同じことをしているのに、良い結果になるか、悪い結果になるかはマインド、つまりあなたの気持ち次第、なんて話聞いたことありませんか?
そんなの、ただの迷信と考えている方もいるかもしれませんが、マインドセット効果と呼ばれ、きちんとした根拠があるのです。同じ運動量でも痩せる人とそうでない人がいる、大きな理由になっている部分でもあります。
今回の記事は、「ヨガだけじゃ痩せない」と思いこんでいる方、必見!その思い込みをなくせば、あなたの体も変わるかも!?
「ヨガをしても痩せない」という思い込み
全て生徒さんからよく聞かれる質問です。私は、痩せることを目的にヨガを始めたわけではありませんが、知らず知らずのうちに体重は3kg、体脂肪率は4%落ちて20%未満になりました。むしろ、もう少し太りたい、体脂肪率を増やしたい、と思っているくらいです。行っているのはホットヨガではなく、常温ヨガ。食事など他の生活を意識して変えたわけでもありませんので、体重や体脂肪率の変化はヨガのお陰だと思っています。このことをお伝えすると皆さん一様に驚かれるのです。私は、皆さんが驚くことに驚いています。
このエピソードからもわかるように、「ヨガだけじゃ痩せない」と心のどこかで思い込んでいる方が実に多いと感じます。
- 痩せるにはヨガよりもっとハードな運動が必要
- ホットヨガみたいに汗をかかないと痩せない
- 今まで痩せなかったから何をやったって痩せない
…などと無意識に思っている方、皆さんの周りにもいらっしゃいませんか?このような思い込みが、ダイエットを妨げる一番のハードルかもしれません。
“痩せない心理”が4週間の実験で明らかに!
有名な心理学実験を紹介します。アメリカにある7つのホテルで客室係の担当者を対象に行われた試験1)です。予備知識として、ホテルの客室係の業務は運動量が多く、1時間に200~300カロリー消費し、それは時速6キロのウォーキングに等しい運動量であることをお伝えしておきます。ちなみに、オフィスワークの消費量は、1時間に約100カロリー程度です。
実験前のアンケートでは、実験に参加した女性客室係の2/3の人たちが「定期的な運動はしていない」と回答しました。先にお伝えした通り、彼女たちの仕事内容は「定期的な運動」に相応しい運動量にも関わらず、です。参加者たちの体は、まさに本人が思っている通りの体型でした。つまり、体重や血圧が座りっぱなしの生活をしている人たちと同じだったのです。
ここから、実験開始です。4つのホテルに勤めている人には、「客室係の業務が立派な運動である」ことを示すポスターを作成し掲示しました。また、15分間のプレゼンテーションも行い、行動別カロリー消費量など(ex.15分間のバスルーム掃除は60カロリー消費)を伝えるとともに、客室係の運動量は、明らかに政府が推奨する運動量の域に達しているか、むしろ上回る程で、高い効果が期待できるはずだ、と説明しました。
残り3つのホテルの客室係には、「健康のためには運動がいかに重要か」という説明のみを行いました。
4週間後の結果は?
4週間後、「客室係の業務は良い運動になる」と告げられた人達は、何も伝えられなかった客室係より下記の指標が改善していました。
- 体重
- 体脂肪率
- ウエスト/ヒップ比
- BMI
- 血圧
- 仕事の満足度
つまり、同じことをしていても、その人がどう思っているかによって、痩せる人と、痩せない人に分かれたということです。このように「どう考えるか」によって結果が変わることを「マインドセット効果」といいます。
「ヨガで痩せる」根拠を知れば、体は変わる!?
私たちの生活の中では、きちんと事実を認識していないことによる間違った思い込み(=マインドセット)によって、自分が望まない結果になることが大変多いといわれています。それはヨガでもいえることではないでしょうか?そんな時に役立つのが“エビデンス”です。
「ヨガだけでは痩せない」という思い込みに対しては、下記の記事で紹介しているエビデンスを知ることでマインドセット効果が期待できるかもしれません。
ここで気を付けて頂きたいのは、マインドセット効果を得るためには“正しい事実を知る必要がある”ということです。例えば、「テレビを観るだけでカロリーを消費する」という嘘の情報を与えられた人は痩せない、ということも実験によって示されています。
大げさにいえば、「ヨガは万能薬です!どんな病気だってヨガを行えば治ります」という根拠のない話を信じても、“全ての病気が治るわけではない”ということです。
だからこそ、ヨガをお伝えするうえで私はエビデンス、つまり科学的根拠も重視したいと考えています。ヨガのエビデンスを知ることで、マインドセットをよりポジティブなものにし、ヨガの効果を最大限に引き出していきましょう!
次回は、マインドセットとストレスの関係について紹介します。
参考資料
- Crum AJ, et al, Psychol Sci, 2007 Feb;18(2):165-71.
- ケリー・マクゴニガル(2015)『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』神崎 朗子訳, 大和書房