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現在、子どもの習い事と言えば、英会話、体操教室、水泳教室、ピアノなど昔からある習い事に加え、ダンス、ボルダリング、プログラミングなどの新しい習い事が増えてきています。数十年後の将来は今のわたしたちでは想像もできないような習い事も恐らく増えているでしょう。
そのような時代背景の中でヨガも幼児期からできる習い事として人気が出ています。今回はキッズヨガについて解説をしていきたいと思います。
※なお、本記事で扱うキッズヨガの対象は著者が指導している、幼稚園児や保育園児(4歳〜小学校低学年(8歳頃まで)としています。
文科省は1日60分以上身体を動かすことを推奨
まずキッズヨガの話をする前に、幼稚園児や保育園児への指導に対して、国がどのような指針を出しているのか説明します。
文科省による幼児期運動指針では、下記のように示されています。
毎日、合計60分以上楽しく体を動かすこと」
運動習慣の基盤を作り、幼児期に必要な多様な動きや体力などの基礎を作るためです。その体力が様々な活動に対する意欲、社会性を育むことにつながると考えられています。この楽しく身体を動かすことは遊びなどの運動以外にも生活の中でのお手伝いも含みます。
身体を動かす時のポイントは3つ
- 多様な動きが経験できるように様々な遊びを取り入れること
- 楽しく身体を動かす時間を確保すること
- 発達特性に応じた遊びを提供すること
この3つのポイントを押さえて身体を動かすことで、一生必要な心身の健康の基盤を築いていくことが大切とされています。
身体の基本的な使い方が学べるキッズヨガ
身体面からのメリットを考えると、キッズヨガでは「身体の基本的な使い方を学ぶ、基礎体力を付ける」ことができます。
文部科学省によると幼児期の子供たちは成長の過程で様々な基礎的な身体の動きを覚えていきます。これには3種類あります。
- 身体のバランスをとる動作(立つ、座る、寝転がる、起きる、回る、転がるなど)
- 身体を移動する動作(歩く、走る、はねる、跳ぶ、登るなど)
- 道具を使う動作(持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴るなど)
この3種類の動作を子どもたちは身体を動かしながら学習していきます。学習することで生活の中で必要な動きを行ない、身を守る動きや将来行うであろうスポーツ動作の基礎を身につけます。
キッズヨガでは
- 身体のバランスをとる動作をメインに
- 身体を移動する動作まで
学ぶことが可能です。
例:イスのポーズで足腰を鍛える
例えば、イスのポーズでは膝と股関節を曲げた状態での大腿四頭筋や大臀筋などの下半身の筋肉の使い方を学びます。これが日常生活でのイスからの立ち上がり動作や階段昇降の動作や中腰作業時の正しい姿勢に繋がってきます。
木のポーズでは身体のバランス感覚を養います。バランス感覚が良い安定した歩行や転倒予防に繋がります。
これらのアーサナの動きは日常生活の動きに直結してきますが、もちろん全てのアーサナが子供の身体を大きく成長させてくれます。
小さな子供達にとってまだ経験もしたことがないような身体の使い方を、様々なアーサナが教えてくれるからです。アーサナを通じて筋肉や関節の使い方を学び、それが日常生活の基礎的な動作を効率よく行うことに繋がります。
4〜12歳はゴールデンエイジ
そして、成長する中で神経系が急速に発達するのが4〜12歳頃と言われ、この頃の子供はとても身体の使い方の学習能力が高く、この時期を「ゴールデンエイジ」と言います。
分類すると
- 4〜8歳を「プレゴールデンエイジ」
- 9〜12歳を「ゴールデンエイジ」
と分けることができます。
この時期は神経系が急速に発達しますので様々な身体の使い方を経験することが大事になります。特にゴールデンエイジは神経系が最も発達する時期で今まで経験したことがないような動きも見ただけで動作が行えるほどだと言われています。
私が現在ヨガを指導しているのは保育園の年長の園児たちですのでプレゴールデンエイジの時期です。
大切にしているのは「身体を動かすことって楽しい!」と園児たちに感じてもらうことです。
できなくても良いから身体を動かすことにチャレンジしてもらいます。失敗する中で身体の使い方を学習してもらうのですが、神経系が急速に発達する時期なので次のクラスで同じことをしてもらうと上手になっていることは多々あり、本当に驚かさせれます。
アーサナを通じて様々な身体の使い方を学習することが将来に必要な運動能力の基礎を築いていくのです。
八支則で道徳心が学べるキッズヨガ
キッズヨガの利点の2つ目は「道徳心を育み将来必要な社会性を学ぶことができる」です。これには八支則の「禁戒」「勧戒」の教えを知る必要があります。
八支則とは聖典「ヨガ・スートラ」に記載されているヨガの基本的な教えのことです。八支則はヨガにおける8つの行法になるのですが、特に子どもたちに伝える場合は、「禁戒」「勧戒」がポイントになります。この2つはこれから子どもたちが大きく育っていくにあたり必要な社会性を教えてくれるからです。
社会性を伝える禁戒・勧戒
禁戒とは、日常生活の中で「やってはいけない教え」のことです。禁戒は5つあり「非暴力」「正直」「不盗」「禁欲」「不貪」です。
勧戒は、日常生活の中で「行うべき教えのこと」で「清潔」「知足」「苦行」「読誦」「自在神祈念」の5つです。
禁戒と勧戒は大人である私達も考えるものがあり、奔走する日々の生活で忘れかけていた道徳心を呼び覚ましてくれます。
この禁戒、勧戒を子供達へ教えることは人としての成長につながります。わかりやすく伝えることで道徳心を養い、社会の中でどのように生きていくのが良いのか教えてくれます。
例えば、禁戒の非暴力であれば「なぜ暴力がいけないのか」「暴力を振るってはいけない対象は何なのか」を教えてあげることができます。
身体を動かすだけでなく道徳心を育むことで子供達の心身の健やかな成長をサポートしていくことができます。