どうしてヨガをしても体が温まらないの?

どうしてヨガをしても体が温まらないの?その疑問に解剖生理学的に回答

体の冷えは健やかな心身の大敵

ヨガは体液循環を促し、筋肉も使うので基礎代謝が上がり体は温まるはず。しかし、ヨガをしていても指先足先は冷たいまま、体がポカポカしないという女性は多いのでは? 

今回は、「ヨガをしているのにどうして体が温まらないのか」という疑問に、解剖・生理学の視点から考えていく。

まず本題に入る前に、体の冷えが私達に与える影響を押さえておこう。

現代人は体が冷えている人が多く、本来は平熱36.9度を目指したいが35度代の人が増えている。特に深刻なのは自覚のない「冷え」が増えていること。

体、特に体内深部の温度が下がると全身の血の巡りが悪化することで、肥満、肌荒れ、食欲不振を引き起こすだけではなく、病気の原因にもなり得る。また、精神面への影響も大きく、冷えがうつの要因にも。

自分が冷えているかどうかは、朝布団の中で確認できる。布団から出る時に冷たいところがあれば、冷えていると考えていい。

「かくれ貧血」なら、ヨガでは温まらない!?

女性は意外に「かくれ貧血」が多く、貧血だといくらヨガをしても体は常に温まりにくい状態。

「かくれ貧血」の場合は、まず貧血を改善しなくてはいけない。「かくれ貧血」かどうかは一般的な血液検査の結果では表されない、“フェリチン(貯蔵鉄)”という鉄欠乏性貧血の指標になっている数値によって判断される。

※事前の申し出と別途料金を支払えば、血液検査でフェリチンの数値を測定可能な場合があります。

食事から鉄分を正しく摂取しないとフェリチンが減り、どんどん貧血が深刻化してしまう。
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インスタント食品を多く摂取する栄養バランスの悪い食生活、ひと昔前は一般的だった鉄瓶を使わなくなったこと、生理で鉄分を奪われてしまうことも影響して、現代の女性はどうしても鉄分が不足しがち。

これは食生活の改善で治していくしかないが、もし自分に冷え性の症状がある場合はまず「かくれ貧血」ではないか検査をしてみてもいいかもしれない。

「ヨガは頑張らなくていい」って本当?

ヨガでは、柔軟性を求めがちで、筋力系の負荷がかかるトレーニングはやりたがらない女性も多い。ただ体が軟らかいだけで、適切な筋肉量がないとケガにつながるだけではなく、体も温まらない。

しかし、ヨガでは「ヨガだから頑張らなくてもいいよね」という言葉の表面だけを見た、“ヨガ的発想”におぶさってしまいがちだ。

ある程度の心拍数を保って負荷をかけなければ、筋肉は絶対につかない。柔軟性は大事だけれど、それだけが本来の目指すところではないこと、ほどよく筋肉は必要であることを心にとどめておきたい。

一方で、ポーズに痛みを感じるまで負荷をかけて、無理して頑張ってしまう人もいる。

ヨガは「甘えて頑張らない派」と「自虐的に頑張る派」に二極化してしまいがちだ。裏を返せば自分の中の限界、エッジがわからない人が多いのかもしれない。

しかし本当の自分と対話を重ね、その感覚を感じ取る練習こそが、ヨガと言える。体がポカポカしてくるくらい、自分の限界を探るようにヨガに向き合ってみよう。

自分の体、正しく使えている?

ヨガで体が温まる理由の一つとして、基礎代謝が上がることが挙げられる。

女性は男性に比べて筋肉量が圧倒的に少ないため、自分から能動的に動いて熱を発生させることで初めて筋肉がつき、基礎代謝が上がることで体も温まる。

筋肉には白い筋肉(体の表面に多い、速い動きをしたり力を出す筋肉)と赤い筋肉(体の深層部に多い、姿勢を維持したり呼吸と関連してゆっくりと動くのに適した筋肉)の二つがある。

基礎代謝を上げるには、エネルギー消費量の多い赤い筋肉にアプローチするのが有効。呼吸を深めながら、筋肉の形を意識して正しいアライメントを作っていくのが、基礎代謝を上げるには一番効果的だ。

アライメントがズレていると筋肉がうまく使われず効果が大きく薄れてしまうので、体の使い方はしっかりと意識したい。

汗をかける体を作ろう

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ヨガでは、筋肉を使うことで皮膚の血液量が増加する。筋肉には「筋ポンプ作用」とい静脈に流れる血液を心臓に戻す働きがある。心臓への血の巡りがよくなると、当然抹消への血液の巡りもよくなり手足など末端の冷えにも効く。

また、ヨガでは筋肉の中でも骨格筋をより使うことで、熱を体の内側から発生させる。脳の温度受容器は体の内部の熱に反応しやすく、内部の熱が上がると脳はオーバーヒートを防ぐために熱を体外に逃すように働く。その反応の結果が汗。

汗は体温の調節機構だが、現代ではヒーターやエアコンによって温度変化を感じることが少なくなった。そのため日本人の汗腺は発達しにくく、汗をかきにくい体になってしまった。

仮に熱を作ってもそれを下げることができなければ、体は自然と熱を作らないように代謝を下げるしかないため、結果的に低体温になってしまう。

正しく体を使いながらヨガをすれば、体は内部から温まる。さらに有酸素運動によって皮脂腺が開きやすくなっているため、体内にたまっている有害金属と一緒に汗が体外に出やすいのだ。

正しく体を使い、“適切に頑張って”筋力をつければ、代謝が上がって汗をかける。このいい循環を作り出すことができれば、きっとあなたの体もポカポカと温まるはず。

出典
Yogini Vol.30 p28-29 『なぜヨガをしても体が温まらないことがある?』

教えてくれた人=内田かつのり
うちだかつのり。ヨガインストラクター。鍼灸師。アメリカの栄養学である分子矯正医学という栄養療法を深めながら、ファスティング、酵素栄養学、ゲルソン療法(コーヒーエネマ)、漢方や整体術などを実践。運動療法、精神療法の代替医療としてのヨガの可能性に魅せられ、アヌサラヨガなど複数のTTを修了し、現在は各地で講座やTTの指導を行う。

文=Yogini編集部