日課題を学校でもらい、記事を100本書きながら、翌日質問をしていました
例えば運転。
- A:自動車学校に30日間通いました
- B:毎日課題を学校でもらい、6時間ほどいろんな道を運転して、翌日質問をしていました
もちろん、Aの場合の学校のカリキュラムや、Bの場合の時間の使いかたにもよりますが、それでも私はBの人にお仕事をお願いすると思います。
理由は、実践以上の学びは無いからです。
プラクティスこそが血となり肉となる
学校や講座などで「学ぶ」状態の多くは受け身であり、それは知識となります。それを実際に使えるようになるには時間がかかります。
一方で、自分で経験と試行錯誤を繰り返したものは、頭ではなく身体が覚えてくれています。運転をイメージするとわかる通り、身体で覚えたことは無意識のうちに動けます。ここまで来て初めて、それが使えるものになったということです。
そして、実戦では教科書や学びの現場では起こりえない様々なことが必ず起こります。それが血となり肉となり、自分のものになります。
それには、実践以外の方法はありません。そしてその実践にあたるのが、ヨガではセルフプラクティスです。毎日の地道なセルフプラクティスという、一見遠回りに見える道こそが、土台を作る大事な道となってくれます。
ヨガの指導者養成講座を受講するのは、免許の教習所に通うようなもの。指導者養成講座を卒業後にすぐにヨガインストラクターを目指すのは、教習所を卒業してすぐにタクシードライバーやレーサーを目指しているようなものです。
こうを考えると、セルフプラクティスがいかに大切かを理解してもらえると思います。(※学校での学びが不要というわけではなく、正しいセルフプラクティスを導いてくれる師は必要だと考えています)
ヨガ指導者にとっての実践はヨガを指導すること?
「ヨガ指導者の実践は、ヨガクラスの指導をすることなのでは?」という声が聞こえてきそうですが、「指導」以前に、「ヨガの経験」がなければ、その指導は、怪我や危険を招く危ないものとなってしまいます。
例えば、運転教習所で、運転のコツをあまりわかっていない教官から運転を学びたいとは思わないですよね?それどころか、危険ですよね? それと同じことがヨガでも言えるのですが、多くの方が、資格や肩書き、指導スキルにとらわれ、本当は一番大切なはずのセルフプラクティスをないがしろにしている
ように感じています。
ライター成り立ての時に同じ悩みを抱えた私の話
私の話で恐縮ですが、フリーランスとして本気でライターを目指し始めた頃、私は新米インストラクターの方々と同じような悩みを抱えていました。
- 自分の記事が面白いのかわからない
- どうすればプロのライターとして契約できるのかわからない
- ライターとしての単価を上げる方法がわからない
ライター募集を見つけて応募するなど様々なことを試しながらも「ライティング講座を受けた方が近道か?」など悩む日々の中で、twitterでとあるつぶやきを見つけました。それは、当時私が尊敬していたライターさんのつぶやきでした。
そこから私は自分を恥じ、延々と文章を書き始めました。本当に朝起きてから夜寝るまでPCに向かい、半年で約800本ほど書いた頃から、
- 自分が本当は何を書きたいのか
- 文章のリズム
- ネタの生み出し方
のようなものがわかってきたように思います。
あれから約5年。私は文章を書かない日がないほど、朝から晩までPCの前で文章を書いています(最近は編集も多いです)。結局私は、ライティング講座には通わず、疑問に思ったことは都度調べながら、好きなライターさんの記事を読み込み、リズムや言葉遣いを盗みながら独学でやってきました。そんな私が、今は、10年前に憧れていたヨガメディア『ヨガジェネレーション』で編集長を担当させてもらっています。
そう思う日もあるかもしれません。
でも、当たり前のことを当たり前に”続ける”ことができる人だけが、目指した場所に立てるのだと思います。
多くの人が志半ばにして倒れるのは、当たり前のことを続けることを疑うから、未来の自分を信じてあげられないから、ではないでしょうか?
その当たり前のことが、ヨガでは「セルフプラクティスと学びの繰り返し」です。
当たり前を積み重ねた日々や経験は、継続してきた自分への自信を築いてくれると共に、誰よりも『それが好き』という気持ちの証明になってくれます。
あなたは今、1万時間のどこにいますか?
では、最後の質問です。
この時点で、1万時間のうち、何時間程度を達成しているのか、ぜひ計算してみてください。
例えば、1日3時間を2年続けていたとします。3時間×365日×2=2190時間。達成度は21.9%。
一般的に「プロ」と呼ばれる域に達するまでにはまだ20%のところにいるということです。「これなら、まだ自分が選ばれないのは仕方がない」など、客観的に見れるのではないでしょうか?
もし仮に1万時間達成しているけれど、ヨガ指導者として自信が無い、不安だらけであるという方がいたら、それは時間の使いかたが勿体なかったのかもしれません。次回は、練習の質について考えてみたいと思います。
最後に:まずは1000時間練習してみませんか?
これから1年、毎日3時間練習すれば1000時間になります。
もちろん、3時間アサナだけの練習をする必要はなく、
- マントラを唱える
- 呼吸法を練習する
- 瞑想をする
- ヨガの経典を読む
など様々な方法があります。
もしあなたが本当にプロのヨガインストラクターとして活動していきたいと考えるなら、この1000時間は決して無駄にはならないと思います。
そして、この1000時間を続ける中で、自分が本当にヨガインストラクターになりたいか否かの答えも、自然と出てくるのではないでしょうか?