本場インドのヨガ修行者が好む、サットバな食事

本場インドのヨガ修行者が好む、サットバな食事

以前ヨガ教典に書かれたヨガの食事についてご説明しましたが、概念だけでは少し分かりにくかったかもしれません。

ヨガに適切な食事の選び方

そこで今回は、本場インドのヨガ修行者は、どのような食事を食べているのか。そして、ヨガにとって好ましい食事とは何かについて、修業道場であるアシュラムの食事などをを参考にしながら紐解いてみます。

身体に優しいヨガアシュラムでの食事

アシュラムの食事と聞くと、どのような食べ物を想像しますか?

もちろん伝統的なインド料理を頂きます。ただ、日本のインド料理レストランで提供されるような濃厚なカレーを想像すると、あまりの違いに驚くかもしれません。

アシュラムご飯の特徴

本場のインドのアシュラムで提供される食事
本場のインドのアシュラムで提供される食事

ヨガの実践は、内臓に負担をかけるものも多くあります。そのため、胃腸に未消化のものが残っていると、内臓にダメージを与えてしまうこともあるので、消化しやすいものを食べて、体内をクリーンな状態に保つことがとても大切です。

様々なアシュラムで食事を頂きましたが、基本のメニューは下記のようなものです。

  • 野菜のスープカレー、または野菜のドライカレー
  • 豆のスープカレー
  • ライス
  • チャパティ(薄焼のパン)

これに、ヨーグルトや、生野菜が付く場合も多いです。

共通して言えるのは、調理法も、味付けもとてもシンプルだということです。

インドカレーと聞いてイメージするような、重たい料理はありません。とても消化が良いので、お腹いっぱい頂いても2時間後には空腹感を感じ始めます。

アシュラムでの食事は修業の一部

修行僧が食事を配る光景
修行僧が食事を配る光景

伝統的なヨガの修業は「グルクル・スタイル」と呼ばれ、先生と一緒に住み込みで行われます。生徒はヨガのテクニックだけではなく、食事や、一日のスケジュールなど、生活のすべてを学ぶのです。ヨガ修行者にとっては、炊事も配膳もすべてカルマヨガ

食事の時間がくると、直線状に並んで座り、配膳の係りの人がそれぞれのプレートの上に料理を乗せていきます。料理を配っている間は、神への感謝のマントラ(お祈り)を唱えます。

修行僧の食事
修行僧の食事

食事は自身の身体を整えるための大事な仕事。そのため、食事中には食べる事に集中するために会話は禁止されています。

ヨガの食事で避けられるもの、好まれるもの

ヨガの修業中には、避けたい食品がいくつもあります。特にヨガのアシュラムでは、厳密に制限されている場合が多いです。

ヨガのアシュラムで使わない食材

ノンベジタリアンの食材(肉・魚・卵など)/玉ねぎ/にんにく/アルコール/唐辛子

インドでは宗教的な理由も強く、ノンベジタリアンの食材は厳密に禁止されている場合が多いです。特にヨガの聖地であるリシケシでは、町全体でガンジス川から一定の距離内での肉の販売を禁止しています。

修業の観念からみても、消化に時間のかかる肉食は、ヨガには適さないと思われます。

また、ヨガは精神を鎮静化させる実践を行うため、刺激性の食材は禁止されます。玉ねぎ、にんにく、唐辛子は禁止しているアシュラムが多いです。精神状態の純粋さを奪うアルコール類も厳しく禁止されていることが一般的です。

特に好まれる食材

ムーング豆/ギー/旬の野菜

以上のような、消化しやすく、栄養価の高い食事が、ヨガの実践者にとって好ましいとされます。

インドは豆類の種類が多く貴重なたんぱく源とされていますが、なかでもムーング豆は消化に良く、たんぱく質も豊富であり、さらにデトックス効果で胃腸の調子を整えるので好まれます。

バターを精製して作られたギーもたっぷりと使われます。野菜は様々な種類がありますが、やはり旬のものを頂くのが好ましいです。

新鮮な野菜のマーケット
新鮮な野菜のマーケット

スイーツの楽しみもあります

スイーツ大国のインドは、とにかく魅力的なスイーツが多いのも特徴です。ヨガの修業に集まった人たちも、練習の疲れを甘いデザートで癒します。ただし、スイーツ選びには多少の注意が必要です。

インドの伝統的なお菓子は、油をふんだんに使ったものが多いのですが、消化に負担のかかってしまう食べ物はヨガには適しません。身体に優しいものを選びましょう。

伝統的なインドのスイーツ
伝統的なインドのスイーツ

インドの伝統的なスイーツは、世界一甘いと言われています。砂糖をそのまま舐めるよりも甘く感じます。多くのスイーツは、さらに油をたっぷりと含んでいるので、身体にとって良くありません。できるだけ、ホームメイドの、油をあまり使っていないものを選んでいただきましょう。

気温が高くて体力を奪われやすいインドでは、少量のスイーツはエネルギー補給としてとても役に立ちます。

インドのビーガンカフェ
インドのビーガンカフェ

海外のヨギーが多く集まるリシケシやバラナシなどの地域では、ビーガンカフェも沢山あります。ミルクやバターを含む動物性食材をいっさい使わないビーガンですが、とても豊かなバリエーションの食事が楽しめます。

最もポピュラーなのは、ブラウニーなどのチョコレート系のケーキです。観光地では日本よりもビーガンカフェを探しやすいので、まったくストレスなく食生活を楽しめると思います。

参考にしたい、ヨーロッパで頂いた絶品ヨガごはん

ヨーロッパ風のヨガ料理
ヨーロッパ風のヨガ料理

ベルギーの田舎にあるラダデーシュと呼ばれるヒンドゥー教寺院では、クリシュナ神を信仰しているヨーロッパ出身の人たちが生活をしています。ヨガのクラスも毎日開催されていて、食事は全てアーユルヴェーダの規則に従っています。

食事はインド料理が提供されますが、ヨーロッパ風にアレンジされていて、塩分、スパイス、油分が控えめです。唐辛子やニンニクなどは原則使いません。このような食事は、日本人にとってとても参考にしやすいと思いました。

日本でもインド料理のレシピ本は沢山出版されていますが、重たい料理が多い印象です。自分の国の風土に合ったアレンジをしながら料理することはとても良い事だともいますが、なるべく胃腸の負担にならないものでないと、頻繁にはいただきにくいですね。

バランスに優れた精進料理
バランスに優れた精進料理

日本の精進料理は、ヨガに最適!?

ヨガと密接に関係のあるアーユルヴェーダでは、その土地の風土、気候、季節、食べる人の身体の状態によって頂く食事を考える必要があるとされています。

日本でヨガに適した食事を考えるときには、お寺の精進料理が参考になるでしょう。精進料理がなぜ、修業に適しているのか。それは、次の2つのルールで作られているからです。

  • 殺生などを行わないために動物性の食材は使わない。
  • ネギ、にんにく、ニラ、らっきょう、ノビルなどは煩悩を生む刺激性の食べ物であるので避ける。

細かいルールは宗派などによって違いがあります。しかし、基本的なコンセプトはヨガのアシュラムで提供される食事と類似しています。精進料理には、すべて植物性の食材が使われますが、じっくりと丁寧に出汁をとるので、驚くほど豊かな味わいです。

お寺の宿坊に滞在すると気軽に頂くことができます。それぞれのお寺ごとに、個性があるのも楽しいですね。とても質素で素朴な食事を庵で囲んで頂くお寺もあれば、美しい客間で豪華な料理を提供してくださるお寺もあります。共通して、出汁を取るところから丁寧に手間をかけて下さったお料理は身体が心から喜んでいるのを感じることができます。

毎日の食事でも、少しでも身体にとって幸せな食事であることを心がけるきっかけになるでしょう。

ヨギーの食事、まとめ

インドのアシュラムの食事はとても美味しいですが、日本で全く同じ食事をすることは難しいです。ベルギーのお寺を訪れた時には、現地の食材で、住んでいる人の味覚に合わせたアレンジがされていて、とても参考になりました。インド風の食事にしなくても、コンセプトだけを生かして和食でアレンジすることもできます。

身体と心は食事の影響をとても受けやすいものです。自分の食生活を見直すのに「ヨギーの食生活」を考えてみることは、良いきっかけになると思います。

(写真:筆者撮影)

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