【Yogini特集連動企画】頭立ちのポーズをキープする10のコツ

ただ今、発売中の『Yogini』Vol.77の第一特集と連動! 「頭立ちのポーズをキープするコツ」を高村先生に聞いた。これは、ヨガジェネだけで読める貴重な記事。

ポーズは形が何とかなればいいというものではなくて、その中に安定した状態でリラックスし、呼吸が気持ちよくできていられることが目指すところ。しかし、逆転のポーズは形は何とかなっても、安定して快適な状態でキープしているのは、やっぱり難しい。それは本誌でも紹介した通り、逆転のポーズが整うには心身にいろいろな求められる要素があって、それらを超えたところに完成があるからだ。

【コツ1】土台となるヒジと手は正三角形に

僕は理系脳で、いつも数学的にポーズを考えています。ポーズを安定させるためにまず、ヒジと手で正三角形を作ります。しかし、最初は適切なところにヒジを置けていたとしても、逆さになる時に結局ヒジが広がってしまうということがよくあります。ヘッドスタンドは前後に倒れることが多いですが、真横に倒れることはほとんどありません。なぜなら横長の二等辺三角形になってしまうと前後が不安定になるからです。安定するのは、やはり正三角形ですが、ヒジを正三角形よりやや狭める意識で作っておくと、ポーズを取る時に多少広がっても、むしろちょうどいいあたりに来ると思います。

【コツ2】親指で後頭部をしっかり押す

ポーズを取ってから後ろに倒れそうになった時、親指を使います。後頭部の骨の際に親指が引っかかっているので、これを押すと体の位置が戻るんです。つまり、親指でバランスをコント

ロールする。とはいえ、これで体重を支えるわけではないです。微妙な加減なので、一度しっかり押して、戻るのを体験すると、自分なりの力加減がわかると思います。最終的に使わなくてもバランスが取れる時が来るでしょうから、親指を使うのは最初のうちですね。

【コツ3】ポーズを取ってからは胸式呼吸

呼吸を保ち続けることはバランスを取るのにも大切なことですが、その呼吸を胸式呼吸にします。胸式呼吸をすると下のほうが膨らむからです。ひょうたんみたいになるでしょう、全体の形が。重心が下がるということですね。立った状態で胸式呼吸をすると重心は上がりますけれど、逆転した姿勢では下になりますかから。

【コツ4】脚はそろえ“1本”にする「ちくわ理論」

2本よりも真ん中に“1本”にしたほうが中心がわかって、安定しやすい。内側に寄せるというエネルギーがそこで生まれるので、ただ何となく不安定で1本ずつあるよりも、エネルギーを内側にまとめるという動きを作ります。何でもそうですけど、一方向に進んでいると安定感があります。人生もそうなんです(笑)。これは、意識的の話です。バランスのポーズは姿勢を取るので気持ちがいっぱいになりやすいので、エネルギーを分散しないほうが集中できます。だから、真ん中に寄せるわけです。


 
ただ、ヨガは集中しながら拡散しないといけないため、これだけでは足りない。だから1本になれたら、今度は“ちくわ”になります。イメージですけど(笑)。

今度は真ん中を空けます。でも、1本の棒ではなくて、ちくわに。ちくわは真ん中が空いているので、そこにエネルギーを通していくんです。今度は寄せるエネルギーではなくて、上がるエネルギーになるんです。骨盤から脚へ向かってエネルギーを上げていく感じですね、感覚的には。下半身を1本のちくわにする。

なぜ、エネルギーを中に通すといいのかと言うと“静水圧”があるから。静水圧とは、静止している水中において働く圧力のことです。例えば花が水の中で茎を立てていられるのは、まさに水があるからで、その水が動いているからだそうです。しおれてしまうと茎が落ちてしまうのは、水を吸い上げなくなって、静水圧が利かなくなるから。枝がダメになるんではなくて、中の水の流れが悪くなるということです。ポーズも同じで、エネルギーが流れているほうが、ぴーんと伸びる。これを私はちくわと言ってるんですけど(笑)。結局スシュムナーなんですよ。だからすごいんですよ、ヨガって。

【コツ5】“ちくわ理論”に沿った足先の伸ばし方

ポーズ完成したら、つま先を伸ばそうとしますよね。足の甲の部分が伸びる感覚で。でも、これはエネルギーの話では、少し考えたいことがあるんです。多少でも筋肉を使って、体に緊張をもたらしながらつま先を伸ばしているとしたら、エネルギーの浪費になってしまう。だからオススメは、足先を伸ばすことを意識しすぎないか、伸ばさない。ちくわ理論では足の母指のつけ根をつけ根を突き出すようにして、それができてから最終的にはつま先を伸ばす。先に母指のつけ根を突き出すと、それによってちくわの間にエネルギーが通る感じがします。最終的にはつま先を伸ばしているほうがきれいだし、完成だと思うんですけど、つま先を伸ばすことを強く意識をしてしまうと、結局エネルギーが通らずに体が伸びきらないという落とし穴があると思っています」

【コツ6】練習は部屋の角を利用する

壁を使って練習する時、広い壁を使うことが多いはず。それに対し「四隅を使ったほうがいい」。「そこにはまるんですね。角だと壁が二面になるので、横にも倒れないんです。だから、すごい安定性があります」。

【コツ7】座位でノドのバンダの練習をする

姿勢が逆転している時のノドは、座っている時の骨盤底と同じになるため、土台はノドのバンダになります。ノドのバンダが使えてくると、土台がしっかりしてくるので、体がまっすぐになりやすく、ラクにポーズが取れるようになる。

ノドのバンダの使い方は、あぐらの状態で練習して体で覚えてしまうといいのですが、胸椎の十二番のところと胸骨の真ん中のところをつなげて、斜めに引き上げる。これは腰から反らないようにする練習なんですけど、そうすると、胸椎が伸びた分、アゴが下がります。アゴを下げることで胸骨が前に行くようにすると、ノドのバンダがしっかり使えているということです。

【コツ8】もっと伸びる頭頂の使い方

バンダの練習に引き続いて、座った姿勢でやってほしいことが、これです。両手を頭の上に当てて、上に当てている手を押し返すように、伸びる伸びる伸びるという意識で姿勢を伸ばしていくと、体がまっすぐ伸びます。この感覚を覚えておくんです。それを座ってできるようになったら立位で練習します。

【コツ9】立位で足先の使い方を練習する

座位の後は、立位で練習します。まず脚を肩幅に開いて立ちます。で、同じように胸のラインをつなげていきます。アゴを下げます。これに、足の母指の上げ下げの練習を加えていきます。それができたら、これを脚を閉じてやります。脚を閉じてひと通りやったら、今度は手を合掌にして親指のつけ根の部分を頭頂の一番上の部分に当てて、それを押し返す練習。手はとさかみたいになっています、この時(笑)。要するに逆転した時、その一点で立っていられるように、意識づけしていくんです。

頭頂の一点はツボで言うと百会(ひゃくえ)と言います。この一点で立ててなくて、位置が移動しやすい人は、手の力を使ったり、ヒジを使ったりしましょうなんて、最初練習することが多いんです。でもそうすると、ハーフベンドで脚が下りてきて、重心が変わってきた時に首に力が入ったり、ヒジに力が入ったりしてしまうんですよ。だからハーフベンドが10カウントとか15カウントだと厳しい、キツいという方が多いんです。今言った一点がわかって、この一点だけで支えられるようになれば、5分でも10分でも二日でも、十日でもポーズを取っていられます(笑)。百会は、一つの、うまくできているかどうかの基準です。

【コツ10】ポーズができたら目を閉じる

ポーズがまっすぐできたら、目を閉じてみましょう。視覚性抑制というのがあるんですが、何かを見ている時は、見えているものとの距離などで自分の位置を確認できているんですね。片脚で立っている時目を閉じるとふらふらするように、目を閉じると、その感覚が得られなくなるので、より体でポーズを安定させられるようになる。だから最終的な練習では、目を閉じて行うと視覚性抑制がなくなり、より安定感のあるポーズが取れるようになります。

 

監修=高村マサ
たかむらまさ。「ヨガの解剖学.com」代表、「ルーラルヨガスタジオ・鍼灸整骨院」院長。鍼灸あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師。ITCアシュタンガヨガTT修了。経絡YOGA、骨盤ヨガ、筋膜リリースヨガを考案し、ヨガ解剖学や指導者養成講座を開催。