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皆さん、こんにちは!私は2012年に出身地の東京から岩手県に移住。現在はヨガ講師兼スタジオオーナーとして活動しています。指導を始めて8年目に突入し、岩手では数少ない本業のヨガ講師として、様々なヨガクラスを行う機会をいただいています。
岩手に引っ越す前、私は地元の東京で5年ほど生徒としてヨガクラスに通っていたので、移住した当初は東京と岩手のヨガの環境の違いにとても驚きました。東京のように多種多様なクラスが日々開講されていることも少ないですし、いまでも地方にはヨガ専門のスタジオがほとんどないので、ヨガクラスに参加しようと思ったら、スポーツジムかホットヨガかという少ない選択肢の中から選ぶしかありません。
ちなみに私は最初のRYT200取得をインドで終えて、帰国後すぐ岩手に移住。その後、間も無く「ヨガを教えよう!」と活動を始めたので、岩手に越して来て初めて、こうした地方の状況を目の当たりにしました。
「インドで学んだマントラや、呼吸法、太陽礼拝をこれから指導したいけど、この地域には、そんなヨガを教えている先生は一人もいない……。受け入れてもらえなかったらどうしよう」と、とても不安になったことを覚えています。でも当初感じたこの不安も、いまとなれば私の指導の強みに繋がっています。
地方でヨガクラスを開講する際、多くの方が「自分が好きで思い入れのあるスタイルのヨガを教えるべきか」、「地方の需要に合わせてヨガクラスを行った方がいいのか」で迷うかもしれません。
今回は、私の体験談から、より良いクラスを提供する為に、「自分の好きなヨガ」と「地域に合わせたヨガ」のバランスをどのようにとるのがベストかについてまとめていきたいと思います。
同じような悩みを抱えている方にとって、私の経験が少しでもお役に立てたら嬉しいです。
疑問:地方では“本格的なヨガ”のニーズはないって本当?
地方でヨガ講師をされている方々から、よく、以下のようなご意見を伺います。
- 若者が少ないからシニア向けヨガなら需要がある
- ダイエットや美容などキャッチーなテーマのヨガしか集客できない
- 地方でそこまで難しいヨガをする必要はない
- 本格的なヨガは、誰も求めていない
こうしたネガティブな意見を聞いてしまうと、移住当初の私のように、新米ヨガ講師にとっては、とても不安になりますよね。自分がこれから伝えようとしているヨガの流派やスタイルがまだその地域にない場合は、なおさらです。
でも本当に、こうした声は真実なのでしょうか?
実際は「地方には本格的なヨガの需要がない」のではなく、そもそも地方の生徒さんたちは「ヨガには様々な種類が存在していることを知らない」から広がらないだけではないか?と私は考えたのです。
決断:自分の好きなスタイルのヨガを教える!
私が地方に移住して痛感したのは「ヨガクラスの種類の少なさ」です。私がヨガの練習を始めたのは、10年以上も前になりますが、東京には既に多種多様な講師がいて、様々なヨガクラスを体験することができました。それゆえ、選ぶのが大変というデメリットもありましたが、いくつかのクラスを体験するなかで最終的に「自分に合うヨガ」を見つけることができました。
一方、地方はそもそもヨガの種類や講師が少ないのが現状。そのため、「ヨガを始めてみよう!」と思い立った生徒さんが、初めてヨガクラスに参加した時に「何か違うな、合わないな」と感じてしまった場合、他に選択肢がありません。結果として「自分にはヨガは向いていない」とヨガから離れてしまうのではないかと思うのです。
そうした思いから私は、周りの意見を振り切り、自分自身が積み重ねてきた練習で学んだスタイルのヨガを、この地域で教えることに決めました。
その地域にまだないスタイルのヨガであれば、新規の生徒さんを見つければいいだけのこと。
何よりも自分が体験してきたヨガの素晴らしさを、自分の言葉で伝えたいと思いました。どこまで学んだとしても、講師は自分の経験以上のクラスを提供することはできません。大好きで続けてきたヨガの良さを知っているのは講師自身です。これまでヨガを通して経験してきた自分自身の感覚を信じることにしました。
結果:「いままでなかった新しいヨガ」として地域に受け入れられた!
私がクラスを始めた当初、岩手にあったクラスは、年配層向けのマッサージ系ヨガか、スポーツジムでの短時間のフィットネス系ヨガがほとんど。もちろんいまも、こうしたクラスは人気ですし需要もあります。
そのような環境の中、私のクラスは90分と長く、マントラや呼吸法、太陽礼拝などを含むアーサナ、そしてヨガ哲学のお話も交えながら、「ヨガとは単なる健康体操ではなく、より良い生き方である」と伝え続けました。
その結果、いまでは私と同年代(30〜40代)の女性をメインに、日々クラスに集まっていただいています。同世代で同じようなヨガが好きな人たちの集うコミュニティがスタジオにできているので、生徒さんたちとお話をしていてもとても楽しいです。そして何より移住者の私にとって、地元の方達と交流できる大切な居場所となりました。
私のクラスにきてくれる方からは、
「スポーツジムでヨガをやってみたがよく分からなかった」
「シニア向けのヨガで物足りなかった」
「体以上に心のリセットのためにヨガを続けている」
というご意見をたくさんいただいています。
「こういうヨガを探していました!」と言って参加してくださる方も多いので、勇気を出して自分の好きなスタイルのヨガクラスを展開して本当によかったと思っています。
もちろんここまでの道のりは地道で大変でしたが、自分が本当に良いと実感してきたヨガを、目の前の生徒さんたちと共に楽しめるよう工夫しながら提案することで、時間をかけて根付かせることができたと思っています。
自分の伝えたいヨガを地域に根付かせる4つの方法
では、ここからは私が実際に地方で新しいスタイルのヨガを根付かせていくために取り組んできたことをまとめていきます。もしあなたが地方にまだないようなスタイルのヨガを伝えたいと感じているならば、参考にしてくださいね。
丁寧に説明し続ける
私が岩手でヨガを教え始めた当初、私のクラスに参加してくださる方のほとんどが太陽礼拝、呼吸法、マントラ、ヨガ哲学など、見たことも聞いたこともないという状況でした。これはヨガ初心者に限らず、ヨガ経験者も同様でした。
そこで私は、クラス中できるだけ解説を交えながら進行していきました。マントラとか何か、呼吸法の目的、太陽礼拝の行い方、肉体的面だけではないヨガの知恵……など、できるだけ簡潔に、そして小学生でも理解できるくらいの分かりやすい言葉を選びながら、各トピックについて伝える時間を確保するようにしました。
特に哲学やマントラなどは、怪しい雰囲気はできるだけ少なくし、リアリティを感じてもらえるような例え話を交えながら伝えました。
クラス中に取り入れられるポーズを1つか2つ削ってでも「なぜそれが必要なのか」、また「どのように行うのか」を最初にしっかり伝達。そうして、生徒さんたちが練習の目的を見失わないように促しました。結果としてこのプロセスが生徒さんたちのヨガに取り組むモチベーションを上げることに繋がったと感じています。
長期戦で根付かせる
ヨガを教え始めると、最初は思うように集客できないことがほとんどでしょう。生徒さんが集まらないと、講師はどんどん不安になりますよね。その不安を解消するために、すぐに方向転換して違う流派やスタイルのヨガ指導者養成講座を受講し、教えようとする講師が多いです。
でも、たとえ最初の数回、最初の数ヶ月、思うように集客できなかったとしても、教えることをやめないでください。あなたが本当に伝えたいと考えているスタイルのヨガが、いまその地域にない場合、根付くまでに3年以上かかると腹をくくって欲しいのです。
3年未満で諦める場合、その流派の需要がないのではなく、認知されなかったことが原因ではないかと私は思います。もちろん講師の指導力の問題もあるかもしれませんが、一気にたくさんの人に知ってもらえるような特効薬はありません。
よくあるのが、一度クラスに来てくれた方が、色々回って1年後くらいに「やっぱりこのクラスが一番自分に合っていた」と戻って来てくれるケースです。生徒さんが、クラスの良さに気がつくまでに、時間が必要な場合もありますので、心が折れそうになっても、諦めずに続けてください。
ひとつのスタイルに絞り、レベル分けでクラスを展開する
出張ヨガの際、ご依頼主さんからよく聞くことのひとつに「名刺に資格がたくさん書いてある講師は、一体何の専門家なのか分からない」という意見があります。「〇〇ヨガ指導者」と書き連ねるほど相手の中で、そのヨガ講師に対するイメージが混乱しやすいです。
多彩なクラスを展開できるヨガ講師は万能に思えるかもしれませんが、一方で一番伝えたいヨガが何なのかは、相手に伝わりづらくなります。
何よりも気をつけたいのが、なかなか生徒が集まらないからと、生活のためだけに思い入れのないヨガを教え続けること。そのうち「私何のためにヨガ教えているんだっけ」と、講師自身のモチベーションまで下がってしまいかねません。
そうならないよう、一番思い入れのあるヨガのスタイルをひとつに絞り、名刺やSNSでも、クラス内容をできるだけ統一するようにしましょう。結果としてヨガ講師としての、あなたらしい印象が、相手に刻まれやすくなります。
その地域にとって新しいスタイルのヨガを、そのまま生徒さんに与えてしまうと、難しいと感じさせてしまうことも多いので、そのスタイルや流派の中でレベル分けしたクラス展開をしてみましょう。
- 〇〇ヨガ(初めての方向け)
- 〇〇ヨガ(初心者〜経験者)
- 〇〇ヨガ(シニア向け)
- 〇〇ヨガ(マタニティ向け)
あくまで自分自身の伝えたいヨガの軸は死守しながら、受け取ってもらう生徒さんたちの経験やレベルに寄り添える形に工夫してみてください。そうすれば、「自分の好きなヨガ」と「地域に合わせたヨガ」の距離をぐっと縮めることができます。
ご自身で決めた「〇〇ヨガ」を言い続けることで、「この先生=〇〇ヨガ」というイメージが次第に地域に根付くと思います。
あなたの感動体験をクラスで伝えよう
「この先生のヨガをまた受けたい」とあなたが感じるのはどんな時ですか?様々な意見があると思いますが、私は「期待を超える」クラスだった時に感じます。つまり感動した!という体験です。
一般的に予想される需要通りのクラスをヨガ講師が提供できたとしても、生徒さんは感動しないですよね?「まぁ、こんなもんかな」という感覚でしょうか。例えば、「リラックスヨガ」に参加して「リラックス」できた、というだけでは感動体験に繋がりません。「リラックスヨガに参加したのに、何だか元気が出た」とか、「疲れていたのは体ではなく心だったのか」といった、意外性や気付きが感動体験になります。
「ヨガのイメージが変わった」、「思っていたよりもヨガって深くて興味深い!」といったような、良い意味で期待を裏切る意外性と感動の体験は、相手の印象に強く残りますし、「またこの先生のクラスに行きたい」という動機を生み出すと思います。
皆さんも、ヨガの練習や学びを通して感動した経験があったからこそ、ヨガを伝えたいと思っているはずです。
感動した者にしか、その感動は伝えられません。だからこそ、ご自身の感動したヨガ体験を、目の前の生徒さんたちに寄り添いながら誠実に丁寧に伝えていってください。