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ヨガをやると、集中力・記憶力がUPすると聞いたことありませんか?これは、ヨガをやることで脳に良い効果がもたらされている証拠です。ヨガの教えには、脳の持久力が上がり、記憶力がUPするだけでなく、脳を疲れにくくし、更には脳を休ませる秘訣が含まれている…という説も。
なぜ、脳にとってヨガが良いのか、今回は様々な分野の研究を参考にしながら紐解いていきたいと思います。
ヨガで集中力・記憶力・仕事の効率が上がる!?
ヨガは認知機能を高めるということが数々の研究によって示されています。認知機能とは、理解力・判断力など様々な知的な能力を指します。1)
最近では、「認知症による認知機能低下」等の場面で使われることが多い言葉ですが、実は私たち若い世代にも密接に関連する言葉であることをご存知でしょうか?
例えば、「お腹が空いた時、頭がボーッとする」というのも認知機能の低下を示します。栄養が足りなくなり、脳のパフォーマンスが下がっている状態、つまり一時的に認知機能が下がっている状態なのです。
他にも認知機能を低下させる原因としてよく知られているのが、睡眠不足です。睡眠不足の日に仕事の効率が下がったり(集中力の低下)、重要なことを忘れてしまったり(記憶力の低下)、判断を誤ってしまったり(判断力の低下)というのは、誰もが心当たりがあるのではないでしょうか?
認知機能を高めるためには、食事や睡眠以外にも、ヨガが有効であることがわかっています。なぜ、ヨガは認知機能向上に寄与してくれるのでしょうか?その理由を一緒に紐解いていきましょう!
身体を動かすと認知機能が高まる!
筑波大学の研究によると、身体を動かすことは脳の持久力を上げ、認知機能を高める効果が期待できることがわかったそうです。どうして身体を動かすことで脳にも良い効果があるのでしょうか?
脳は、身体全体で消費するエネルギーの18%を消費するほど、エネルギーを必要としている器官です。脳にエネルギーが行き渡らないということは、すなわち「死」を意味しています。少し食事を摂れない期間があってもこのような事態になるのを避けるため、脳はグリコーゲンとしてエネルギー源を貯蔵しています。2)
では、運動をするとどうなるのでしょうか?運動は、エネルギーを消費する活動です。ですので、貯蔵していた脳グリコーゲン量も一時的に減少します。
しかし、その後に食事と睡眠をしっかりとることで、運動前よりも脳グリコーゲン量が増える(=脳の持久力がUPした)ことが最新の研究でわかったそうです。2)
さらに、記憶や学習をつかさどる海馬の脳グリコーゲン量が増えると、学習・記憶に関するテストの成績が向上した、という結果も得られています。
そして嬉しいことに、このような運動による脳の認知機能を高める効果は、ヨガなどの軽い運動をたった10分行った直後にも示されたそうです。3)
鼻呼吸することで記憶力UP
ヨガの大きな特徴である鼻呼吸も脳にとって良い効果が期待できます。反対に、口呼吸は脳を疲れさせる呼吸であることもわかってきました。
口呼吸をしている時の方が、脳が無駄に酸素を消費している、ということが医療法人社団智徳会ファミリー歯科医院と(株)脳の学校代表の共同研究によって示されたのです。4)
つまり、口呼吸では脳が働き過ぎている状態だと言えます。脳に慢性的な疲労が溜まり、記憶能力や、仕事の効率が下がってしまう原因になると考えられるのです。
ヨガで鼻呼吸を練習し、普段から無意識に鼻呼吸できるようにすることで、脳の過労を回避し、記憶力や仕事効率のUPが期待できそうです。
マインドフルネスで脳が省エネ運転できるようになる
ヨガのもう一つの特徴として、マインドフルネスを感じられることが挙げられます。マインドフルネスとは、「今この瞬間に注意を向け、評価をせずただ観ること」と言われています。
ヨガにおいては、呼吸にただ意識を向ける過程や、アーサナで身体の声に注意を向ける(評価をせずただ体の声を聞くのがポイント!)過程がマインドフルネスと言えそうです。
「マインドフルネスを行うことで、脳の省エネ運転ができるようになる」というのは、どういうことでしょうか?実は、脳が使うエネルギーのうち意識的な活動に使われるエネルギーは5%ほどしかないと言われています。
残り20%ほどが細胞の修復などに使われ、残りの60〜80%は、何もせずただぼんやりしている時に消費されるそうです。
マインドフルネスは、この何もしていない時に消費されるエネルギーを節約することができるのです。ぼんやりしている時、なぜ大量にエネルギーを消費してしまうかというと、過去の出来事を思い出したり、未来に対して不安になったり、無意識のうちに様々なことを考えているからです。
マインドフルネスは「今」に集中することで、無意識のうちに過去や未来を行ったり来たりする物思いを減らすセルフケア方法です。脳の休息に繋がり、集中力や記憶力、感情コントロール力のUPに繋がると言われています。5)
ヨガは脳にとって良いことづくし
ヨガの八支則にはアーサナ(ポーズ)・プラーナヤーマ(呼吸法)・ダーラナー(集中)・ディヤーナ(瞑想)が含まれています。これらの教えは脳科学の観点から見てもとても理にかなっていると言えるのではないでしょうか?
アーサナで脳の持久力・記憶力を鍛え、プラーナヤーマでは脳を疲れさせないための鼻呼吸を練習し、ダーラナー・ディヤーナでは、脳の休息方法を身につけられるのです。
ヨガをやると「なんとなく怠い」「無気力」といった症状が改善し、「頭がスッキリした」「やる気が出てきた」なんて効果を実感している人も多いはず。これらの効果は、ヨガをやることで脳に良い効果がもたらされた結果かもしれません。
脳への効果はダイエットなどと違って目に見えにくいですが、これを機に意識してみてはいかがでしょうか?
参考資料
- e-ヘルスネット(参照日 2020/4/7)
- EMIRA(参照日 2020/4/14)
- Suwabe K et al.(2018) Rapid Stimulation of Human Dentate Gyrus Function With Acute Mild Exercise, Proc Natl Acad Sci USA, 9;115(41):10487-10492.
- Sano M et al. (2013) Increased oxygen load in the prefrontal cortex from mouth breathing: a vector-based near-infrared spectroscopy study, Neuroreport, 24 (17): 935-940.
- 久賀谷亮『世界のエリートがやっている最高の休息法―「脳科学×瞑想」で集中力が高まる』(ダイヤモンド社 、2016)