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イシュタヨガの日本における第一人者、マック久美子先生のインタビュー企画。前編では、久美子先生のヨガとの出会いから講師になるまで、そしてヨガをとおして、どのような変化を経験されたのか、お話いただきました。
後編では、そもそもイシュタヨガとは、どういう流派なのか。創始者のアラン・フィンガー氏より、その意思を受け継ぎ、日本でイシュタヨガを伝え続ける久美子先生だからこそ語れる、その奥深い世界観について伺いました。
一人ひとりの個性を大切にする、やさしいヨガ
通常クラスでは、誰が実践しても一定効果が得られるようなインストラクションをしていますが、たとえばダウンドックひとつとっても、その最終形は、一人ひとりが違って当たり前です。それぞれの可動域、安定するポジションへと誘導し、決して無理をさせないようにすることをとても大切にしています。
また、わたしたちは、身体だけの存在ではありません。心やスピリチュアルな側面を含めた“ボディ・マインド・スピリットのバランス”が統合されてはじめて、心身に調和がもたらされます。
イシュタヨガが、ポーズだけではなく瞑想法、呼吸法にも重点を置くのは、通常では自分で知覚できないところまで意識をひろげながら、調整そして自分を癒すものだからです。
“間口の広さ”を徹底しているのも魅力
個性を大切にするというのは、この安心・安全の基本ですよね。
だからこそ、イシュタヨガでは一人ひとりの個性というものを大切にしているんです。どんな人であっても、ケガせず心地よくできる安全なヨガの輪を広げていきたいですね。
古典ヨガを科学した、安心・安全なシステム
ちなみに、イシュタヨガと、古典ヨガとの違いはなんですか?
- Hatha(ハタヨガ):バランスを作り出すヨガの身体的な修練
- Tantra(タントラ):特定の人だけが解脱をして三昧を見つけるのが目的ではなく、誰もが自分の内側に持っている静けさを見つけて、それを日常生活に生かすヨガ哲学
- Ayurveda(アーユルヴェーダ):体質、性質に合わせた代替医療
の3つを統合し、誰にとっても一定以上の効果を体感いただけるよう、システム化したサイエンスなんですね。
解剖学に基づいたハタヨガのアライメント理論で安全なアーサナを指導しながら、心のバランスも取れるようヨガ哲学の教えや体質に基づいたクラスを提供するのがイシュタヨガの大きな特徴です。
つまり、古典ヨガと全く異なるわけではなく、現代を生きる多様な人に合わせて理論やテクニックを厳選・昇華させた新しいヨガといえるかもしれません。
恐怖や不安をやわらげるスヴァディヤーヤ
最後に、何かと不安定ないまに生きるわたしたちの支えになる、久美子先生おすすめの自宅でできるプラクティスがあれば、教えてください。
- Sva=自己の
- Adhyaya=勉強・学ぶ
という2つの単語からできた、“セルフスタディ”を意味する言葉ですが、批判せず言い訳もせず、ただただじぶんを見つめていくことをしていきます。そこからじぶんに必要なプラクティスをしていきます。
先のことを考えず、今の自分を優しく見つめることで、心に平穏さが少しずつ取り戻されます。怖がっている自分にきづいたら、「いまは平気でしょう、先の不安はまだ起きていないよね」と、自らに語りかけてみてください。
そうして呼吸法をしてみるんです。呼吸だけに意識を集中させて。そうすると二元性を超えた、非二元の意識状態へと近づくことができ、心が穏やかになってくるのを感じられるでしょう。
素直に、じぶんの心の状態をありのままに見つめていくと、この“静かに見つめているじぶん”こそ、本来のじぶんであることがわかります。それがわかるだけでも、辛い気持ちは徐々に軽減していくもの。
沸き起こる気持ちは、生まれては消えゆき、永遠に心にとどまることはありません。いっぽう、この“気持ちを見つめているじぶん”は永遠に存在しています。
不安や恐怖を感じやすい時期だからこそ、わたしもスヴァディヤーヤを習慣にしていきたいと思います。
貴重なお話を、ありがとうございました。
イシュタヨガってな〜に?
南アフリカ出身のアラン・フィンガー氏がアメリカで創始した流派。古典的な技術のクリヤヨガ、シバナンダヨガ、ラヤヨガ、タントラ哲学を何年も修行した後に、誰もが安全にできる形へとヨガをシステム化したのがはじまり。一人ひとりの個性にあった「ポーズ・瞑想法・呼吸法」の3つに重きをおいているのが特徴。なおイシュタ(ISHTA)とは、Integrated Sciences of Hatha, Tantra and Ayurvedの頭文字でもある。つまり、ハタヨガ・タントラ・アーユルヴェーダのメソッドを統合し、昇華させたヨガメソッドといえる。