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みなさんは新しい年を迎える時、1年の抱負を決めますか?
自分の人生の進む方向を定期的に見直すことは、幸せな生き方をするためにとても大切なことです。ヨガでは、サンカルパという誓いをたてます。
今回は、自分の生き方を変えるために重要なサンカルパの見つけ方についてご説明します。
ヨガ的目標・サンカルパとは?
ヨガ・ニードラでもお馴染みのサンカルパは、自分自身への誓いです。新年に見直す方も多いので、神社に行ったときにする「お願い」と混合して考えてしまう方もいるかもしれませんが、願いとサンカルパは異なるものです。
願い
- 叶ったら良いと思う願望
- 神様など、外の力に頼り、運を期待する
サンカルパ
- 自分で実行する決意
- 他者ではなく、自身で叶える
例えば、「憧れの大学に進学したい」という気持ちは同じであっても、「○○大学に合格できますように」とお願いするのと、「○○大学に合格するために毎日夜3時間勉強をする」と誓うのではニュアンスが違ってきます。
目標は同じなので、結局、自分で勉強することになりますが、サンカルパはより自分自身に向き合う意識を高めるための言葉です。
結果は運にも左右されるので、自分の力だけでは達成できないこともあります。
例えば試験。どれだけ一生懸命勉強しても、悪天候で交通機関に遅れが生じ、試験に間に合わない……可能性もあり、それは運に任せるほかありません。
それでも、自分の内側に対して「誓い」を行うことは、自分を知るキッカケになり、必ず自分自身を成長させてくれます。
自分の本心を知るサンカルパのやり方
サンカルパを考えている時間は、自分の心に向き合っている時間です。何が本当の自分の望みなのかを知ることは、自分自身を知ることになるからです。
粗い願望から本心を探す
初めてサンカルパを考える人は、物質的な願望であっても、まずは思いつくものを挙げてみましょう。
例えば……
- ダイエットで10kg痩せる
- 来年中に結婚する
- ビーガンになる
- 希望の仕事に就職する
- 部屋を綺麗にする
など。
そこからさらに、なぜこれらを叶えたいのかを掘り下げていきます。というのは、上記に挙げたような望みというのは、漠然と「これが叶ったら幸せになれるに違いない」という思い込みによるものがほとんどだからです。
では、ダイエットを例に、どのように掘り下げていくのか、具体的に見ていきましょう。
- 痩せたら最近流行りのお腹の出るヨガウェアが着られる
- 痩せた友達と一緒にいる時にも劣等感を感じなくなる
- 体型を隠す服を選ばなくていいし、何を着てもかっこいいから洋服選びが簡単
- 軽くなったら、バランスポーズも楽にできるようになる
- もっと健康になれる
実現した時の具体的な状況をイメージすれば、モチベーションが上がってダイエットがはかどるかもしれません。仕事を行う時には、目標と、実現するために必要なタスクをより具体的に考えることはとても大切です。
しかし、ヨガとして行う時にはまだ不充分。物理的な目標にフォーカスしてしまうと、自分の本心から遠くなってしまいがちだからです。
もっと心にフォーカスして考えてみましょう。
例えば、「痩せた友達と一緒にいる時にも劣等感を感じなくなる」という理由について考えたとき、それは他者との比較を行っていて、自分とは向き合えていません。まずは、「どうして太っていると劣等感を感じるのか」という自分の心に向き合う必要があります。
それは、自分が「人から良く見られたい」という承認欲求なのか、「ダメな人と思われたくない」という恐怖心なのか、「体型が美しくないと自分を認めてあげられない」という自信のなさなのか。
ヨガでは、生まれた願望の奥にある本当の心の声を聞くことがとても大切です。
自分の心と向き合って、自分を知り、どのような自分であっても今を受け入れることによって、初めて次の階段を上ることができます。
本当の願いはとても抽象的
このような方法でサンカルパについて考えていくと、自分の本当の願いにたどり着くことができます。
例えば、初日には「ダイエットに成功する」だったサンカルパが、毎日見直すことで最終的には「自分で自分を認めて愛することができる人になる」に代わっていくことがあります。
「毎日1時間ヨガの実践を行う」という目標であれば、「ヨガと共に生きる」と変わったり、「ビーガンになる」と誓った人も「マインドフルで自分と他者に優しい食生活・生活習慣」と変わるかもしれません。
たしかに具体的な目標は実行に移しやすいですし、成功か失敗かの評価もしやすいでしょう。しかし同時に「これが出来ていない今の自分は不完全」だと、結果に囚われた思考に陥りやすくなるので、そこに囚われない目的にした方がよりフラットかつ深く、自分と向き合いやすくなります。
例えばサンカルパが「ヨガと共に生きる」である人について。時には、子どもが熱を出してアーサナの練習ができない日もあるかもしれません。
しかし、「ヨガ的な生き方で幸せになりたい」という本当の望みが分かっていれば、今目の前にいる子どもの看病さえも自分のカルマ・ヨガなのだと考えて心地よく向き合うことができます。
まずは今思いつく願いから初めて大丈夫
最初から「具体的な望みは良くない」と思って、わざわざ抽象的な誓いを選ぶと、抽象的過ぎて結局何が望みなのかが分からなくなってしまうこともあります。
いったんは、今の自分が本当に望むものをサンカルパとして決めましょう。「このように考えるべき」と枠に当てはめてしまうと、それはヨガから外れてしまいます。
サンカルパで目標に執着しないために気を付けること
『バガヴァッド・ギーター』を学んだ人の中には、クリシュナが「結果には執着するな」と説いているので、目標を持つことは、未来に依存することにならないのか?と悩む方がいます。
ギーターのサンヤサ・ヨガとは、自分の行いの結果に対する執着を放棄することです。ということは、サンカルパによって未来の目標を定めると、結果に執着することになるのではないか、と。
読者のなかにも同様の疑問を抱いた方がいるかもしれませんが、サンカルパとは自分が何を行うかの誓いであり、結果を約束するものではありません。
サンカルパの実践の最初の段階では、「ダイエットで痩せる」など、自分の欲望をサンカルパとして考える方もいますが、「痩せる」というのは未来に求める結果であり、誓いとは少し違います。
誓いは、自分が行うべきことを設定すると良いでしょう。
- どうしてダイエットが必要だと思ったのか?
- そのためにどのような行動をする自分になりたいのか?
と考えを深めていくことで何が必要か分かります。「身体に負担にならない量の食事を心がける」や、「定期的な運動で体を快適な状態に整える」といった、今、この瞬間に行うべき行動がサンカルパとなります。
誓いは未来の自分を快適にするものですが、未来の結果は与えられるものであり、執着すべきものではありません。今に意識を向けた誓いを行うことで、この瞬間を楽しめるようになります。将来のために今を犠牲にするような誓いは避けるようにしましょう。
サンカルパの効果的な唱え方
サンカルパはヨガ・ニードラや、瞑想、アーサナなどのクラスの前後に唱えることが一般的です。できれば、呼吸の観察などをしばらく行い、雑念を弱めて、意識が内側に向いた状態で行うようにします。
特にヨガ・ニードラの中で唱えるサンカルパは、深層心理に直接届きやすいのでお勧めです。
夜寝る前や、朝起きた直後など、5分だけサンカルパを唱えて瞑想するのもいいでしょう。1日のリセットの時間に、雑念の働きをとめて、本当の自分の心に向き合うことはとても効果的です。
一度決めたサンカルパは、頻繁に変更しないようにしましょう。一定期間、継続して行うことで、移り変わりやすい心の働きを穏やかにすることができます。
もちろん、毎日同じサンカルパを唱えていると、違和感を感じることがあります。サンカルパを含んだ瞑想で自分の心の声に耳を傾けることで、本当に自分に必要なものが分かってくるからです。
その時は、もう一度自分のサンカルパを見直す時間を持ちましょう。
自分がどのように生きたいのかを考えると、自分の生き方の指針が分かります。思考を変えれば自然と行動は変わり、行動が変われば人生が変わります。ぜひ、自分のサンカルパに向かう時間をはぐくんでください。