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食の知識を持ち、生命に感謝していただく
ヨガをしていると、自分の体の感覚に意識を向ける機会が増えますよね。そこで当然気になるのが、食事。私達の体は毎日摂取する食物でできている、といっても過言ではありません。
食事の内容、摂り方、どれか一つ変えるだけでも、体が軽くなったり、逆に重くなったりします。今回は、そんな食事のあり方について、ヨガ、栄養学、アーユルヴェーダなど、さまざまな視点から考えてみましょう。
ヨガ的に考えると、理想は瞑想的、思想的な食べ方
ヨガをする、気持ちよく続けるための理想的な食事法は「瞑想的な食べ方」。
私達は、自分の呼吸や、心を観察し、穏やかな状態を作るために瞑想をしますよね。しかし、日常に戻った瞬間、瞑想で得た穏やかな自分が消えてしまっている、なんてことはないですか? 日常の一つである食事にも、ヨガ的思考で向き合えたら理想的です。
では、瞑想的に食べるとはどういうことでしょうか?
例えば、食にまつわるあらゆることに対する「感謝」を持ちながら、食事をすること。肉も植物も、私達はそこから生命をいただいています。米であれば太陽のエネルギーを吸収して、農家の人が刈り取って…とさまざまな努力があり、今ここにあります。姿勢を正して食べる、よく噛む、残さず食べるなど、普段当たり前に思われていることも、食への感謝になります。
大切なのは、その有り難さに気づく「心」。ヨガは本来、神や自然、宇宙と自然を結ぶことを意味します。自分も大きな自然の一部であると思えば、自然に還るものだけを体に取り入れたくなるはず。すべての命に感謝をし、毎日心を込めていただきたいですね。
ヨギーニ、ヨギーの食事について気になるあれこれ
そもそもオーガニックって?
オーガニックとは、農薬や添加物などが少ない自然食のことを指します。農薬の多量使用や遺伝子組み換え、ホルモン剤、食品添加物など、現代の食の安全性にはさまざまな問題があります。農薬などの有害物質や、消化・分解の負担になるものは極力取り入れたくないですよね。
だから、なるべくオーガニックなものを食べることがオススメ。農薬などにより還元力を失った土壌では、健康で生命力のある植物は育ちにくい。オーガニックな食を選ぶ習慣をつけ、食から健康になる体づくりを考えましょう。
カフェインとのつき合い方
カフェインは脂肪燃焼、抗酸化作用、脳の覚醒作用、肝機能や消化促進など、メリットがたくさん。朝の眠気を取りたい時、仕事に集中したい時など、私達は日常的に摂取する機会が多くあります。
しかし、コーヒーは神経を興奮状態にさせるので、呼吸を整え、自分自身と向き合うヨガには実は向きません。さらに、コーヒーに含まれるカリウムは水分の排出を促すため、ヨガ前に摂取した場合には、汗など水分が出すぎてしまう危険も…。水分補給を積極的に行うことが大切です。コーヒー好きは、ヨガ前後の摂取する時間に考慮しましょう。
断食のすすめ
食生活に恵まれた現代人は食べすぎてしまうことも少なくないですが、過食は高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす可能性もあります。そんな食生活改善の一つとして、心身ともに浄化できる断食を取り入れることがオススメです。
メリットは二つ。まずは365日働き続けている内臓を休ませること。次に食物の消化と吸収で使っていたエネルギーを、癒しとデトックスに使えること。
ただし、無謀な断食は健康を害することもあるので、指導者の管理の下、適切なタイミングと方法で行いましょう。
ヨガ、栄養学それぞれから考える“肉食”
ヨガの視点から見ると
ヨガ哲学のヤマの一つ、アヒンサー(非暴力、非殺生)。ヨガの修行者には、この教えを基に動物を殺さない、食べないとする考え方があります。また宗教的観点から、肉を食べない文化も。肉を摂取しないとビタミンB12が不足すると言われますが、ニュートリッショナルイーストなど、代替食品で補うことは可能です。
一方、アーユルヴェーダでは肉の栄養を考慮し、体質などによって食べるかどうか判断します。専門家に聞いて、自分に適した食を見つけるのもいいかもしれませんね。
栄養学の視点から見ると
良質なアミノ酸を豊富に含む肉は、体にとって良質なタンパク質。不足すると体は筋肉を溶かしてタンパク質を作ろうとするので、虚弱になる上、筋肉量が減少し、代謝も落ちてしまいます。菜食主義者の場合などは、豆製品や乳製品を積極的に摂ることで、タンパク質を補いましょう。
タンパク質だけでなく、肉や赤身の魚には、心身の安定をつかさどる神経伝達物質であるセロトニンの原料となるトリプトファンと、それを脳内で合成するビタミンB6が含まれます。肉や魚には、体の成長や健康維持に欠かせない栄養素を多く含んでいるのです。
結論
二つの異なる視点から“肉食”を見てきましたが、どちらが正しいとか間違っているということはありません。大切なのは自分にとって心地いいかどうか、ということ。自分の体質や思想を考慮し、食べるかどうか決めるのがいいでしょう!
アーユルヴェーダで考えるヨガと食事の関係
アーユルヴェーダの食事は、毎食「六味」を摂ることが基本。六味とは、「甘味」、「塩味」、「酸味」、「辛味」、「苦味」、「渋味」。量の目安は両手一杯。この中に六つの味が含まれるように献立を作るのがベスト。
味はそれぞれ体と心に影響を与えるため、乱れたドーシャを整える特定の味を取ったり、避けたりすることもあります。健康な人は、この六味をまんべんなく食べるのがいいでしょう。
「甘味」
果物、米、牛乳、肉、油などが甘味。炭水化物が多めの日本食では、十分に摂れているので摂りすぎないように要注意!
「塩味」
塩、海藻、魚介類などが塩味。日本食は塩味も多く含まれる傾向があるので、こちらも摂りすぎないように注意しましょう。
「酸味」
チーズ、ヨーグルト、トマト、酸味の強い果物などが酸味。トマトを添える、酢の物を献立に追加するなど工夫して摂り入れましょう。
「辛味」
スパイシーな食べ物全般、ショウガ、大根、ニンニクなどが辛味。薬味として手軽に食事に取り入れるのがオススメ。
「苦味」
緑黄色野菜全般、ゴーヤやレモンの皮、ターメリックなどが苦味。小松菜やホウレン草など、緑が多い野菜を献立に加えてみましょう。
「渋味」
クルミ、ハチミツ、ブロッコリー、ジャガイモなどが渋味。取り入れやすい食品が多いので意識して摂取してみましょう。
Kazuya(富岡和也)
かずや。アーユルヴェーダセラピスト、栄養士、『Natural Lifestyle』代表。RYT認定ヨガインストラクター、KIJ認定クシマクロビオティックフードコーディネーター。南インドの古典楽器サラスワティ・ヴィーナの奏者でもある。ヨガインストラクター養成講座(RYT200/500)の講師、及び教材育成も務める。