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ヨガの練習の時に、どこに意識を向けていますか?
アーサナやプラーナヤマ、ムードラ、瞑想など、あらゆる方法で意識を、内面のより深い部分へと向ける練習を行っています。
この内面の深い部分について、具体的に考えたことはありますか?
今回は、私たちを構成する5つのコーシャ(鞘)から、自分の内側について理解して行きたいと思います。
5つのコーシャ(鞘)とは?
私たちの本質はアートマン(自己の根源)と呼ばれています。アートマンは普遍的に純粋な存在であり、美しく輝く魂のようなものです。しかし、日常生活を行っている時には自分自身の本性であるアートマンを見ることができません。
それは、まるでたまねぎのように、何層にもわたってコーシャ(鞘)と呼ばれる層で覆われているからです。ヨガの実践とは、このコーシャを、1枚ずつたまねぎの皮をむくように、外の層から順に取り除いていきます。そうすることで、一番内側の部分の真実を知ることができるからです。
5つのコーシャの種類
外側から順番に、以下のようなコーシャがアートマンを包んでいます。
- アンナマヤ・コーシャ(食物鞘)
- プラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)
- マノマヤ・コーシャ(意思鞘)
- ヴィジュナーナマヤ・コーシャ(理知鞘)
- アーナンダマヤ・コーシャ(歓喜鞘)
それぞれのコーシャについて、詳しく説明します。
アンナマヤ・コーシャ(食物鞘)
私たちが食べたものによって作られた層をアンナマヤ・コーシャと呼びます。つまり、私たちの身体全てです。
食事によって取り入れたエネルギーを消化して、肉体を作り、いづれ土にかえります。物質的な身体であるアンナマヤ・コーシャは、ひとつ内側のプラーナマヤ・コーシャの影響を受けています。
アンナマヤ・コーシャが不調になると
食事に対する貪欲さが出てアンナマヤ・コーシャが乱れると、自身の身体をコントロールできなくなり、体調を崩したり、病気になります。
より深い層に意識を向けるためには、この層の状態を整えて、あらゆる身体的なストレスを除きとることが大切です。
プラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)
体内外を流れる生命エネルギーをプラーナと呼びます。身体の中にエネルギーを取り入れて、循環させて、体外に出す器官(呼吸・消化・循環・排泄・生殖器官)はプラーナマヤ・コーシャとして考えられます。
プラーナマヤ・コーシャが不調になると
体内のエネルギーを上手くコントロールできなくなると、エネルギー不足などの不調を感じます。プラーナマヤ・コーシャは精神にも影響を与えるので、プラーナの状態が良くないと、心身共に悪い影響が現れます。
マノマヤ・コーシャ(意思鞘)
私たちは5つの感覚器官(目・耳・舌・鼻・皮膚)によって外部からの情報を受け取りますが、その情報によって動く思考や感情の層をマノマヤ・コーシャと呼びます。心の働きは全てこの層に含まれます。
マノマヤ・コーシャが不調になると
この層は、外から入ってくるあらゆる刺激の影響を受けてしまいます。心を上手くコントロールすることができないと、感情が振り回されてしまいます。
ヴィジュナーナマヤ・コーシャ(理知鞘)
ヴィジュナーナマヤ・コーシャは知性の層と呼ばれます。感情に流されない正しい知性によって、五感から得た情報を判断します。
ヴィジュナーナマヤ・コーシャが不調になると
マノマヤ・コーシャの影響を受けるなどして、感情や無知に囚われてしまうことによって、正しい知性が働かなくなってしまいます。
平等な視野が失われ、思い込みによって生まれた自分の意見を押し通そうとします。
アーナンダマヤ・コーシャ(歓喜鞘)
私たちの本質(アートマン)を包み込む鞘であるアーナンダマヤ・コーシャは、喜びに包まれています。唯一の真実であるアートマンは、5つの層(コーシャ)に覆われていて、見ることができません。しかし、1つずつコーシャを取り除いていくことによって、内側に宿る輝きを見ることができます。
アーナンダマヤ・コーシャが不調になると
最も内側にあるアーナンダマヤ・コーシャは、自分の存在への感謝、至高感に満たされた層です。この層が乱されると、自分自身の存在への不快感が生まれ、生命への感謝を感じることができなくなります。
ヨガの練習にコーシャをあてはめる
ヨガの練習は、日常外に向いている意識を自分自身の内側に戻していくプロセス。外側の世界に意識が向いてしまうと、外からの情報に翻弄されてしまい、感情のコントロールができなくなってしまいます。
ヨガの練習をしている時に、自分の意識がどの層に向いているのかを考えてみましょう。
例えば、ヨガスートラの八支則に当てはめて考えると分かりやすいです。
ヤマ・ニヤマ
外の世界に向けた意識をコントロールする方法。自分自身のコーシャに意識を向ける前に、外部の世界への意識を制御することがヨガには必要です。
アーサナ
自分のコントロールをするアーサナは、アンナマヤ・コーシャへの意識をコントロールしています。
プラーナヤマ
呼吸を通して外部と内部のプラーナ(生命エネルギー)を整えるプラーナヤマは、プラーナマヤ・コーシャを整えています。
プラティヤーハーラ
5感から入ってくる感覚を制御するプラティヤーハーラは、マノマヤ・コーシャを整えることができます。
ダーラナ・ディヤーナ
瞑想状態のダーラナやディヤーナは、外の世界に惑わされない知性の状態であり、ヴィジュナーナマヤ・コーシャを整えます。
サマーディ
自我意識が消え去ったサマーディの状態は限りなくプルシャ(真我)に近い状態であり、アーナンダマヤ・コーシャに到達します。
実践が進むにつれて、意識が内側に向かっていることが分かりますね。
ヨガでは、実践中に自分の意識がどこに向いているのかを考えることがとても大切です。人間の意識は、注意していないと自然と外の刺激に向いてしまいます。常に自身の心を観察して、自分の意識の方向性を内側に向けるように心がけましょう。
深いコーシャに到達するほど、心が穏やかになる
ヨガでは、本当の幸せは常に内側にあると考えます。
自分自身の内側に意識が結ばれる状態になると、心の土台がしっかりとし、外からの刺激に翻弄されにくくなります。たとえ、外側で大きな問題があったとしても、冷静さを保つことができるのです。
5つのコーシャのさらに内側には、アートマンやプルシャと呼ばれる自分の本質が宿っています。それは、純粋で美しく輝き、穏やかで、平和、至高の状態です。すでに存在する幸せに気が付くことができれば、物質的な欲に執着する必要がなくなります。
いつでも幸せでいられると、その幸福感は周りの人にとっても良い影響をあたえます。まずは、自分自身が幸せに気が付くことが大切です。
内側の幸福を知ることで、全てに感謝出来るようになる
自分自身の内側に宿る幸福感を知ることができると、同様に他者の内側に存在する純粋さにも気が付くことができるようになります。必ず誰もが持つ内側の美しさは、日常では多くの鞘に覆い隠されてしまっています。
もしも、自分自身に対しても、外側の鞘しか見えていないのであれば、他者に対しても外面しか見えません。しかし、自分自身の内側の鞘を見ることができるようになれば、他者に対しても本質を見ようとします。
他者に対する先入観をすてて接することができれば、人間関係も変わってきます。まずは、自分自身の本質を知るところから始めましょう。