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グルクルで学ぶこと。そして“いま”を生きるということ
現世のクリシュナ神として、生涯音楽へのサーダナに身を捧げたPt.ハリプラサード・チョウラシア(Hariprasad Chaurasia)氏へのインタビュー。その後編をお届けします。
インドの伝統的なヨガや芸能(特に音楽)は、師と生徒が共同生活を行いながら学びを深めるグルクス・スタイルという様式が一般的でした。
Pt.チョウラシア氏は、ムンバイとブバネーシュワル(オリッサ州)の2か所にグルクルを建て、常に生徒と生活を共にしています。
直接師から学ぶこととはどういうことなのか?伝統的なインドの学びについて、さらに、コロナの影響で生活が制限されている中、音楽やヨガがどのように私たちの生活に役に立つのかを聞いてみました。
師と生徒が、生活を通して得る学び
筆者は、グルクルから少し離れたアパートで生活を送っています。仕事が終わるとクラスがなくてもグルクルに行き、グルジとの時間を過ごしてから帰宅します。
ティータイムや食事のちょっとした時間だけでも共に過ごすことで、グルジの生き方や考え方を学ぶことができます。日本でも、「子どもは親の背中を見て育つ」と言いますが、グルクルではまさに師(グル)の生きざまを見て、学びを深めていくのです。
生徒と一緒に音楽を作ることを楽しんでいるし、生徒が教えてくれる時もある。そうして、もっと美しい音楽ができあがる。
彼らが私にアドバイスをくれる時もある。それが出来るのは、私たちが家族だから。私は師ではなくて、家族の一員だから。グルクルに一度住めば分かるよ。
父親のように深い愛で、生徒を見守る
グルジとの師弟関係は、音楽の指導に限定されません。
例えば現在ロックダウン中であっても連絡をすると、まずは私が充分に食料を確保できているか、健康状態はどうか、寂しい思いをしていないかと、実の父親のように心配して下さいます。
グルクルは、インドでしか経験できない伝統的な特別な場所だ。
特に音楽界では重要なことで、音楽について疑問がある時、もしくはそれ以外の問題でも、いつでも話すことができる。
インドで行われているグルクルという学びのシステムは、より深く知識を理解するために最適な環境なのでしょう。
音楽家としてのグルジは、大御所と呼ばれる年齢になった今も新しい音楽を作り出すことにこだわりを持っています。時には、孫のように歳の離れた生徒からもアイディアを吸収されます。
常に自分自身の学びを辞めないこと。これは、ヨガや音楽に限らす、自分の決めた道を探求するときには誰もが見習うべき姿だと感じました。
コロナ禍のいま、わたしたちができること
そんな中で、ヨガや音楽がどのように人々の心に安定を与えてくれるのでしょうか。
私たちはシンプルに良い音楽を聴いて、そして練習しているから忙しい日常を過ごしている。
自分たちで好きなものを調理して、時に音楽的な映画を一緒に見るときもある。
その時の自分の行うべきことを、ヨガの言葉ではダルマ(義務・職務)と呼びますが、ヨガを志す人であれば、今こそ自分自身のヨガに向き合うときかもしれないですね。音楽家であれば、音の深い世界を探求できる時間でもあります。
自分にとって大切なことに意識を向ければ、外からのネガティブな情報に心を奪われることがないと私も感じます。
しかし、外のことばかり気にせず、自分について、音楽について気にかけたほうが心は穏やかだ。私も未来がどうなるかは分からない。コロナの影響は長い時間終わらないだろう。しかし、そこに意識を向けないことはとても大切だと考えている。
私たちは(音楽を通して)祈り続ける。そうすれば音楽のプラサード(神からの祝福)がやってくるから受け取る。そして、幸せを感じることができる。
私たちであれば音楽があるから、そうすることで、悲しみをスキップすることができるのですね。
私のためではなくて若い人のために。瞑想とはの意味を、音楽についての意味を、伝えなさい。
PART2のインタビューを終えて
グルジとの会話の中で、自分の今に意識を向けることで、どのような状態でも幸せな生き方を選べるのだと教えて頂きました。それは、クリシュナが『バガヴァッド・ギーター』の中で説いたヨガの知恵と同じです。
ヨガマットの上ではなく、人生全てがヨガなのだと、改めて感じました。
ヨガは体験する哲学です。今回、貴重な機会を頂いて授かった教えを、日常に活かして生きていきたいです。
(写真:筆者提供)
インタビューを動画で見る
Comapany name : Worldwide Record
Bansuri : Pt. Hariprasad Chaurasia
Composed and Arranged by : Umashankar & Bhawani Shankar