記事の項目
ヨガの練習でも日常生活でも、心にしがらみを感じたら、自分自身の内側に存在するグランティ(結節)が問題かもしれません。
ヨガでは、あらゆる答えを自分自身の内側に求めます。自分自身の心を縛り付けているものが何なのか?それを理解して、解き放つことで、自分自身の限界に縛られなくなります。
グランティ(結節)とは何か?
グランティ(結節)とは、身体の中心を通るスシュムナーと呼ばれる気道にある3つの壁です。グランティがあると、スシュムナーの中をプラーナ(生命エネルギー)が流れることができません。
それぞれのグランティは、心の状態にも深く関係しています。心の中の執着心であったり、最近の言葉でいうと心のブロックです。グランティを一つずつ破ることによって、心がどんどん軽くなっていきます。
ブラフマ・グランティ
ムーラダーラ・チャクラの位置にあるグランティです。まず一番最初にこの結節を破らないと、プラーナ(気)はスシュムナーの中に入ることができません。
ブラフマ・グランティは、肉体的・物質的・性的快感に対する執着。低次の精神状態であり、自分本位さを生みだすものです。
また、3つのグランティの中で、最も欲望や動物本能に左右されやすい心を作ります。クンダリニーを覚醒させることによって、ブラフマ・グランティが破られて、スシュムナーの中をプラーナが流れるようになります。
ヴィシュヌ・グランティ
胸の位置にあるアナーハタ・チャクラに位置するグランティです。
他人との束縛や情緒的な関係性、霊的な経験への執着を生みだします。
ブラフマ・グランティに比べて、より知性的な精神状態に関しますが、社会生活の中で起こる心のしがらみはヴィシュヌ・グランティがある限り解放されません。また、ヨガの実践によって経験することができた、超能力やスピリチュアルな経験に対しての執着も含みます。
この結節がある限り、深い自分の本質を見ることができません。
ルドラ・グランティ
ルドラとはシヴァ神の別名です。第三の目と呼ばれるアージニャー・チャクラに位置します。
シッディ(悟り)や人間が潜在的にもつ霊的能力、プルシャ(真我)への執着を生みだします。この結界が破られたとき、あらゆる執着から解放されて、完全なる解放があります。
それぞれのグランティが心に与える影響
ハタヨガの実践においては、グランティは取り除くべき結節ですが、本来は自分自身を守るためにできたものです。そのため、むやみに破ればいいとも言えません。しかし、グランティが強くなりすぎると精神的な問題が生まれてしまいます。
社会生活を行う上では、バランスを保つことも大切だと考えられます。
本能をつかさどるブラフマ・グランティ
生殖への衝動、物質への執着、強い欲望などをつかさどるブラフマ・グランティは、生物としての本能の部分であり、ムーラダーラ・チャクラやスヴァディシュターナ・チャクラの性質と深く関係しています。
ブラフマ・グランティの性質である本能的な執着心が完全になくなると、人類は種族を維持することができません。生命の維持と、子孫繁栄のために必要とされています。
しかし、強すぎると自分勝手な振る舞いが増えたり、依存症を生みだしやすくなります。
感情をつかさどるヴィシュヌ・グランティ
ヴィシュヌ・グランティのあるアナハタ・チャクラは、食事や呼吸によって取り入れたエネルギーを身体全体に分配する機能があり、身体的な機能を保持するのに大切な部分です。
同時に、エネルギーの微細な働きに関わるヴィシュヌ・グランティは、感情的な構造に深く影響を与え、怒り、憎しみ、嫉妬などの感情を生みだします。特に、人間関係においての執着による情緒的な感情が強まると、大きな苦しみを作り出してしまいます。また、スピリチュアルな体験への執着も危険です。
自己の本質を支えるルドラ・グランティ
第3の目と呼ばれるアージニャー・チャクラの位置にあるルドラ・グランティは、自己の霊性への執着によって作られています。
エゴとも呼ばれる自我意識(アハンカーラ)を作り出し、精神的な気づきや、サマディ(三昧)への執着を生みだします。
ヨガでは最終的にルドラ・グランティを破ることで自己の本質へ到達することができますが、人間としての日常生活を送るためには必要なグランティです。私たちの思考や身体の働き全てを統制してくれるものです。
グランティはハタヨガの実践で破られる
日常生活では私たちの精神を守ってくれるものでもあるグランティですが、ヨガの瞑想にとっては障害です。あらゆる執着心は本質を覆い隠して見えなくしてしまうため、深い瞑想をするときには取り除かなくてはいけません。
グランティは、プラーナヤーマやムドラーの練習によって取り除かれます。
グルのめぐみによって、眠っているクンダリニーが目覚めた時、その時にこそすべての蓮華(チャクラ)と結節(グランティ)とは突き破られる。(『ハタヨガ・プラディーピカ』3章2節)
特にすすめられているのがバストリカーというプラーナヤーマの実践です。
このバストリカーとよばれるクンバカは、スシュムナー気道のなかに生じた頑固な三つの結節(グランティ)を破壊するものであるから、特に修練しなくてはならない。(『ハタヨガ・プラディーピカ』2章67節)
チャクラやクンダリニーと呼ばれる言葉を使うと難しく感じますが、自分自身のヨガの実践で考えみると、それほど難しくはありません。
グランティは、心の中の執着心や、心のブロックです。自分の理性で、心を操ろうとするのはとても難しいので、ハタヨガでは常にアーサナや呼吸に対してアプローチすることで、同時に自分の心も磨きます。
バストリカーのような強い呼吸法は、ナディ(気道)を浄化するのにとても有効ですが、同時に自分の心の中の不純性も燃やしています。それは、ヨガを実際に体験した人であれば、誰もが感じたことがあると思います。
「ヨガをした時はスッキリするけど、日常に戻った瞬間に悩みが現れる」と思っている方も多いかもしれませんが、信じて実践を積むことで、確実に自分の心の中の不必要なものは消えていきます。
ヨガの実践で自分を自由に解き放つ
今回は、グランティという聞きなれない言葉で説明しましたが、日常に当てはめると、心を束縛している執着心に気が付く方も多いのではないでしょうか。
自分自身を守るために結節や壁が必要な場合もあります。しかし、自分の心が本当に独立した状態になれば、心に高い壁を作らなくても快適に過ごせるようになります。グランティが弱まれば、自分自身の可能性がどんどん広がるようになります。
不必要に心のしがらみを作り過ぎていないか、自分自身の心を観察することも、大切なヨガの実践です。