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ヨガインストラクターさんはもちろん、ヨガを練習されている方でも、ヨガを始められた方は、早い段階で身体の各部位に存在する筋肉の名称や機能について学ぶことをオススメします。
理由としては筋肉についての知識があれば
- 各アーサナでどの筋肉が働いているのか
- どの筋肉がストレッチされているのか
などを理解することができます。
これが理解できるとアーサナ中に「今は○○筋に力が入っているな」「今日は○○筋が左右の伸び具合に違いがあるな」といったように身体と対話するバリエーションが増えてくるため、自然とより意識が身体に向き、アーサナに集中することができます。
インストラクターの方は日々の自己鍛錬の中で感じたことをそのままティーチングに応用することができます。
また筋肉の機能が理解できていると、レッスン中に「このアーサナでは○○筋を鍛えることができ、この筋肉を鍛えると日常生活でこのような利点がありますよ」と補足情報を生徒さんに伝えることができます。このような観点からヨガインストラクターだけでなく、ヨガを練習している方でも、筋肉の機能解剖について知っておくととても便利です。
今回は大臀筋と中臀筋の機能解剖について解説します。
大臀筋:パワーと柔軟性が必要
現在、「美尻トレーニング」が下半身のスタイルを良くするためのメソッドとして、女性を中心に流行しています。この「美尻トレーニング」で重要なのが「大臀筋(だいでんきん)」です。
大臀筋はお尻にある筋肉です。「筋萎縮」と言う筋肉が痩せ細ってしまう状況になると尻が垂れ下がっているように見え、引き締まっていると丸みを帯びたキレイな形のお尻になります。
大殿筋の概要
起始 | 浅部繊維 腸骨稜、上後腸骨棘、腰背筋膜、仙骨、尾骨 深部繊維 腸骨外面で後殿筋線の後方、仙結節靭帯、中臀筋の筋腹 |
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停止 | 浅部繊維 腸脛靭帯 深部繊維 大腿骨殿筋粗面 |
作用 | 股関節伸展 外旋 上方繊維 股関節外転 下方繊維 股関節内転 |
大臀筋は下半身を使う動作でパワーを発揮!
大臀筋の働きは、主に下記2つ。
- 股関節伸展:脚を後方に伸ばす動作
- 股関節外旋:膝を外側に向けて捻る動作
日常生活では歩いたり走ったりする時に脚を後ろに蹴り出す動作や、足を踏み込んだ際に下半身を安定化させる時に働きます。
具体的に言えば、イスから立ち上がる時、前かがみになる際に股関節屈曲(脚が前方にある状態)から、股関節伸展(脚を後方に移動させようとする)方向に脚を動かす力を大殿筋が担っています。この働きにより下半身が安定し上体を持ち上げることができます。階段の登り降りも同様です。イスでは両側の大臀筋が働きますが階段になると片側の大臀筋が働くことになります。
スポーツでは下記のような競技のトップアスリートは大臀筋をよく使うため、大臀筋がとても発達した大きなお尻をしています。
- 陸上のスプリンター(短距離走者)やサッカー選手のように速く走ることが必要な競技
- バレーやバスケットボールのような高くジャンプすることが必要な競技
- 野球の投手のような強く踏み込む必要がある競技
このように大臀筋は下半身を使う動作でパワーを発揮します。
大殿筋は柔軟性も大切
大臀筋は鍛えることによりパワーを備えることができますが、同時に柔軟性も大切にしたい筋肉です。
なぜなら大臀筋は股関節を動かす筋肉です。股関節という関節は曲げたり伸ばしたり捻ったりと様々な動きをする関節なので、大臀筋が硬くなってしまうと股関節本来の動きが制限されてきます。特に大臀筋が硬くなると股関節屈曲(股関節を曲げる、脚を前方に動かす動作)が制限されてきます。股関節屈曲が制限されると、しゃがみ込む動作や中腰の姿勢がとりにくくなります。
股関節屈曲が制限される場合、代わりに腰部が動作を補うため、腰部が過剰に屈曲してしまい、腰痛を発症するほか、最悪の場合「腰椎椎間板ヘルニア」になることもあります。このような理由から大臀筋は力強くなおかつ柔軟性が必要です。
大殿筋を鍛える・伸張するオススメのポーズ
ヨガでは、下記のような下半身を強く安定させるポーズで大臀筋を鍛えることができます。
- ウトゥカターサナ(イスのポーズ)
- ヴィーラバッドゥラーサナII(戦士のポーズ2番)
戦士のポーズは前脚(膝を曲げている側)の膝が内側に入り内股になりやすいポーズです。この原因は大臀筋で、内股になっている人は大臀筋の股関節を広げる機能が働いておらず下半身が不安定になっているということです。
膝の向きと足先の向きが同じ方向を向くよう調整して股関節を広げるように意識すると、お尻に力が入るのがわかると思います。つまり大臀筋が働いているということです。
大臀筋を伸張、つまりストレッチできるポーズは、下記のような股関節を曲げて内側に倒すようなポーズです。
- ゴムカーサナ(牛の顔のポーズ)
- マリッチアーサナ(長座から片足を立てて手で抱え込むポーズ)
- ジャタラ・パリヴァルタナーサナ(ワニのポーズ:寝転がった状態で、膝を引き寄せ反対側の床に向かって捻るポーズ)
中殿筋
中臀筋は大臀筋と共に股関節を動かす代表的な筋肉です。
働きとしては股関節を横に広げる股関節外転動作です。中臀筋の部位によっては、股関節屈曲や股関節伸展の働きも担っています。大臀筋が股関節屈曲伸展という前後の動きに関与し、中臀筋が左右の動きに関与しているというイメージです。
中殿筋の概要
起始 | 腸骨外面の前殿筋線と後殿筋線の間 | 停止 | 大転子の外側面 |
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作用 |
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中殿筋は歩行や片足立ちの安定性を高めてくれる
高齢者の方で歩行時に身体を左右に大きく揺らしながら歩く方がいますが、中臀筋の筋力低下が原因の場合があります。そのような方に片脚立ちをしてもらうと、身体が左右にブレて上手く立てない傾向にあります。
中臀筋の筋力強化を図ることで片脚立ちが安定し、歩行が改善します。これは身体の左右の動きを中臀筋によってコントロールできるようになったからです。つまり、シニア層に対するレッスンでは中臀筋を強化するアーサナを組み込むことでレッスン後の歩行の安定性が向上してきます。
木のポーズを行った際に身体が左右にブレてバランスが取れない人がいますよね?これもやはり中臀筋を使ってバランスが取れていないからです。木のポーズを行う前に中臀筋を刺激すると安定した木のポーズを行うことができます。
中殿筋を鍛える・伸張するオススメのポーズ
中臀筋を強化するアーサナは、下記のような股関節を広げるアーサナです。
- バシシュタアーサナ(賢者のポーズ:プランクのポーズから身体を壁に向けて片手を上に伸ばしたポーズ)
- アルダチャンドラーサナ(半月のポーズ:三角のポーズから、後ろ脚を床と水平まで持ち上げ身体を壁に向けて持ち上げた脚と同じ方の手を上に伸ばしたポーズ)
大臀筋を強化するアーサナでも紹介した戦士のポーズ2番も、後ろ脚(膝を伸ばしている側)の中臀筋は強く働きます。
中臀筋をストレッチするアーサナは大臀筋の時と同じで、下記のようなポーズです。
- ゴムカーサナ
- マリッチアーサナ
- ジャタラ・パリヴァルタナーサナ
今回、大臀筋、中臀筋の紹介をしました。これの筋肉は股関節を動かす筋肉であり、下半身を安定化するために非常に重要な筋肉です。これを機会にぜひ覚えてください。