新型コロナウイルス感染予防のため検温してみたら、意外と体温が低くてびっくり……!なんて方はいらっしゃいませんか?
なんとなく「平熱が高いほど免疫が高くて病気になりにくい」というイメージがありますが、調べてみると「むしろ逆?」ともいえる研究結果も出てきました。
では、「体温を上げて免疫力UP」を目指していた私たちは、何をするといいのでしょうか?風邪の発症予防に関する研究結果より考えてみました。
コロナで習慣化された新習慣:検温
新型コロナウィルスの流行から早2ヶ月程。感染予防のため、様々な場面で検温を求められる場面が増えました。そんな新たな習慣ができたことにより、こんな質問や不安を耳にしました。
日本では「冷えは万病の元」と言い伝えられているからか、「平熱が高いほど免疫力が高く、病気になりにくい」と信じている人が多いと思います。かく言う私も「なんとなく、そうなんだろうな」と思っていた1人です。
しかし、詳しく調べてみると「むしろ逆?」ともいえる結果がわかってきましたので、シェアさせて頂きます!
平熱と免疫力の高さの関連を示した研究はない!?
まず私は、免疫力と平熱の関係について、どんな研究があるのか海外の情報も含めて調べてみました。しかし、探しても探しても見つける事はできませんでした。
一方、日本語で「平熱 免疫力」と検索すると、「平熱が1℃下がると、免疫力が30%下がる」という内容の記事がたくさんヒットしてきます。こう書いてあるからには、何か根拠があるはず……。しかし、もう一度よく調べてみても、このようなことを示す論文にはありつけませんでした。
そもそも免疫は、単純に「上がった/下がった」と測定することが不可能なほど複雑なものだそうです。「免疫力UP」と言うと、なんとなく健康に良さそうですが、免疫が高すぎても困ったことになるのです。その代表格が国民病ともいえる花粉症。
体内に入ってくる花粉を“悪いもの”と認識した免疫がしっかり働いてくれることで、鼻水やら目の痒みなど、あの不快な症状に悩まされるのです。
仮に「平熱が1℃下がると免疫が30%下がる」のであれば、平熱が低ければ花粉症なんてならなさそうですよね?
しかし、平熱が35℃台という私の知人のひとりは、花粉症の時期は「顔をとりたい!」と嘆く程、しっかり悩まされています。ここまできて、私もようやく「平熱が高いほど免疫力が高いって実はウソなのでは……」と思い始めました。
平熱が高い/低いは何と関係する?
では、平熱は何と関係があるのでしょうか?アメリカの外来患者3.5万人を対象とした平熱と病気の関連を調べた研究結果1)では、
- 平熱が高い人 → 癌、肥満
- 平熱が低い人 → 甲状腺機能低下症
とそれぞれ相関関係がみられましたが、因果関係ではないことに注意してください!つまり、「平熱が高いほど癌になりやすい」というわけではありません。
一般的に癌細胞は細胞分裂が活発なため、体温が上がるのではないか、と推測されています。甲状腺機能低下症は、代謝を上げるホルモンが少なくなる病気ですので、体温が下がるのも納得です。
また平熱と最も関連があったのは、なんと死亡率であり、0.149度平熱が高くなると、8.4%死亡率が高くなることも示されました。この理由については、まだ明らかになっていません。
しかし、体温が高いという事は、癌やリウマチ性疾患、身体のどこかで起きている炎症などが反映されているためではないか、と考察されています。
つまり、「体温を上げて免疫力UP」という巷で信じられている話は、少なくとも今の科学では全く根拠のない話であることがわかりました。
※私が調べた限りの話です。逆に、「その根拠を知ってるよー!」という方はぜひ教えてください。
ただ、この研究はあくまでも相関関係がわかっただけで因果関係は不明です。なので、平熱が低い/高いと病気になりやすい、という話ではございませんので注意してくださいね。
風邪予防に効果的なのは、マインドフルネス
では、これまで「体温を上げて免疫をあげよう」と頑張っていた私たちは、何をしたら良いのでしょうか?そもそも免疫は単純に“上げればいい”というものでもない、という話は前述しました。そこで、“免疫を上げる”を“風邪をひきにくくする”に置き換えて考えてみます。
風邪予防にオススメなのは「運動」と「マインドフルネス」です。アメリカの大人154人を対象に行われた研究2)では、8週間、マインドフルネスもしくは運動を行うことで風邪の発症予防と重症化予防に効果的であることが示されています。
- 運動をしたグループ → 発症率29%低下、重症化度31%低下
- マインドフルネスをしたグループ → 発症率33%低下、重症化度60%低下
「体温を上げて免疫力UP」という情報があまりにも多く、私もこれらの情報を信じていました。
今回、皆様から疑問や不安を頂いたことを機に調べてわかった事は、「ネットの情報を鵜呑みにしてはいけない」ということと、「平熱が低いからといって心配する必要はなさそう」ということです。
これからも検温の習慣は続いていくと思いますが、平熱が低い/高いに一喜一憂することなく、適度な運動とマインドフルネスで心と身体を整えていきたいですね。
参考資料
- Obermeyer, Z., et al, BMJ, 2017 Dec, 13;359:j5468.
- Barrett, B., et al, Ann. Fam. Med, 2012, 10, 337–346.