地方の個人経営ヨガスタジオの戦い方

地方の個人経営ヨガスタジオの戦い方

皆さん、こんにちは! 私は現在、ヨガ講師兼スタジオ「yoga journey」のオーナーとして岩手県を中心に活動しています。

これまでの記事では、主に地方で活動するヨガインストラクターの方向けに、様々な疑問や課題とどう向き合っていくかについて書いてきました。今回はもう少し踏み込み、地方でヨガスタジオを個人経営することについて触れたいと思います。

私が経営するスタジオで開催しているクラスは、すべて私1人で担当していて、年間で延2000人以上の生徒さんが訪れます。私の活動については様々な声をいただきますが、その中でも特に多いのが「自分のヨガスタジオを持てるなんてうらやましい!」というお言葉です。

それだけ、自分でヨガスタジオをプロデュースできたらいいなと思っている人や、大好きなヨガを思う存分生徒さんたちに味わってもらえる素敵なスタジオを作りたいと思っている人が多いということなのでしょう。

特に地方では、ヨガ専門のスタジオ自体が少ないので、もっと地方にもヨガスタジオが増えて、ヨガを日常的に楽しめる環境が整っていくといいなぁ、と私も常々感じています。

しかし、実際に自分でスタジオを持ち、すべての管理と運営を一人でするとなると、大好きなヨガ以外の部分で向き合わなければならない課題がたくさん出てきます。そこで今回は、個人でスタジオを経営するうえで不可欠な戦略についてまとめていきたいと思います。

大手スタジオと個人経営スタジオの違い

ヨガを指導することだけでなく、スタジオ運営についても考えなければいけないのが実情
ヨガを指導することだけでなく、スタジオ運営についても考えなければいけないのが実情

私がまだヨガに出会う前の学生時代、大学では主に経済学と経営学を専攻していました。将来何をするかは決まっていませんでしたが、「社長になる!」という思いだけは決まっていましたので、一番直結しそうな経営学やマーケティングを中心に学んでいました。

大学を卒業してから15年以上が経ち、忘れてしまったことも多いですが、自分がヨガスタジオを経営する立場になってみると、役に立っている視点や考え方が多くあることに気がつきます。今でも、ビジネス書や経営本をできるだけたくさん読むようにしています。

実際、スタジオを運営するにあたり考えなければならないことは多岐に渡ります。ヨガを指導することだけを考えていられたら楽なのですが、料金設定や顧客管理、スケジューリングなど、クラス以外のスタジオ運営について考えなければいけない時間の方が多いのが実情です。

ところで、私のスタジオのすぐ近くには、大手ホットヨガとスポーツジムがあります。しかし、選択や意思決定を迫られる場面になった時に、私がそれらのスポーツジムや大手ヨガスタジオを真似ることはありません。

なぜなら、このような環境でお客様に私のスタジオを選んでもらうためには、yoga journeyならではの“何か”がなければならない、と考えたからです。

例えば、大手のスタジオでは、

  • 朝から晩までクラスがたくさん開講されている
  • 料金が安く通い放題
  • 手軽に通えるように1クラスの時間が短い

などが大きな特徴と言えるかもしれません。

しかし、個人経営のスタジオと、大手ヨガスタジオやスポーツジムとでは、そもそも効果的な経営戦略に大きな違いがあります。言い換えれば、個人経営のスタジオが、大手の真似をしても成果が上がらない、ということです。むしろ、大手のような利便性や低価格を打ち出せば、個人経営のスタジオのオーナーは疲弊するだけでしょう。

では、私のように小さな個人経営のスタジオが、大手のジムやスタジオとは違う魅力を伝えていくにはどうすべきか?そのヒントとなるのが「ランチェスター戦略」です。

ランチェスター戦略を個人経営ヨガスタジオに活用する3つの方法

ランチェスター戦略は有名なのでご存知の方も多いかもしれませんが、簡単に言うと、強者(大手企業)と弱者(中小企業)がそれぞれの特徴を活かして取るべき戦い方のことです。現在では、ビジネスシーンでよく用いられています。(詳しく知りたい方は、Web検索をしたり書籍を読んだりしてみてください)

ヨガの世界においては「戦う」というキーワードに違和感を抱く人もいると思いますが、“たくさんの生徒さんの心をつかみ、支持されるための戦略”と考えると受け入れやすいのではないでしょうか。

ランチェスター戦略には様々な方法がありますが、今回は私のような小さな個人経営スタジオ=弱者でも、大手スタジオ=強者に引けを取らない存在感を確立するための3つの原則を取り上げていきます。

いずれも大手スタジオでは取り組むことが難しい方法なので、個人経営のスタジオにとっては強みになるはずです。

一騎打ち戦=ライバルの少ないクラスやコンセプトを打ち出す

ヨガを全く知らない人でも分かりやすい自分の強みとなるコンセプトの設定をする
ヨガを全く知らない人でも分かりやすい自分の強みとなるコンセプトの設定をする

地方ではヨガスタジオがまだ少ないとはいえ、「ヨガを始めたい!」と思い立った生徒さんたちにとって、選択肢はいくつかあるはずです。スポーツジムにホットヨガ、公民館、そしてスタジオ。

その中であなたのスタジオを選んでもらうには、他とは違う分かりやすいコンセプトやクラスが不可欠になります。ヨガのスタイルや流派でも構いませんので、「このヨガを受けるなら、このスタジオへ!」という強いインパクトがあると、より生徒さん達も選びやすいと思います。

ここで注意が必要なのは、あまりにもマニアックなクラスやコンセプトだと誰も来てくれない、ということです。例えば、一般的なフィットネスやダイエットを目的としたヨガを提案するのではなく、「心のためのヨガ」「より良いライフスタイルとしてのヨガ」など、ヨガを始めるきっかけとなる視点が新しく、ヨガを全く知らない人でも分かりやすい言葉を選ぶようにすることが大切です。

局地戦=特定の地域やカテゴリーでトップになる

大手の得意とする利便性や料金の安さなど総合力では太刀打ち出来なくても、一人のヨガ講師やスタジオが、ある特定の地域における1つの分野で1番になることは可能です。

例えば、

  • 働く大人の女性向けヨガクラス
  • 子育てママたちの悩み解決ヨガクラス
  • 更年期女性に寄り添うヨガインストラクター

など、専門性が低くても良いので、「これは私に任せてください!」という分野を持つことで、大手の総合力とは違う独自性が小さなスタジオの強みになります。

まずは小さなエリアでの一番でも良いので、大手では表現することが難しい独自性を持ったスタジオやヨガ講師を目指してみて下さい。

ご自身のスタジオのコンセプトをしっかりと絞り込み、ヨガ講師自身にキャッチコピーをつけるようなつもりで、自分の得意分野をどんどん打ち出していけるようになると、大手との差別化が図れるはずです。

接近戦=生徒さんとより深い信頼関係を築く

一人ひとりを丁寧に把握するように努め、クラスを通してサポートする
一人ひとりを丁寧に把握するように努め、クラスを通してサポートする

個人経営のヨガスタジオでは、主に10人前後の少人数制クラスになると思います。1クラス30〜50人の大手スタジオには人数ではかないませんが、少人数制クラスだからこそのメリットがあります。それは、生徒さんと1対1の直接的な関係を築きやすいという点です。

大人数のクラスでは、生徒さん一人ひとりのコンディションを確認したり、名前を覚えたりすることは難しいでしょう。でも、少人数制のクラスであればそれが可能になります。生徒さんの名前を覚え、個別のアドバイスをすることで、ヨガ講師と生徒さんとの間に信頼関係を築きやすくなります。

例えば、生徒さんたちは、どんな悩みや課題があってヨガのクラスに参加したのでしょうか?

  • 美容
  • 体の不調改善
  • ダイエット
  • メンタルケア
  • ストレスケア

生徒さんそれぞれに違う悩みや課題があると思います。生徒さんをひとくくりにせず、一人ひとりを丁寧に把握するように努め、クラスを通してサポートしていきましょう。

そのためには、ポーズへの取り組み方や呼吸の状態、クラスの前後の様子も含めて生徒さんをよく観察し、発せられているサインを見逃さないようにすることが大切です。そして気付いたことを書き留めておきます。

また、クラス中だけでなく、生徒さんとのコミュニケーションも大切です。お出迎えやお見送りをするだけでなく、体調や困っていることについて声をかけて確認するようにしましょう。できる範囲で生徒さんから感じられる情報をストックし、さらに丁寧な個別対応ができるように努めることが大切です。

そして、生徒さんが「私のことを一番わかってくれているのはこの先生!」と思うような、生徒さんにとって特別な存在になることができれば、あなたのスタジオに足繁く通ってくれるようになるはずです。

「時間が空いているから」「近所だから」という理由で大手のヨガクラスに参加するのとは違い、「あの先生のクラスにいきたい!」という強いモチベーションでクラスに参加してくれるファンが増えていくと思いますし、回を重ねるごとにより生徒さんとの絆も深まっていくと思います。

個人経営の小さなスタジオだからこその強みを最大化しよう

ヨガ講師にとって、良いクラスをするのは必須条件!さらにもう一歩先の工夫が成功へのカギ
ヨガ講師にとって、良いクラスをするのは必須条件!さらにもう一歩先の工夫が成功へのカギ

以上のことに私はこれまで取り組んできました。もちろんこれだけでスタジオ経営のすべてが解決するとは思いません。しかし、もし個人経営の小さなスタジオを運営している、あるいはこれから設立したい、という目標を持っているのであれば、どのように活動していったらいいかの指針にはなると思います。

少なくとも私の経験においては、ヨガが好きで良いクラスを行なっていれば生徒さんがどんどん増えていく、ということはありませんでした。

ヨガの専門的な知識を持たない生徒さん達は、ヨガ講師を名乗る人は全員、良いクラスをしてくれるであろう「プロ」として見ています。

良いクラスをするのはヨガ講師にとって最低限のスキルです。生徒さんたちにとってあなたのスタジオがより特別な空間だと感じてもらえるかどうかは、良いクラスをするだけではなく、さらにもう一歩先の工夫があるかどうかにかかっています。そして、その工夫があってこそ、独自性が輝くのだと思います。