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お悩み:肩の不調から練習不足で罪悪感&自信喪失。指導者として、いま何を優先すべき?
ヨガインストラクター2年目で、週4〜5本のレッスンを行なっています。 指導者養成講座の受講中から肩の痛みがあり、通院もしましたが良くならず、 レッスンをすることで痛みが増すため、個人の練習が全く出来ていません。
毎日のプラクティス無しに指導をしていることに罪悪感があります。 同期や他のインストラクターと比べてしまうようにもなり できないアーサナに自信を失い、無理に挑戦してしまうことも。 生徒さんには「無理の無い心地良さを味わうように」とお伝えしているのに・・・。 インストラクターになる前は介護士として働いていました。
けれど何年も腰痛や疲労感に悩んでいて、その回復のために介護士を辞めてヨガを始めましたが、このままでは本末転倒になりかねません。 たくさんの生徒さん達が待っていると思うと、お休みもできず(涙)。 何を最優先したら良いのか悩んでいます。
よろしくお願いします。 (38歳、ヨガインストラクター歴2年)
回答者:ヨガ哲学ライター 永井由香
こんにちは。ご質問をいただきありがとうございます。
お返事遅くなってしまいましたが、その後、肩の調子はいかがでしょうか。以前、介護士として働いていらっしゃったとのこと。当時の体へのご負担も影響しているかもしれません。
定期的なクラスがあると治療に専念したくても、なかなかできないものです。その結果、痛みが長引き、個人練習にも集中できず、もどかしい思いを抱えていらっしゃることでしょう。
質問者さんは、沢山の生徒さんが待っているとのことですので、すごく良い先生なのだと思います。できればそのままクラスを続けて頂きたいのですが、大切なのは「どうしたら自分の体に無理をさせずに、自信をもって指導を続けられるか」。
ここに的を絞って、4つの対策を提案させていただきますね。
対策1:比較しない。いまの自分を受け入れる
ヨガを人に伝える仕事をするうえで、自分自身のヨガを深め続ける向上心を維持することは、とても大切だと思います。生徒さんの立場で考えると、探究心や向上心のない先生から学ぶのは避けたいですよね。
とはいえ、すべてのポーズをまんべんなくできるようになることが、探究心や向上心に直結するかというと、そうではありません。
大切なのは、いまの自分にはできないことを受け入れたうえで、できる方法を探すこと。そうした姿勢もヨガにおける大事な学びです。
同期のインストラクターさんたちと比べてできないアーサナが多くなると不安に感じてしまう気持ちはわかりますが、生徒さんの立場で考えてみてください。先生が難しいアーサナができるか否かは、それほど重要ではないはず。
また、たとえできないポーズがあったとしても、それはインストラクターにとって欠点ではないことも自覚しましょう。多くの人は、体に不調を感じたり、肩こり、頭痛、腰痛などに悩まされてヨガのクラスに訪れます。そうした生徒さんたちにとっては、悩みを多く経験してきた先生の言葉の方が安心感を覚えることも。
ヨガのインストラクターを長年している先輩方を見ても、ツラい怪我を克服してきた先生や、病弱だったけれど時間をかけて健康になった方も沢山いらっしゃいます。そんな自分自身のウィークポイントと上手く付き合う方法を見つけ、自分なりに克服してきた先生ほど、生徒さんの悩みにも寄り添ったクラスをできているようです。
特別なアーサナを練習しなくても良いので、質問者さん自身が自分の体に向き合って日々のクラスを行っていれば、それだけでも生徒さんにとって良いお手本になれると思いますよ。
まずは他のインストラクターと同じでなくて良いということを受け入れましょう。大切なのは、生徒さんが「あなたのクラスに参加したい!」と感じる魅力を発掘することです。
自分にしかなれないインストラクターを目指しましょう。
対策2:自分の“強み”にフォーカス
他にはない、あなただけの強みを言葉にすることはできますか?質問者さんの場合は何年も介護士というお仕事をされていらっしゃったので、その経験は大きな強みになると思います。
たとえば…
- 負荷の少ない自然な動きの他、危険な動作などを実体験で腑に落ちている。
- 表情を通して、生徒さんが感じている負担がどの程度かを察知する能力に長けている。
- 広い視野で複数の人を同時に見ることができる。
- 様々な人の体に触れてきたことで、一人ひとりできる動作が全く違うことを理解している。
- ゆっくりと、伝わりやすい言葉で話すのが得意。
・・・など、あくまでイメージではありますが、介助経験を通して培われる可能性がある能力は、ヨガの先生にとってすごく役に立つことばかり。総じて、「相手の立場に立って接することができる」といえます。
先生によっては、「人一倍美しいアライメント」が強みだったり、あるいは「とっても癒される声」が魅力だったり。「生徒さんのことを細かく見ることができる」能力に長けている方もいます。
つまり強みは、それぞれ違っていていいのです。大切なのは“自分だからできること”に意識を向けること。
まずは自分の良い部分を箇条書きでもいいので、紙に書き出してみましょう。親しいインストラクター仲間と一緒に、お互いに書いてみるのも良いですね。その部分を、いっそう引き立てていくことで、できないことに直面しても自信を失わずにいられるはず。
対策3:いまできる“自分を高める”プラクティスも探求して
練習ができないことで感じる罪悪感を拭えるのは、やはり練習です。次の2つのポイントを押さえて“無理なく”積み重ねていきましょう。自分の強みを磨きながら“できる範囲のプラクティス”を行うこと自信喪失の回復にも役立ちます。
“できるアーサナ”に専念
肩に負担をかけずにできるアーサナを、いつもよりも丁寧にじっくり行いましょう。アライメントにも意識を向け、注意深くその動きを探求するイメージです。モチベーションを高めるためには自分のテーマを決めるのも有効です。
肩を使わずにできるアーサナも沢山ありますから、たとえば「骨盤」に特化するだけでも、多くの気づきに恵まれます。そうして、「骨盤」に詳しくなれば、それも指導者としての特別な強みになり、自信にも直結するはずです。
また、全身の土台である下半身に重きを置いたアーサナに集中するのもおすすめ。下半身が安定すると、心にも安定感が生まれてきます。
自分自身がアーサナへの興味を失わないために、肩をいたわりながらも指導スキルの向上に役立つテーマを探してみましょう。
痛みが強いときはプラーナヤマに切り替える
痛みの状況によっては、“マットの上に身を置く”こと自体に、気が乗らないこともあるかもしれません。けれど、できればマットからは目をそむけないでください。ただ、そこに座るだけでもいいのです。ヨガのプラクティスはアーサナだけではありません。
また、クラスで教えているプログラムと同じ内容を練習し続けないといけない、ということもありません。アーサナがツラいときには、たとえばプラーナヤマに切り替えてみるなど、視野を広くもつこともポイントです。
プラーナヤマは、内臓の働きや血行の促進に繋がり、免疫力を強化し、自律神経を整えるうえでも役立ちます。同じような効果を得られる、瞑想をするのもいいでしょう。心身共に穏やかな状態を作り出すプラーナヤマや瞑想でヨガを深めることも立派な練習になります。自分の体の声に耳を傾けながらできる練習を継続することが大切です。
対策4:クラスの指導方法も見直して
クラスで痛みが増すということは、デモンストレーションが負担になっているのかもしれません。肩の調子がよくなるまでは、できるだけ生徒さんを見ることに集中し、デモンストレーションの量を減らすようにしてみるのも、いまできることです。
ただ、そのぶん工夫をしながら“伝わりやすいガイド”を意識する必要があります。最小限の動きと、分かりやすい説明でスムーズにクラスが進むよう、創意工夫をしながら、できる限り自分自身への負担を軽減することも指導者として大切なスキルです。そうして、長く教え続けられる方法を見出すことは、結果的には生徒さんのためにもなります。
休養という選択も間違えではない
ヨガインストラクターは、身体が資本です。本格的に故障してしまっては、一生取り返しのつかないことにもなりかねません。
上記の対策を参考に無理なくヨガと付き合うことで、肩の状態が良くなればいいのですが、状況が悪化しているようなら、思い切って長期のお休みをとることも視野に入れてください。
ヨガの先生にとって、自分のクラスを休むことは一大事です。しかし、今後のヨガ人生を考えれば、きちんと完治させることを優先し、現場を一旦離れることが必要なこともあります。
ただ、その判断は、ご本人しかできません。ぜひこの機会に体と心とじっくり向き合ってみてください。
他の先生とのつながりも大切に
また、通院だけでは完治が叶わなかったとしても“改善できるチャンス”には常にアンテナを張っておきたいですね。
アナトミー(解剖学)やアライメントに詳しい先生のクラスやワークショップに参加して、自身の動きの癖の中に痛みの原因になる無理な動きがないかを見てもらうのも良いと思います。
不安があると、かえって緊張して不自然な筋肉の使い方をしてしまうことがありますので、経験豊富な先生に自分の動きを見てもらうこともおすすめです。
ただ、初めてのクラスでは、必ず事前に肩の痛みについて伝えておきましょう。先生も考慮してくれますし、事前に話したことで自分自身も無理をしなくなります。
最後になりますが、日々のクラスと生活を営みながら、自分自身の体と丁寧に向き合うことは大変だと思います。しかし、長くヨガと付き合っていくために決断したことに自信をもち、無理なく続けられる方法を探してください。
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