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ハタヨガの教典『ハタヨガ・プラディーピカ』は『ヨガ・スートラ』や『バガヴァッド・ギーター』よりも詳しく実践方法を説く、ヨガを志す人にとってとても身近な教えです。
ヨガの実践者が守りたい心得も、詳細に書かれています。今回はこの『ハタヨガ・プラディーピカ』が説く、ヨガの成功へと導く条件について見ていきたいと思います。
成功への近道は、日常の環境を整えるところから
『ハタヨガ・プラディーピカ』の第1章はアーサナの章です。アーサナの練習に入る前に、まずは場所から整えます。ヨガは、自分自身の内側に向き合う鍛錬です。できるだけ、外の世界に意識が惑わされない平穏な環境が適しています。
行者は政治が正しく、人民が善良で、托鉢して食を得るのが容易で、そして犯罪のない国において、矢のとどく範囲に岩や火山や川がない人里離れた場所に庵室を結んで住むのがよい。(『ハタヨガ・プラディーピカ』1章12節)
最適環境1:必要な時に必要な分だけ食事ができる
古典ヨガ行者はアパリグラハ(無所有)を実践しています。そのため、物質的なもの、お金などはできるだけ所有しないことで、所有欲から自身を解放しています。そのため、必要な時に必要な食事を得られる環境は大事でした。
インドでは伝統的に修行者に対する尊敬の意があり、ヨガ行者には一般市民が食事などを提供する文化があります。苦行でやせ細った釈迦にスジャータという女性がキール(甘い乳粥)を与え、その後に釈迦が悟りを開いた話は有名ですね。
現代日本では、ヨガをするのに、出家僧のような生活をすることは難しいでしょう。しかし、自分の生活が衣食住に困らない安定している状態であると、余計な心配で心が惑わされないので良いですね。
貯金が多かったり、贅沢をする必要はありません。他者と比べることなく、今、食べるものに困らない生活ができていれば充分です。
最適環境2: 清潔で物が少ない部屋
<教典が説く理想の住居>
- 戸口が小さい
- 窓、床のくぼみ、スキマなどが無い
- 高からず、低すぎず、広すぎない
- 如法に牛糞を厚く塗る
- 汚れなく1匹の虫もいない
- 戸外にはあずまや、テラス、井戸がある
- 心地良い
- 周りを塀で囲んである
現代では、パークヨガなど野外で行うヨガも増えていますが、古典ヨガの実践では、窓などのない完全な密室で行うのが良いと考えられていました。
大自然の中では、座っているだけで解放感を感じることができるかもしれません。しかし、それは外のエネルギーを受け取っての感覚であり、深い瞑想とは少し違う状態です。
ヨガの実践する部屋は、清潔であって、できるだけ物が少ない方が適切です。外からの刺激を最小限に減らすことによって、自分の内側に意識が向きやすくなります。
もし、自分の内側からあふれる幸福感・心地よさを感じることができれば、わざわざ綺麗な場所に行く必要はなくなります。いつでも、どこにいても、自分自身に満足できる感覚を得るために、自分の内側に向き合いやすい環境を整えると良いでしょう。
成功の鍵を握る、6つの条件
ヨガの成功のためのコツも6つあります。それぞれ見ていきましょう。
1:熱心さ
ヨガに関わらず、熱心に取り組む姿勢は成功への一番の近道です。どれだけ自分がヨガを必要としているのかによっても熱心さは変わってきます。
2:敢為(困難に屈しないでやり通すこと)
ヨガの実践を続けていると、難しいと感じることもあるかもしれません。例えば、仕事の環境が変わった瞬間に、早起きしての練習が難しくなったり、家族に病人が出ることもあり得ます。けれど、どんな状況であっても実践を続けられる工夫をして、前向きに取り組めるのであれば、確実に成長することができます。
3:剛気(いさましさ)
勇ましさ、勇気があることは、ポジティブに行動する原動力となります。新しいことに挑戦する勇気があれば、人生のあらゆる場面で自分の未来を切り開いていける力となります。
4:真実の知
ヨガにおいて、知識はとても大切です。例えば、同じようにアーサナを行っていても、アーサナの目的が理解できていないと、難易度の高いアクロバティックなポーズの完成を闇雲に求めて、怪我をしかねません。
ヨガでは実践が最も大切ですが、正しい知識に基づいた練習を行うことで効果が何倍にもなります。
5:信念
自分のヨガを成功させるという強い信念・決意はとても大切です。自分で決めたことを、自分自身なら達成できると信じること、ちゃんとやり遂げるための決意、それがあれば、決意をした時点ですでに半分は成功したと考えられます。
6:交際を断つこと
ヨガの障害に書かれた交際について、成功の条件にも、繰り返して書かれています。それだけ、他者からの影響は大きいものなのだと考えられているからです。
少なくてもヨガの練習をしている時には自分自身だけの内側への探求だということを認識して練習したほうがいいでしょう。
日常生活を見直すだけで、ヨガの効果も倍増
今回ご紹介したヨガの条件は、ヨガマットの外から気を付けないといけないことばかりです。自分の生活している環境、食事、考え方の癖などを見直すことで、ヨガの実践に大きな影響があります。
日常生活もヨガの一部だと考えることで、自分の生き方の質も一段と快適なものになるのではないでしょうか。