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ヨガ哲学は難しいけど、もっと簡単にヨガについて学びたい。本やコラムを読んでみたけれど、なかなか理解できない。
誰でも始めは壁が高いと思ってしまうヨガ哲学ですが、一番大切なポイントはとてもシンプルです。
今回は、ヨガ哲学の大事なポイントを、分かりやすくご説明します。
1:ヨガ哲学とは?分かりやすく説明すると「自分を知ること」
まずは、ヨガ哲学がどのような学問なのか理解しましょう。
そもそも哲学ってどんな学問?
まずは、そもそも「哲学とは何か」について知りましょう。哲学の語源は「叡智への愛」(ギリシャ語のphilosophia)という言葉です。
もっと知りたい、深く考えたい、といった探求心から、対象の本質やルーツについて考えます。
自分と真摯に向き合うことこそ、ヨガ哲学
では、ヨガ哲学で深く考える対象は何でしょうか?ヨガでは、「本当の自分」について本質を理解するために深く考えます。
私たちは社会生活の中で、いつも意識が外に向いてしまっていますね。例えば、今日着る洋服について考えたり、上司に言われた言葉について、家族の食事について。1日の中で、ちゃんと自分について考えている時間はどれだけありますか?
自分自身について向き合う時間があれば、それは立派なヨガ哲学の時間です。
私が思っている自分は本当の自分?
あなたが自分で認識している自分は、本当の自分でしょうか?
例えば、「私は子育てをしながら仕事をこなす看護師」だと思っていたら。子供の前では母としての顔があり、職場では使命感を感じて看護師として正しい行動をしますよね。
自分はとても強い女性だと思っていても、疲れた時に友人と会えば、職場ではなかなか言えない弱音が出てしまうでしょう。
私たちは、周りの環境で自分自身のふるまいを変えて、顔つきも言動も変わります。
では、どれが本当の自分でしょうか?
ヨガ哲学では、無常なものは本質ではないと説きます。人間の社会的立場も、身体も、心も常に変化をしてます。そこにアイデンティティを感じると、自分はとても不安定な存在と感じてしまいます。
たとえ、表面的な形が変わっても、変わらない真の自分がある。その真実について考えるのがヨガ哲学です。
本当の自分=プルシャ・アートマン
それでは本当の自分とは一体何でしょうか?ヨガでは「意識」が本当の自分だと説きます。
ヨガのクラスでシャバアーサナをしている時、ふと何も考えていない瞬間が起こることがあります。その時、思考は働いていなくても、意識だけは残っていて、自分の存在を感じることができます。
その静かな自分の本質のことを、ヨガの言葉ではプルシャ(真我)またはアートマン(個の根源)と呼びます。日本語では、魂や霊性が近い言葉です。
私たちの心でさえ常に変化しています。しかし、内側に宿っている本当の自分を感じることができると、変わらない自分の本質を知ることができます。
2:ヨガの練習時間にも、ヨガ哲学を深められる
ヨガは、外に向いた意識を内側に戻していくための実践です。そして、ヨガの練習中に起こっていることを考えるのもヨガ哲学です。
アーサナの練習について考えてみましょう。まずはヨガスタジオやジムに行きます。日常生活と離れた環境に行くことで、社会と自分を切り離します。その後、アーサナの練習を行うとき、意識を身体に向けることで、周りの人や環境のことを忘れて自分に集中します。
もっと深く呼吸に意識を向けると、外面的な身体の状態に囚われなくなるかもしれません。最後のシャバアーサナの時には、全て忘れてポカーンとした心地よさを感じますが、その時、普段頭の中で忙しく働いている思考はお休みできている状態です。
ヨガの練習中に自分の内側で起こっていることに常に意識を向ける習慣を身につけましょう。
ヨガ哲学は体験を通して深まる
ヨガの練習では、玉ねぎの皮を剥くように、一つずつ外側の層を、次のステップで手放していきます。
- 外の世界:日常の義務や人間関係について考えるのをやめる
- 身体:自分の外見を気にしたり、自分の身体に満足できない部分について考えるのをやめる
- 感覚:気温が熱いor寒い、周りの雑音、香りなどに意識を向けない
- 心:勝手に働いている雑念に意識を向けない
このように外側のものから順番に手放していき、最後に残るものが純粋な自分です。
今、どこに意識が向いていますか?「私のポーズ変だと先生思っていないかな?」と考えている時には、まだ外の世界に意識が向いている状態ですね。自分の意識を客観的に観察していれば、アーサナの練習を行っている時間も哲学を深めることができます。
3:ヨガ哲学を簡単に生活に活かせるヤマ・ニヤマの教え
最も日常的に取り入れやすいのが『ヨガ・スートラ』の中に書かれているヤマとニヤマです。この2つは、八支則という、ヨガの8つの段階の最初の2つです。
『ヨガ・スートラ』では、階段を上るように、1つずつ段階を踏むことでヨガが深まると考えているので、最初の2つの土台を整えることはとても大切です。
5つのヤマ
ヤマは、社会的生活を行う中での5つの制戒です。
毎日1時間アーサナの練習を行っても、残りの23時間は日常生活です。マットの上に立っていない時間にもヨガ的な行動を心がけることで、ヨガの効果が一気に深まります。
1:アヒムサ(非暴力)
他人に対しても自分に対しても、物質的・言語的・精神的に暴力を行わないこと。
2:サティヤ(正直)
嘘をつかないこと。自分の心にも正直になること。
3:アスティヤ(不盗)
他人の利益を奪わないこと。時間や労力なども奪わない。
4:ブラフマチャリヤ(禁欲)
ヨガに向けるべきエネルギーを、性欲などの他の欲望のために消費しない。
5:アパリグラハ(不貪)
モノを所有しないこと。物質への欲を手放して、心が外に向かうのを防ぐ。
5つのニヤマ
内側の清らかさを磨くための実践。心がサマディ(三昧)に入るための準備段階。ヤマは社会的な行動なのに対して、ニヤマは自身の心の在り方について説いています。
1:シャウチャ(清浄)
自身を清潔に保つこと。生活する部屋や着るもの、心の状態も綺麗に整える。
2:サントーシャ(知足)
今、自身に与えられたものに満足すること。
3:タパス(苦行・熱業)
困難をやり遂げること。自分への誓いを守る意志の強さを磨く。
4:スヴァディアーヤ(読誦)
聖典を読むこと。マントラを唱えること。
5:イシュワラ・プラニダーナ(祈念)
神への信仰。自分の内側にある尊い存在に向けて祈る。
ヤマ・ニヤマを深く考える
ヨガ哲学を始めたばかりの人は、ヤマとニヤマの合計10個を覚えることで聞きなれないサンスクリット語に挫折してしまいがちです。しかし、哲学は暗記のテストがあるわけではありません。名前を覚えることよりも、深く考えることが大切です。
10個のヤマ・ニヤマの中から、自分のお気に入りを見つけたら、それについて深く考えてみましょう。1つを深めることができれば、生活が大きく変わるのを感じられます。
ヨガ哲学は難しくない
ヨガ哲学は、ヨガの練習中や、日常の生活の中で深めることができます。もしも、実践や体験が伴っていないのであればどれだけ本を読んで専門用語を暗記しても意味がありません。自分の体験に、ヨガ哲学の言葉を当てはめていくことで、一気に哲学が身近なものになります。
自分にとって簡単なところから始めて、もっと知りたいと思ったら、難しいと思っていたヨガ哲学が、とても楽しいと感じられるようになります。