心が軽くなる本当の正直さ『サティヤ』

心が軽くなる本当の正直さ『サティヤ』

八支則「ヤマ」の一つ

ヨガスートラでは、八支則という実践用法を採用しています。八支則は、8つの段階に分かれており、社会的な活動を整えるところから始まり、身体、呼吸の調整を経て、徐々に自己の深い部分に意識を向ける瞑想へと進んでいきます。

八支則(ヤマ・ニヤマ)を日常に取り入れるコツ!ヨガ哲学の実践

「サティヤ」は、この最初の段階にあたる「ヤマ」の中に挙げられている項目の一つです。

ヨガはマットの上だけで行うものではありません。ヨガは自分自身の心をコントロールして、生き方を変える実践ですので、アーサナなどの練習をしていない時にも常にヨガの実践を心がけることが大切です。

サティヤが確立すると、(彼の言葉は)現実となる。(ヨガスートラ2章36節)

「サティヤ」とは「嘘をつかないこと」「正直であること」を意味します。

実践すると、真実が味方になる

ヨガスートラに書かれた「(彼の言葉は)現実となる」。これには、大きく分けて次の2つの意味が込められています。

1:いっさいの偽りがその人の周りを避ける

スワミ・ヴィヴェーカーナンダによると、サティヤ(真実)のパワーが身につくと、夢の中でさえ不真実が現れないと説かれます。

まずは実践者が真実を愛して、真実のみを求めて一切の偽りを捨てるのですが、それによって真実が実践者を愛するようになります。真実に愛された人には、真実のみが訪れるようになり、心の中が真実で満たされるようになると、夢の中でさえ偽りが現れなくなるというのは、不思議なことではありません。

2:その人の言ったことが現実となる

また、その人が発した言葉は全て現実になると説かれます。

サティヤを身に着けた人が「あなたにご加護がありますように」と言えば、言われた人には幸運が訪れ、「あなたの病が良くなります」と言われれば、その病は治ってしまうでしょう。

日本語での「言霊」によく似ています。言霊は誰の言葉にも起こるわけではありません。日常的に嘘の言葉を発している人の言葉には、現実を引き寄せるパワーがありません。その人の言葉は偽りであるという方程式ができあがってしまうからです。

自然は正直な人を愛します。サティヤを確立した人が真実の言葉を発する時、その人の正直さを守ろうとする力が働き、その言葉は現実になると考えられています。

こういう言い方をすると、とてもスピリチュアルな魔法の言葉に聞こえてしまうかもしれません。しかし、とても理が叶っている気がします。サティヤの行を極めた人は、心の中にも偽りの種を抱いていません。そのため、その人の口から出てくる言葉は、過去のことでも、未来のことでも、真実の言葉であるというのは安易にイメージできます。

鍵を握るのは、自分自身への誠実さ

タパスの考えととても似ていますが、サティヤの実践もとても内面的なものです。外面的なアプローチだけでは充分な効果を得ることができません。

苦行?熱業?タパスって、どんな実践?

サティヤの実践は以下の2つです。

サティヤの実践とは?
サティヤの実践とは?
  1. 嘘の言葉を発しない
  2. 心の中でも偽りの思想を持たない

とてもシンプルですが、本当に難しいのです。

人間関係を築いていくために、常に馬鹿正直に自分の意見を言っていてはカドが立つことばかりでしょう。円滑に物事を進めるために、軽い嘘を重ねてしまう経験は誰にでもあると思います。

他人への正直さより難しいのは、心の中の正直さです。自分に嘘をつかないということは本当に難しい。例えば、仕事の付き合いの会合で、早く帰りたいと思っていても、ついつい「大丈夫です」と言ってしまったり、その時に心では「これくらい大丈夫」と思っていても、知らない間にストレスが溜まっていますよね。

自分がストレスを感じたのに「平気」だと自分に言い聞かせることも、サティヤに背く嘘になります。

他人に対して嘘を言わないための方法

私たちの生み出す嘘には、「自分のための嘘」と「相手のための嘘」があります。多くの場合、相手を傷つけたくないからと、ついつい小さな嘘を重ねてしまいます。

例えば、久しぶりに会った友達に対して「太ったな」と思っても、本人が気にしていたら「まったく分からなかったよ〜」と言ってしまったりしませんか?ここで思った通りに「太ったね!」なんて言ったら、当然相手を傷つけることになってしまうでしょう。

では、どうしたらいいのか、私の先生は「何も言わなければいい」と教えてくれました。

相手の意見と自分の意見が違っていても、わざわざ言葉に出さない、スルーするスキルが助けてくれます。もちろんケースバイケースですので、さまざまな場面で、誰も傷つけずに正直さを守る方法を自身で見つけなくてはいけません。

最初は窮屈に感じるかもしれませんが、真実で誠実であることは、結果的に相手との信頼関係を高めることにもつながります。そうすると嘘をつく必要のない人付き合いが自然とできるようになってきます。

自身への正直さを高める方法

他人への嘘をつかないことは、なれてくると自然に身についてきます。正直でいることで、人間関係もとてもシンプルになって心地がいいです。さて、もっと難しいのは自分自身へのサティヤです。ほとんどの人は自分自身の要求を押し殺して生きています。例えば…

  • とても疲れているけど「まだ大丈夫!」「これも自分のため」と言い聞かせて残業を頑張ること。
  • すっごく悲しいことがあったのに、翌日仕事なので「これくらい耐えられる」と言い聞かせたり。
  • ヨガの長期コースを申し込んだら、思っていたものと違っていたけれど、「私がやりたかったことはこれだから!(もうお金も払っちゃったし)私は本当に幸せ!」と考えてみたり。

日常生活は、そんな思考の連続ではないでしょうか。特に、ネガティブな感情を見ないようにする時と、要求を抑えようとする時に、自分自身への嘘が発生しやすいです。

こんな時、自分自身に向き合おうと考えて、自身のネガティブな感情にとことん向き合おうとすると、とても大きなエネルギーを必要とします。正面からぶつかっても、簡単に開放することのできない感情もありますよね。

ネガティブな感情は、執着から起こる
ネガティブな感情は、執着から起こる

自身に嘘をつかないで、心の中のネガティブさを解決するためには、自分自身の心を変えるしかありません。私たちのネガティブな感情は、執着から起こります。

  • 過去に起こった出来事への執着
  • 自分が求める未来への執着
  • こうあって欲しいと思う周りの人への執着
  • 自分自身への執着

これらの執着が強いほど、そこから起きる感情をコントロールすることが難しく、自分自身を納得させるための嘘も多くなってしまいます。

ヨガの本質から遠ざかる“執着”の罠

自分自身へのサティヤを貫くためには、自身の心を穏やかにしていく必要があり、そのためには、やはり他のヨガの実践が必要です。ヨガの八支則は常に繋がっています。

今日からサティヤを心がけて生きましょう

サティヤは今すぐできる実践方法です。

嘘は、小さな嘘でも一つ作ると、それを守るために他の複数の嘘を重ねなくてはいけなくなります。きっかけの嘘が小さくても将来的に大きく膨らんでしまいます。

だから、小さな嘘でも排除して、自分自身の誠実さを守る必要があります。他人に嘘をつかないようにすると、無駄な思考が減って、心が軽くなります。心をシンプルで軽い状態に保てると、自然と自分自身の内側の正直さにも気が付くことができるでしょう。

マットの上で行うだけがヨガではありません。生き方全てがヨガとなります。ぜひサティヤの実践を取り入れてみてください。

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