三角筋は肩を前後から覆う筋肉で僧帽筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋と同様に肩を力強く動かすために働いています。
重たい物を持つ仕事をしている方や、ボディービルダーの方の肩周辺が大きく発達しているのは、この三角筋が、しっかり鍛えられている証。ヨガの男性インストラクターでも肩周辺の筋肉が発達していますが、これはアームバランス系のアーサナで三角筋を使っているからでしょう。
今回は、そんな三角筋について解説したいと思います。
三角筋の基礎知識
起始 | 三角筋前部 鎖骨外側1/3前縁 三角筋中部 肩峰の外側縁 三角筋後部 肩甲棘の下縁 |
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停止 | 三角筋前部、中部、下部 上腕骨中央外側の三角筋粗面 |
作用 | 三角筋前部 肩関節の水平屈曲(腕を前へ上げる)/内転(腕を閉じる)/内旋(腕を内側に捻る) 三角筋中部 肩関節の外転(腕を横に上げる) 三角筋後部 肩関節の伸展(腕を後方に上げる)/水平伸展(腕を閉じる)/外旋(腕を外側に捻る) |
三角筋は肩を覆っている筋肉ですが、前部・中部・後部の3部位に分けられ、それぞれ作用が異なります。
三角筋前部の主な作用は、腕を下げた状態(下垂位)から手を前方に挙げること。中部は下垂位から手を真横に挙げる動作を担い、後部の繊維は下垂位から後方に手を挙げる際に機能します。
つまり、手を完全に上げる動作(バンザイ)でも、前から上げるのか、あるいは横から上げるのかで、作用する部位が変わるということです。もちろんそれぞれの部位でストレッチされるポジションも変わってきます。
周辺筋肉と強調しながら機能する
三角筋は基本的には手を挙げる動作に関与します。
この時、肩甲骨に付着している棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)などのインナーマッスル、そして僧帽筋、前鋸筋の肩甲骨を動かす筋肉と協調するのが、本来あるべき正しい動き。
それらが、もし、うまく協調できないと肩関節内でインピンジメント症候群といったトラブルが生じます。
インピンジメント症候群とは
手を挙げる時に特定の角度で肩に痛みが出現する疾患。インナーマッスルの機能不全により手を挙げる時に関節内で骨と骨が衝突することで、周囲の組織に炎症が起き、痛みを発します。
何か物を取ろうと腕を伸ばした時や服の着脱など日常生活で痛みが出るので非常に厄介です。リハビリの現場ではインナーマッスルのトレーニング、肩甲骨の可動域を向上するためのエクササイズで介入し、改善を図ります。
三角筋が働くアーサナ
作用からもわかるとおり、手を挙げる動作をともなう下記のポーズが該当します。
- 三日月のポーズ
- 三角のポーズ
- 英雄のポーズ
……など
ただこれらは、手を挙げるだけなので三角筋に対する負荷は少なめです。そのため、三角筋を意識しにくいかもしれません。
チャトランガダンダアーサナでも身体を支えるために三角筋を使いますが、上腕三頭筋や大胸筋など他の上肢の筋肉がメインに働きます。
三角筋がストレッチされるアーサナ
<三角筋前部>
付着しているのが肩関節の前方なので腕を後方に引く、下記アーサナでストレッチされます。肩関節を伸展方向に動かし、かつ外旋の動きを加えると効果的に伸長できるでしょう。
- 東のストレッチ
- 橋のポーズ
- 弓のポーズ
- ラクダのポーズ
…など。
<三角筋中部>
腕を内側に引き寄せる、下記のポーズでストレッチされます。
- 牛の面のポーズ
- 半蓮華座のねじりポーズの
…など。
なお牛の面のポーズの場合、手が下になる側の三角筋中部繊維がストレッチされることになります。
<三角筋後部>
腕を前から内側に引き寄せる、 下記のポーズでストレッチされます。
- ひねった猫のポーズ
- 鷲のポーズ
…など。
肩を動かしにくいという人は、三角筋前部・中部・後部が満遍なくストレッチされるよう、アーサナを組み立てると良いでしょう。特にデスクワーク中心の方や、勉強で何時間も机に向かって座っている学生さんなど、長時間同じ姿勢でいて肩がこる人には、おすすめです。
このように同じ三角筋でも腕のポジションでストレッチされる部位は変わります。また、三角筋が単独でストレッチされるケースは少なく、上腕二頭筋、上腕三頭筋、僧帽筋、大胸筋などの肩関節周囲の筋肉とともにストレッチされていることを忘れないようにしてください。