精神科医としてこれまで20年勤務してまいりましたが、ヨガを患者さんに提供する場所を作りたいという思いが強まり、2019年4月に念願のヨガスタジオである「WellnessLabo.」とメンタルクリニックをオープンいたしました。
(オープンの際にはヨガジェネのかめこさんに取材していただいたので、我々の熱い思い等詳細については当該ページをご覧いただけると嬉しいです。)
人とのつながりで、心が豊かに
ヨガを始め、ヨガスタジオをオープンして幸せを感じるのは、多くの方々と出会えることで、刺激的な日々を過ごせることです。ヨガの語源はサンスクリット語の「ユジ(つなぐ)」と言われていますが、ヨガは体と心のみならず、人と人をもつなぐと常々、痛感しています。
中でもお会いする度にポジティブな影響を与えてくださるのが、ヨガジェネ代表のMIKIZO先生。長年に渡りヨガ業界を牽引する方だけあって、経験に裏付けされた言葉、鋭い洞察力に、お会いする度に勉強になっています。
本連載を始めるにあたり、当ヨガスタジオで打ち合わせをしたのですが、その中でまたまたMIKIZO先生の洞察力に感嘆してしまいました。
さて、皆さんこの「レジリエンス」という言葉をご存知ですか?
「レジリエンス」とは逆境力と訳され、極度に不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力と定義されています。
元はストレスとともに物理学の用語でした。 ストレスは「外力による歪み」を意味し、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」を意味します。
個人のレジリエンスを決定づけるものとは
例えば、同じような経験をしているのに成功する人がいる一方で、不利な状況に苦しめられる人がいるのはどうしてなのでしょうか?誰でも抱くこの疑問を突き止めるために、ある調査が行われました。1955年にハワイのカウアイ島で生まれた698人の子どもたちを40歳まで追跡調査したのです。
その研究では未熟児として生まれたことや精神疾患の親、不安定な家庭環境など様々なリスクが精神保健の問題の比率を高めるが、そのようなリスクをもった子どもの3分の1は良好な発達・適応をとげました。親以外の養育者(親族・ベビーシッター・教師など)などとの強い絆や、教会やYMCA活動などのコミュニティ活動への関与が重要であることが示唆されたのです。
近年ではレジリエンスには、状況に一喜一憂しない感情をコントロールする力(感情のコントロール)や、自分の力を過小評価しない自尊感情が大きく関係する事が分かっています。そして自分が成長前進していると感じる事ができる、自己効力感という要素や、失敗の中でもいつかできると考える楽観性も、レジリエンスには重要な要素である事が分かってきました。プラスして人間関係も重要な要素であるとされています。
都市にも、不可欠な要素
レジリエンスは個人の逆境力にとどまりません。
東日本大震災などの災害や気候変動などを契機に都市のレジリエンスにも注目が集まっています。「自然災害や社会的犯罪、恐慌など、物理的・社会的・経済的に深刻な事態が発生しても、これらが都市に与える影響を最小限にとどめ、都市としての機能を維持しながら、しなやかに復活できる力」とされ、場所や規模を問わず、あらゆる都市にとって、不可欠な要素とされています。
その中の一つの要素として、「団結力があり人々が積極的に参加するコミュニティづくりの促進」があります。この要素を備えていることこそがMIKIZO先生が指摘された一体感のあるいい街なのでしょう。
個人のレジリエンスを高めるのにも、都市のレジリエンスを高めるのにもやはり団結力や人間関係が重要視されています。私達は一人で生きているわけではありません。常に誰かに支えられて生きています。そして、人の幸福は人との関係でしか感じることができず、私達にとって一番幸せな事は、人のために何かできる事だとも言われています。
レジリエンスを高めるためにも改めて周囲の方との人間関係を見直してみるのもよいのではないでしょうか?
参考資料
- カレン・ライビッチ アンドリュー・シャテー 『レジリエンスの教科書』(草思社、2015年)
- レジリエントな都市
- NHK 折れない心の作り方