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現在、東京とニューヨークの2拠点で活動をされているマック久美子先生。2月の来日直後に、新型コロナウィルスがまたたく間に広がり、世界がいっぺん。そんなさなかに、リモート取材の機会をいただきました。
マック久美子先生といえば、「ヨギラジ」というヨガの熟練度を示す最高峰の称号をもつ、イシュタヨガの日本における第一人者。25年以上ものキャリアがある日本の“ヨガカルチャー”の礎を築かれたひとりです。
そんなマック久美子先生の「ヨガとの向き合いかた」や「いまをどう生きるのか」について、お話を伺いました。
エクササイズ感覚で!軽い気持ちで始めたヨガ
長年、ヨガ界の一線で活躍されている久美子先生の、ヨガ講師になるまでのストーリーから、イシュタヨガの魅力まで、お話いただけましたら幸いです!
当時住んでいたNYで、ちょうどヨガが流行りだした頃で、わたしも試してみたいな、と。
健康のために、「簡単にできるエクササイズないかしら」って思っていたときに、たまたまイシュタヨガの教室へ行ったら、ものすごくオープンな雰囲気で。
これならわたしも通えそうだなって。
椎間板ヘルニアを機に、ヨガの奥深い世界に導かれ……
そんなあるときに「椎間板ヘルニア」になってしまったんです。
当時からわたしは、イシュタヨガの創始者であるアラン・フィンガーに師事していたのですが、椎間板ヘルニアを患ったことで、彼のプライベートレッスンでじっくり身体と向き合おうと思ったんです。
というか、グルと呼ばれるかたですから、なんでも治してくれるんじゃないかっていう、あわい期待があって(笑)。
最初は、高いお金を払ってプライベートレッスンを受けているのに“何もしない”なんて理解しがたかったのですが、アランは瞑想の重要性を教えてくれたんですね。
結果として、椎間板ヘルニアは瞑想をつうじて、改善していきました。
ヨガ本来の目的というのは、じぶんのバランスを取り戻すこと。そのうえで、やりたいことを、おだやかに実現していくのが理想です。無理やりポーズをマスターしようとしたり、闇雲に瞑想テクニックを身につけることではありませんよね。
ところが当時のわたしは、身体の声に耳を傾けず、じぶんにムチを打ち続けていました。椎間板ヘルニアになってしまったのは、その結果です。
アランの教えに従い瞑想でゆっくりと身体と向き合いながら、心と身体のバランスをとっていくうちに、椎間板ヘルニアは自然と治癒していきました。
たとえば、デスクワークが中心のやっこさんの場合、どうしても肩が内側に入り込みやすいでのではないなでしょうか。
そうすると、胸のあたりが圧迫されたような感覚になりやすく、なんだかわからないけれど心が重たいと感じる頻度が多くなっていくかもしれません。
このことをアランから教わり、じぶんのなかで腑に落ちていくにつれ、ヨガの深みに魅了されていきました。
運命の流れが、講師というステージへ
一時期、家族の都合で、ニューヨークから日本に帰国して生活をしていたことがありました。確か、1999年だった思います。当時日本では、まだまだヨガがいまほどメジャーではなく、ヨガスタジオがほとんどなかったんですね。
そのことを、アランに相談したら、「君がスタジオを開けばいい」っていうんです。最初は聞き流していたんですが、イシュタヨガの講師が足りないからって、なかば強引に養成コースを受けることになり、アランが来日するたびにクラスを受講。
そこでアランに毎回「久美子も、ヨガを教えられるようにならないとだめだ」といわれ続け、観念して講師になる決意をしました(笑)。アランにお尻をひっぱたかれ、いまがあるという感じです。
イシュタヨガひと筋の久美子先生が感じられている、その魅力とはなんでしょうか。
誰もができる、イシュタヨガに魅せられて……
本来、ヨガは誰もができるものですが、この3つが、イシュタヨガの根底にあるからこそ、多くの人の心身の調整に役立てられるんですね。この3つをトータルで行うというのは、じぶんと徹底的に向き合うことでもあります。
そうすると、じぶんでも気づき得なかった姿勢のクセ、さらにいだきやすい感情や思考の偏りなんかも、わかりやすくとらえていけるんです。こうしてじぶんを客観視することで、自らをよりよい状態へと整えやすくなる。
そこが、イシュタヨガ最大の魅力ではないでしょうか。
努力はするけれど、結果は見えない力にコントロールされていることを受け入れる。そんなふうに、現実をとらえられるようになり、うんと心がラクになりましたね。
たとえば、いま世界はウィルスのパンデミックと向き合っているわけですが、以前のわたしだったら、自分の意思ではコントロールできない、こうした状況を受け入れるのはものすごく困難だったと思います。
でもね、ヨガをとおして気づいたんです。結果をコントロールしようと思うから、苦しくなったり辛くなったりする、と。もちろん、ヨガを続けていても、苦しみや辛さが、完全になくなることはありませんが、嫌な気持ちにばかりにフォーカスすることは格段に減りました。
イシュタヨガってな〜に?
南アフリカ出身のアラン・フィンガー氏がアメリカで創始した流派。古典的な技術のクリヤヨガ、シバナンダヨガ、ラヤヨガ、タントラ哲学を何年も修行した後に、誰もが安全にできる形へとヨガをシステム化したのがはじまり。一人ひとりの個性にあった「ポーズ・瞑想法・呼吸法」の3つに重きをおいているのが特徴。なおイシュタ(ISHTA)とは、Integrated Sciences of Hatha, Tantra and Ayurvedの頭文字でもある。つまり、ハタヨガ・タントラ・アーユルヴェーダのメソッドを統合し、昇華させたヨガメソッドといえる。