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インドの長期ロックダウンによって実現した、本場インドの先生に聞くインタビュー企画第2弾は、ガンジス川沿いにありヨガの聖地としてしられるリシケシにて、長年ヨガの指導を行っているスニール・シャルマ(Sunil Sharma)先生です。
筆者が「深めようヨガ哲学」の連載でご紹介しているヨガ哲学は、スニール先生から学んだ教典の知恵を基にして書いています。世界各国から集まる、文化も宗教も違う生徒たちにヨガを指導し続けるスニール先生なので、多様性に寄り添うヨガの本質についてお話しいただけるのではないかと思います。
聖地リシケシのヨガティーチャーが答えるヨガの真髄
いつも先生から教わった内容を日本でシェアさせて頂いているので、今回は直接先生の言葉を届けられることを光栄に思っています!
最初の質問が、たぶん一番難しい問題です…。
ヨガとはなに?の答えを短く説明することはできますか?
あらゆる言葉で説明することが可能なのだけど、面白いことに人によって違う言葉でヨガを定義するんだ。なぜ人によって違うのかというと、人それぞれ、ヨガをとおして感じる経験が違うから。
しかし、エッセンス(本質)の部分では全く違いがないんだよ。それこそがヨガの美しさだと思う。
私たちは自分の言葉でヨガについて定義しようとするけど、それは新しいものではなくて、すでにもう表現されたものでしかないんだ。
代表的なヨガの定義の一つに「ヨガとは、個の意識と宇宙の意識の融合」というものがあるけれど、これは、私たちの個の意識と宇宙の意識を繋げようとする旅がヨガであるということを意味している。
それはとても長い旅なんだ。まず初めに、私たちが自分の個の意識に到達するのは非常に難しい。なぜなら通常私たちは無意識であるから。
「自己の意識との出会い」について考えてみよう。私たちは自分の行動や習慣、思考や感覚についてとても自己中心的に見ている。
しかし、もっと深い秩序について考えると、自分と他者の間に全く違いがないと気が付く。そして、全てが一つになるんだ。これが宇宙意識というもの。
この宇宙意識に到達するためには、とても長い道を通らなくてはいけないよ。なぜならば、私たちは日常でいつも自分の考えや感情、行動について無意識の状態であるから。
つまりヨガとは、意識が働いている状態にすること。それは私たちにとっての希望なんだ。私はヨガとはそのようなものだと考えている。
ヨガが人の人生を変える…
なぜなら、人がヨガの練習をしようと決心した時点で、確実に変化は始まっているから。もしもヨガを始めることがなければ、なにも変わらない。
とても自己中心的な理由でヨガを始めたとしても、ちゃんと効果があるんだ。つまり、間違ったヨガをしていても、それでも効果があるということ。だから、悪いヨガの先生でさえ有名になることができているだろう。
どのような形であれ、ヨガの練習には効果がある。
最初はあなたの練習は正しい練習方法ではないかもしれないが、行動を起こすという決意が変化のキッカケとなって、それによって徐々に修正されていく。必ずそうなるよ。
世界中でヨガが求められている理由
すごい数の人が時間を費やしてヨガを学んでいるね。
そして現代、情報はテクノロジーにより速く拡散されるようになり、ヨガの情報も沢山の人に届くようになった。
数ある選択肢と同じようにヨガも試してみて、たった一度、たった1クラスのレッスンを経験してみるのだけど、ヨガを体験するとその経験について深く考えてみたくなるんだ。
「これは一体何だろう?」と。「いったい私が今までやってきたことは、なんて役立たずだったのだろう。」と。
ヨガを経験した感覚は内側に植えつけられるものだ。1度ヨガを経験したら、いったん離れたとしても必ずヨガに帰ってくる。
戻ってくるのにも理由があり、ヨガは誰かを払いのけたりしないから。何度ヨガから離れたとしても、ヨガの方から拒否することはない。あなたに必要な時には、いつでもウエルカム。
だから、自分自身がヨガに受け入れられているのを感じるのだろうね。自分の状態がどうであり、自分を変えなくても。それがヨガの希望だと思う。
ヨガ哲学を、すごく身近に感じたインタビュー
今回のインタビューではヨガは経験が全てだと改めて実感。そして、ヨガ哲学も、自身が感じた言葉であれば、どのように表現しても自由なのだと思いました。そう思うと、数あるヨガの本を読む時も、全て先人の経験談なのだと思い、もっと身近に感じられる気がしました。
次回のPart2では、ヨガが人の人生を変える仕組みについてお話していただきます。
(写真:筆者提供)